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もうすぐ敬老の日ということで、今月は「おじいさん」「おばあさん」が登場する絵本を紹介します。年輪を重ねた、味わい深い絵本をどうぞ!
「もったいないことしてないかい?」
見ず知らずのおばあさんにこんなことを言われたら、どう答えるでしょうか?
「すみません、しているような気がします……」と、僕なら答えてしまうかな。
「もったいないばあさん」は、2004年に絵本の世界に現れた不思議なおばあさん。この絵本が出来る前、作者の真珠まりこさんは「もったいないって、どういう意味?」と息子さんに聞かれたそうです。「もったいない」を言葉で伝えるのって、難しいですよね。それを絵本を通して上手に楽しく具体的に伝え、「もったいない精神」から生まれた遊びや工夫も教えてくれるのが「もったいないばあさん」です。子ども達に「もったいない」を伝えてくれた功労者は、この人かもしれません。
お水の出しっ放しや、お茶碗についたごはんつぶを察知すると、ばあさんはやって来ます。そして「もったいないことするんじゃない」と結構な圧をかけてきます。ちょっと怖いような気もするのですが、泣き出すと「涙がもったいないよ」と見守ってくれるあたりに、愛を感じます。廃材を使っての遊び方や、みかん風呂等、年寄りの知恵を授けてくれたりもします。このばあさんとずっと一緒はちょっとイヤ(笑)だけど、時々叱ってほしいような気もします。保育園等でこの絵本を読むと、ばあさんが醸し出す独特な雰囲気に子どもたちはちょっとドキドキ。ばあさんの佇まいや表情に、人見知り(笑)をしてしまうようです。でも、後半になるとばあさんの人柄も分かってきて、ばあさんに親しみまで感じてしまう子どもたち。そして、読み終えた時には、「もういっかいよんで!」の声が聞こえて来ます。
何度か読むともう「もったいないばあさん」は、クラスの人気者です。
「もったいない」シンプルな言葉で大事なことを教わった子どもたちが、これからの時代をつくっていく大人になるのですね。
次におじいさんが登場する絵本も紹介しましょう。
バーソロミューおじいさんと、隣に住んでいるネリーちゃんが紡ぐ、思いやり溢れるお話です。バーソロミューさんは昔、ネリーちゃんが乗ったベビーカーを押してよく散歩に行っていました。時が経ち、ネリーちゃんが大きくなった頃、バーソロミューさんは車椅子に乗ることになりました。するとネリーちゃんは、自分がそうしてもらっていたようにバーソロミューさんの車椅子を押して散歩に行くことにしました。
当連載では、多くの子どもに読んだ絵本を紹介していますが、この絵本はちょっと特別。なぜなら僕がとても感動してしまった絵本なのです。この絵本は、僕に「大人でも、絵本は楽しめるのかもしれない」と思わせてくれた一冊です。ですから、夜の路上で大人にも読み聞かせをしました。この絵本を読むと、時に涙を潤ませる大人も居たりして、いつも好評だったことを覚えています。
僕が一番好きな場面は、バーソロミューさんが乗った車椅子が水しぶきの中を駆け抜けるシーン。ネリーちゃんが幼い頃、ベビーカーでも駆け抜けていた過去と重なって、思わず頬が緩んでしまいます。二人はなるべく、自分で出来ることは自分でやろうとしたり、考え方が前向きだったりします。二人は祖父と孫のような歳の差ですが、性格はそっくりで、仲良しで、相性ばっちりなのです。絵本を読み終えた後も、二人の物語をずっと見ていたいように思います。
ぜひ親子で読んでみて欲しい絵本です。大人も子どもも、優しい気持ちになれると思いますよ。
ちょうど先日、一時的に父が乗った車椅子を押しましたが、何だか新鮮で笑ってしまいました。一緒に写真を撮って笑いました。父は僕が乗っているベビーカーを押していた事を、きっと覚えているでしょう。とりかえっこだと、思ったかなぁ?
作:サリー・ウィットマン 絵:カレン・ガンダーシーマー 訳:谷川 俊太郎
- 【定価】
- 1,430円(本体1,300円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 23cm×17cm
- 【ISBN】
- 9784924938342