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ここだけのはなし 絵本『あいたい あいたい あいうえお』ができるまで 第5回


”絵”を読み解く

<聞かせ屋。けいたろう>です。12月7日(火)発売の絵本『あいたい あいたい あいうえお』ができるまでをお話ししています。絶賛発売中です! ぜひ書店で手に取ってください! 今回は、自分の考えたお話(文章)にどんな絵が描かれたのか、じっくり見つめたいと思います。

まずは表紙。



題字はおくはらゆめさん(以下ゆめさん)の手描きです! 可愛らしく、味わい深いですね。配置等に関しては、デザイナーさんに入ってもらって仕上げました。絵とのバランスもバッチリですね。物憂げに窓の外を眺めるアナグマちゃん。表紙に何を描いてもらうかは、ゆめさんにお任せしました。

次に「扉」というページですね。



タイトルと共に、会う事を心待ちにしている皆が窓から覗いています。実は当初、タイトルと共に描かれるのは、お花やてるてる坊主が描かれていて、登場する動物たちはいませんでした。一対一のお話ではなく、三者三様……いや、五者五様でそれぞれに会いたい人がいるという事を伝えるべく、登場する動物たちみんなを描いてもらいました。

そして、雨のシーンからこのお話が始まります。
アナグマちゃんがあやとりで一人遊び。



てるてる坊主が、晴れの日を待っているのだと感じさせます。横殴りの強い雨、表紙の時からは時間が経っているのでしょう、大きな水溜まりが。
ページをめくると、同じく窓の外を見つめるイッカクサイくん。部屋にはブタの貯金箱が置いてあります。後でその理由がわかりますよ。

そして、音楽をかけて踊りながらパンを焼く、雲豹(うんぴょう)くん。



Tシャツもパン柄。相当なパン好きなのでしょうか(笑)

次に登場するのはエゾリスばあば。手元を見ると、何かを縫っているようです。窓の外の「約束の場所」と、写真立てを見ながら「あめあがれ」と願っているのでしょうか。
そしてページをめくると、木に住んでいるオオコノハズクの家には、てるてる坊主が5つ、ぶら下がっています。耳が見えているのは3羽ですが5つです。これはきっと……。
皆それぞれ、晴れの日を待ちわびていることが伝わってきますね。

つぎのシーンは就寝です。「明日は会える」そう思っているような良い寝顔です。



翌朝、一番に目が覚めたのはアミメキリンでしょうか、太陽と瞳が輝いています。



おや?紙コップとハサミが置いてありますね。
次のページは、まだ寝巻きのイベリコブタくん。ユニフォームの準備はオッケー。

おそらくパン好きなウォンバットちゃん。



お気に入りのお皿に描かれているのは……!
僕は、この場面で部屋にまで入ってくる陽射しがお気に入り。最高の天気!

そして、何かを抱えて走るエゾリスちゃん。
ここの文章は、特に良いリズムを意識しました。足音がしてから足跡が残るので、「あしおと あしあと」としましたよ。

次のページには、オカピのかぞくも何かを引っ張りながら、約束の場所へ。
「晴れたらそこで、待ち合わせ」でしたね。

そして、ついに山頂で再会!



ここでお見せするのは、「あ!」までにしておきます。
「あ」に続く言葉といえば……!

最後に「見返し」という部分について、お伝えしましょう。
表紙の裏と裏表紙の裏、二箇所の見返しがありますが、
この絵本では、こんな風にこだわっています。



こちらが前の見返し。



こちらが後ろの見返しです。

と、こんな風に変化しています。
「絵本のお話しが始まる前に見る見返しと、お話しの後に見る見返しを変えたい」という僕からの注文を、ゆめさんが見事に実現してくれた、大好きな場面です。
そして、皆の名前を知って、この動物がこの順番で登場した理由に頷き、微笑んで頂ければ嬉しいです。
「いやいや、ちょっとイベリコブタって……」とも思うのですが、そこはおくはらゆめの世界観ということで、自分を納得させました(笑)。

ここまで絵をじっくり味わってきましたが、絵を味わいたくなるのが絵本です。
僕の文章だけでは、この動物達を見ることも、イメージすることもできないでしょう。
この絵本を知らない方に目をつむってもらい、文章だけで語ったら、どんな光景を思い浮かべるのでしょうか?
例えば、絵を描くのがゆめさんではなかったら、どんな動物達が登場したのでしょうか?動物ではなく、人だったかもしれないですね。

絵本を読むのって、本当に面白いですね。
絵本を作るのも、本当に面白いのですよ。

(次回へ続く)


文:聞かせ屋。けいたろう 絵:おくはら ゆめ

定価
1,430円(本体1,300円+税)
発売日
サイズ
その他
ISBN
9784041114926

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