
ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第七回は、読めば読むほど楽しみが見つかる大人気絵本『バムとケロのにちようび』です。

『バムとケロのにちようび』(島田ゆか 作・絵、文溪堂)

今回は『バムとケロのにちようび』です。言わずと知れたベストセラー絵本ですよね。この「にちようび」がシリーズの最初の本。

うちには、「バムとケロ」シリーズは『にちようび』のほかに『そらのたび』と『もりのこや』があります。夜寝る前の読み聞かせでは、「にちようび」が選ばれることが多いです。家庭での読み聞かせに向いていて、すごく楽しい本だと思います。

お子さんたち、『にちようび』ではどこが好きなのでしょう?

ケロがおもしろいことをしていて、バムがお世話上手なところがいいみたいです。ケロがかわいいとも。

ケロちゃんはおもしろいんだけど、マイペース。そんなケロちゃんをお世話してるバムということをよく理解していますね。

本当ですね。「にちようび」はシリーズ1作目なので関係性がよくわかりますね。
絵本1ページ目の庭の風景が描かれているところも、いつもどんなことして遊んでるのかや、2人で住んでいるんだな、ということがわかる、かわいくていい絵なんです。こういう絵が、“絵本の絵”なんだなって思うんですよね。いつまでも見ていられるというか、絵として飾りたくなるような絵が描かれているっていうのは、本当にいい絵本だなと思います。
「どんな絵本がいいですか」とか、「絵はどんなものがいいですか」とか聞かれるときがあるんですけども、ほんとうに額縁にいれて飾りたいような質の高い絵が、絵本の絵なのかなって思います。

そうですね。この絵はすごく生き生きと動きがあるし。

順番で読まないと物語が成り立たないときは、読みながら指さしたりします。この絵本ははそこまでではないですが、読んでるところを指さしてあげるとより分かりやすいかなとは思います。

なるほど。私はコマが出てくる絵本読んだのがこの絵本が初めてだったんですよ。で、それまでこういうコマが出てこなかったから、えっどうやって読むんだろうってすごい戸惑った覚えがあります。指をさすっていうふうには思ってなかったから。

絵本なので自由だと思うんですけど、それを言うと子どもって左から右に時間が流れてるっていうことはやっぱまだ慣れてなかったりしますから。

パッと目に飛び込んでくる絵を見ていますもんね。

だから左から指さしてあげると優しいかな、話の流れというか流れやすいかなと思います。

なるほど、時間の経過ですね。

コマもそうなんですが、この絵本はとても細かく描き込まれていますよね。細かく描かれている絵は、遠くからは見づらいんですよね。だから、たとえばお話会なんかの人数が多い場所では、読むのがもったいないような気がするんです。遠くの人まで見えるものを「遠目がきく」っていう言い方をするんですが、この本は「遠目がきかない」。だから1対30とかの読み聞かせではなくて、少人数でとか、膝の上でとか、じっくり味わいたい絵本かなと思いました。

なるほどね。分かります。

遠目がきかない絵本って、つまりは発見の多い絵本なんですよ。だから遠目がきかないっていうとネガティブな印象になっちゃうかもしれないんですけど、その分描き込まれてるから発見が多い。「見れば見るほど」っていうふうに思ってもらえるといいかなと思います。絵本って本来この形だったんじゃないかなと。膝の上で見るとか親子でぴったりして読むとか、そういうのが前提で作られてるのが絵本だと思っています。1対大人数ていうのは、ほんとは紙芝居の役割だったと思うんですよ。だから、こういうふうに描き込まれてるのが本来の絵本の形としてあってしかるべきなんじゃないかなと思います。
僕は読み聞かせ屋なので、1対何十人で読み聞かせすることが多くて、やっぱり求めたくなるのは遠くからでもその絵がはっきり分かるとか、大人数でも分かりやすいとかそういうところなんですけど、それは本当は紙芝居の役割で、絵本にちょっと無理させてしまうような気持ちで僕はいるんです。

けいたろうさんの口からそういったことを聞くと、おもしろいですね。

だから、こういうふうに親子で読めば読むほど1回目に読んだときよりも2回目に読んだときのほうが多くの発見があるような絵本って魅力的だなと思います。

そうですね。見れば見るほど発見がある絵本ですね。

親子でじっくりまさに寝る前に面白がってもらってもいいと思いますし、親子でクスクス笑いたい親子にというか、おうちに届けたい絵本だなと思います。

けいたろうさん作『バムとケロのにちようび』のポップ