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子どもがどうしてもゲームがやめられない……そんな悩みを抱えている親御さんも多いのではないでしょうか?
本連載では、子どものゲーム依存について、ネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行っている森山沙耶さんにわかりやすく教えてもらいます。
連載第3回では、「どこからが依存なのか」をテーマに解説します。子どもがゲームにハマっているときに「この状態は依存なのか」と不安になるケースも多いと思います。依存に気づくサインはどのようなものか、どれくらいの時間ゲームをプレイしたら依存なのか、などの疑問に応えていきます。
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ゲーム依存のサイン
前提として、ゲーム依存かどうかは専門の医師が問診や検査などの結果を踏まえて判断することになるので、家庭だけで子どもが依存かどうかを判断することはできません。しかし、どのような状態が見られたら依存を疑う必要があるかを知っておくことで、早い段階で依存の状態に気づき、治療や支援につながるなど対応することができます。そこで、イギリスの心理学者であるグリフィスが示した依存のサイン※(1)と、ゲーム依存のケースで起こりうる例を紹介します。
① 顕著(けんちょ)性
ゲームがその人の生活の中で最も重要な行動となり、思考、感情(欲求)、行動を支配するようになる。
<例>
・ゲームをしていなくても、ゲームのことをいつも考えてしまう。
・ゲームをするために食事や入浴の時間さえも惜しむようになる。
② 気分修正
気分をよくするための「自己治療」としてゲームを利用する。
<例>
・緊張や不安が強いときにゲームのプレイや動画を見ることで和らげる。
・むしゃくしゃした気持ちをゲームで発散させる。
③ 耐性
以前と同じ効果を得るために必要なゲーム使用が増えること。
<例>
・以前は1〜2時間で満足していたが、何時間もやらないと満足感が得られなくなる。
・高揚感を感じるために、より刺激の強いゲームをするようになる。
④ 離脱症状
ゲームをやめたり、急に減らしたときに生じる不快な感覚(不機嫌やイライラなど)や身体的影響(不眠、動悸、食欲不振など)。
<例>
・ゲームができない状況になると、イライラし、家族にも当たる。
・ゲームを禁止されたときに、無気力になり他の活動をしなくなってしまう。
⑤ 葛藤
周囲の人との葛藤(対人葛藤)あるいは、自身の中で減らしたくても減らせない葛藤。
<例>
・ゲームを続けることで他の活動に支障が出てきて、家族との言い争いが増える。
・ゲームを減らした方がよいと頭ではわかっていても、減らせないことで落ち込む。
⑥ 再発
以前のパターンに戻ることが繰り返されたり、ゲームをやめたり、コントロールできるようになっても、すぐに元に戻ったりする傾向。
<例>
・一定の期間ゲームを減らすことができても、ふとしたきっかけで元に戻ってしまう。
・ゲームを完全にやめたが、少しやり始めただけで以前のやり過ぎている状態に戻る。
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長時間ゲームをしていたら依存?
よくある疑問として、何時間ゲームをしていたら依存なのかというものもあります。海外の研究では、ゲーム依存でないグループ、ゲーム依存のリスクが高いグループ、ゲーム依存のグループを比較したところ、ゲーム依存のグループが他の2つのグループよりゲーム時間が長く、週に28時間程度(1日にすると4時間程度)でした ※(2)。その他の研究でも、ゲーム依存傾向が高いほどゲーム時間は長くなる傾向が見られます。これらのことから、1日4時間以上といった長時間のゲームは依存のリスクを高める可能性がありそうです。
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King & Delfabbro(2018)をもとに作成
しかし、長時間ゲームしていることが必ずしもゲーム依存であることを示すわけではありません。例えば、プロゲーマーやeスポーツに取り組む人はゲーム依存の人と同じかそれ以上ゲームしていると考えられますが、同時に生活面やメンタル面の管理も必要とされるため、依存の状態とは異なるでしょう。したがって、ゲームを過度に続ける中で、上記のサインや生活面や心身に悪影響が出てくる場合は依存を疑うことが必要になります。
課金はどこまでOK?
他にも気になる問題としてゲームでの課金があると思います。ゲーム内で使用する武器やアイテムだけでなく、キャラクターの見た目にも課金できることもあります。もし子どもがゲームで課金をしたいと言ったときはどこまで許容してよいのか悩みますね。
アイテムなどを購入することで、ゲームを有利に進めることができたり、自身のキャラを個性的にすることができたりとメリットがあります。一方で、課金をすることでさらにゲームの魅力が増すために依存傾向にある子どもがより一層ゲームにハマってしまうこともあるため、慎重に判断してほしいと思います。子どもがどうしても課金をしたいという場合には「頑張ったことのご褒美として」「小遣いの範囲で」「使った金額は書き出して分かるようにする」など使い過ぎない工夫が必要です。さらに、ランダムでレアなキャラクターやアイテムなどが手に入る「ガチャ」は通常の課金よりもハマりやすく、もっとやりたくなる仕組みであるために特に注意が必要になります。何回かガチャ課金をしてハマってしまった子が親のクレジットカードからいくども課金をし、数十万〜十数万の請求が親に届いたというケースも実際には相次いでいます。課金を許可していない場合でも、勝手に親のカードや現金を使ってしまうことを防ぐためにカード情報や現金の管理、決済情報の確認も忘れずにしておきましょう。
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ゲーム依存のセルフチェック
最後に簡単にできるゲーム依存のセルフチェックを紹介します。下記のボタンをクリックすると、インターネット依存またはゲーム依存をチェックすることができます。(ただし、このチェックはあくまで簡易的なもので、これだけで依存が診断できるものではないのでご注意ください。)
※外部サイトに移動します。
次回はゲーム依存が疑われた場合の相談先や対応について解説します。
【引用文献】
(1)Griffiths, M. (2005). A 'components' model of addiction within a biopsychosocial framework. Journal of Substance Use, 10(4), 191–197.
(2)King, D. & Delfabbro, P. (2016). The Cognitive Psychopathology of Internet Gaming Disorder in Adolescence. Journal of Abnormal Child Psychology, 44(8), 1635-1645.
【プロフィール】
森山 沙耶
ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)所長
公認心理師、臨床心理士、社会福祉士
2012年、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。
2019年、ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)を立ち上げ。当事者とその家族に対するカウンセリング、予防啓発のための講演、執筆活動を行う。
著書に『専門家が親に教える子どものネット・ゲーム依存問題解決ガイド』(2023年7月Gakkenより発売)
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