
2025年2月に刊行された『驚異の標本箱―鉱物―』から鉱物好きの子にぜひ見てもらいたい鉱物を紹介します!自主学習や自由研究にもおすすめのテーマです!
※本連載は『驚異の標本箱―鉱物―』から一部抜粋して構成された記事です。
水晶に閉じ込められた鉱物

水晶成長と同時に不純物粒が包有されることで、さまざまな色の水晶ができる。白く濁った水晶は、成長時に周囲の流体を取り込み、細かい水やガスの泡を含んでいるものだ。肉眼でわかる液体と気泡を含むものは水入り水晶と呼ばれる。また、別の鉱物の結晶を含むことがあり、これも水晶のバラエティに華を添える。筆者は20年ほど前、秋田県の鉱山跡の古いズリ(廃石)の中に、緑色の水晶がたくさん混じっているのに気付いた。これはシャモス石という緑色の鉱物を含んだ水晶であった。
大分県の尾平鉱山(おびらこうざん)では、坑道内部に水晶を多数産する小鉱体(しょうこうたい)があって、この水晶は球状の緑泥石(りょくでいせき)や針状の苦土電気石(くどでんきせき)など多種の鉱物を含んでおり「まりも水晶」と俗称される。また、紫水晶(むらさきすいしょう)には針鉄鉱(しんてっこう)や赤鉄鉱(せきてっこう)のような酸化鉄鉱物を含むものがしばしばある。紫水晶も針鉄鉱も自形を保っており、紫水晶成長の途中で結晶面上に針鉄鉱の結晶集合体が生成したのがわかる。一般には結晶の混じり物として嫌われる包有物ではあるが、結晶成長のさまざまな条件を記録している「地下からの手紙」でもある。
鉱物データ
赤鉄鉱を含む水晶
学名 Quartz(クォーツ)
和名 石英(せきえい)
化学式 SiO₂
結晶系 三方晶系
モース硬度 7
分類 酸化鉱物
結晶長:3.6 cm
産地:中国 China
所蔵:個人蔵
クレジット
写真・文=田中陵二(科学者)
書籍情報
- 【定価】
- 5,500円(本体5,000円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- A4変形判
- 【ISBN】
- 9784041156124