KADOKAWA Group

Children & Education

子育て・教育

子どもが思春期に入ったと感じたら 『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』ためし読み

NEW

10代、主に「思春期」や「反抗期」と呼ばれる時期にさしかかった子どもたちのこころは、センシティブでこわれやすいもの。
子どもたちとの向き合い方に加え、スマホやSNS・ゲームと課金、不登校・OD(オーバードーズ)・自傷行為など、今どきの子どもたちを取り巻く背景や事例を取り上げ、子どもへの寄り添い方や解決策をやさしく探ります。

連載第1回は、『子どもが思春期に入ったと感じたら』の中から、『思春期の対応のカギは「大人がでしゃばらない」』と『手を離れる寂しさは手をかけてきた証』を紹介します。

※本連載は『児童精神科の看護師が伝える 10代のこわれやすいこころの包みかた』から一部抜粋して構成された記事です。



思春期の対応のカギは「大人がでしゃばらない」

 子どもの背がいつの間にか自分を超え、会話も徐々に減ってきた……。そんな変化に親が気づいたとき、「思春期に入った?」と感じ、なんとも言えない寂しさや不安など、複雑な感情が湧いてくることは珍しくありません。
 というのも、思春期はそれまで通用していた子どもとの距離感やかかわり方が、急にうまくいかなくなる時期でもあるからです。もちろん、子どもとの関係性が簡単にこわれるというわけではありませんが、思春期の子どものこころは非常に揺れやすく、時に本人すら驚くような情動的な言動が現れることがあります。
 思春期とは、からだの成熟とこころの成熟が重なり合いながら進んでいく時期です。ただし、このふたつの成熟スピードは必ずしも同じではなく、始まりや終わりにも大きな個人差があります。女子は平均して10〜11歳、男子は11〜12歳から心身の変化が始まることが多いものの、落ち着く時期は18歳を超えて20歳前後までかかる場合もあります。そのため、「中学生だから思春期」「〇歳だから思春期ではない」と学年や年齢で一律に区切ることはできません。この時期の子どもは自分の価値を模索し、親や大人から心理的に距離を取ろうとしながらも、実際には支えを必要とします。「自分は自分、親は親」という境界が意識され、親子関係の再構築が進む時期だと言えるでしょう。
 そんな中、私が思春期の子への良い対応として「ほぼ間違いない」と感じているのは、「大人がでしゃばらない」ことです。よけいなひとことをグッと堪え、口を出すより耳を貸す。そんな、ちょっと離れた位置から見守る距離感が大切なのです。
 どうでしょう、「思春期ってめんどくさい」と思いましたか? でも、忘れないでください。子どももまた、自分の中の変化に戸惑いながら「思春期ってめんどくさい」と頭を抱えているということを。



手を離れる寂しさは手をかけてきた証

 子どもが徐々に自分の手を離れていくとき、寂しさや不安、心配を感じない親はいないと思います。久しぶりに話せたと思ったら、何気ないひとことでケンカになり、気まずい状態のまま一日が終わる……なんてこともあるのではないでしょうか。
「またケンカしてしまった」と子どもとの関係性について悩んだり、「育て方がまずかったのかも」と自分を責めて落ち込んだりする方も少なくないはず。ただ、その不安の大きさこそが、あなたがこれまでがんばってきた証ではないでしょうか。
 登校準備も宿題の管理もしてあげなくていい。子どもは自室にこもるようになって会話も減ってくる。たまに話しかけてきたと思えば、ぶっきらぼうに学校からのお知らせプリントを渡される。子どもと過ごす時間が徐々に減って、自分の時間が増えて少しは自由になったはずなのに、なぜか心がざわざわする。そんな寂しさにも似たなんとも言えない気持ちを感じたことがある方もいらっしゃることでしょう。
「もう手を離さなきゃ」と思いながらも、「でもまだ……」と揺れる日々。この葛藤は本当につらく、答えを先送りにしてしまうこともあるでしょう。ですが、あなたにはあなたの人生があるように、子どもにも子どもの人生があります。あなたの目の前にいる子もいつかは大人になり、自分を支えられるようになるだけでなく、あなたを支える存在になっていくかもしれないのです。
 だからこそ、今一度「自分は子どもの手を強く握り過ぎていないか」「自分の時間をつくれているか」と自問し、「少しずつ手の力を緩めるタイミング」を考え、覚悟を決めておきましょう。そしてもし、そのときが来たら、「がんばったね」とその子に伝えるだけでなく、自分自身にも「よくがんばったね」と声をかけてあげてください
 もうすでに、あなたはその子にできる最大限のことをしてきたのですから。



自分を責めない、無理をしない

大人が思う以上にこわれやすい10代の子のこころ…。
ぜひやさしく包んであげたいところですが、保護者のみなさんは「全然できていない」とご自身を責めすぎる必要はありません。
ここに書かれていることは、できることだけやってみていただくので大丈夫です!
お子さんも保護者のみなさんも、自分をいたわってくださいね。


▶書誌情報を見る

【著者プロフィール】

こど看(kodokan)

精神科認定看護師。精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務をしながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。著書に『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)がある。メンタル系YouTuberの会所属。一児の父。

X・YouTube  @kodokanchildpsy


この記事をシェアする

特集

ページトップへ戻る