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子育てをしている保護者の皆さんは、子どもの成長ともに、実にさまざまな病気やケガがあることを実感しているのではないでしょうか。特に自分で症状が伝えられない小さなお子さんは、急に症状が現れたり、症状が長引いたりしたとき心配ですね。この連載では子どもの病気・ケガとホームケアについて、現役小児科医として多くの症例を見ている塚田こども医院院長の塚田次郎先生にわかりやすく教えてもらいます。
第11回の今月は、「やけど/転落・転倒事故」を取り上げます。このような不慮の事故による子ども(0〜14歳)の死亡者数は年々減少しているものの、病気を含むすべての死因の中でも毎年上位にあり、年齢では0歳〜4歳が子どもの死亡事故全体の半分以上を占めています(令和3年までの5年間総計)。事故はどんなに注意しても起きてしまうことがありますが、対策を知って予防に努めることでその数は減らせるはずです。万が一事故が起きてしまったときも、あわてずに対処できるように、主に家庭で起こりやすい、子どもに多い事故についてご紹介します。
<これまでの連載はこちらから>
Trouble
【やけど】
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やけどをしたとき
やけどをしたときは、とにかくすぐに流水で直接、または服の上から最低でも10分以上は冷やします。氷水につけるなどではなく、流水で行います。顔面のような流水を当てるのが難しい場所は水で濡らしたタオルやタオルでくるんだ保冷剤や氷を当ててください。服の上から熱湯を浴びたり熱い油がかかったりしたときは、無理に脱がせようとすると皮膚が一緒にはがれてしまうことがあるので、服の上から流水をかけます。その上で症状によって救急車を呼ぶか、救急外来を受診するか、様子をみるかなどを選択します。
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【症状と受診の目安】
・ 全身の広い範囲でのやけど、顔面のやけど→すぐに救急車を呼ぶ(救急車が来るまでも冷やし続ける)
・ 片足、片腕以上の広範囲のやけど→流水で冷やし、救急車を呼ぶか至急受診する
・ 大きさが手のひら以上のやけどや500円玉より大きい水ぶくれ→冷やしながらつぶさないようにして受診する
・ 赤くなった程度→流水で十分に冷やして様子をみる。悪化する場合は受診する
※ 冷却シートはやけどの手当てには使わない
※ 電気カーペットなどによる低温やけどが疑われる場合は、大人より皮膚の薄い子どもでは、見た目より重症の場合があるので、症状が悪化したり痛がったりする場合はすみやかに受診する
子どもに起こりがちなやけど事故
子どものやけどの中で、特に2歳くらいまでに起こりやすいものがあります。主に室内で起こる事故ですから、大人が環境に配慮することで予防が可能です。起こりがちな状況を知って、先手を打っておきましょう。
〈2歳くらいまでの子どもに多い、やけど事故例と予防策〉
● テーブルの上の熱い飲み物や汁物などを倒してやけどする
予防策
・ 熱い飲み物や汁物の入った容器はテーブルの真ん中に置く
・ テーブルクロスやランチョンマットは子どもが引っ張ることがあるので使わない
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● 電気ケトルやポットのコードを引っ張って倒し、熱湯を浴びてやけどする
● 電気ケトルやポット、炊飯器の蒸気に触れてやけどする
予防策
・ 倒れても中身がこぼれないタイプの電気ケトル・ポットを選ぶ
・ コードも含め、電気ケトル・ポットも炊飯器も子どもの手に届く場所には置かない
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● 石油ストーブなどの暖房器具に直接触れてやけどする
● スチーム式加湿器の蒸気に触れてやけどする
予防策
・ 床置きの暖房器具は周囲を十分に距離をとって安全柵で囲むなど、子どもを近づけない工夫をする
● 調理器具やコンロ、アイロンに触れてやけどする
予防策
・ 調理中や使用中のみ注意するのではなく、調理後も高温のままの器具や、使用後のまだ熱いアイロンでやけどすることがあるので、子どもの手が届かない場所へすぐに移動させる
・ グリルコンロの窓部分は調理後も熱くなっていることがあるので、子どもを近寄らせない
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● カイロや湯たんぽ、電気カーペットなどで低温やけどを起こす(低温であっても皮膚が長時間触れているとやけどにつながる)
予防策
・ 皮膚の同じ場所にカイロなどが長時間触れ続けないように位置を移動させたり、使用したまま眠ってしまったりしないようにする
〈2歳から6歳くらいまでの子どもに多い、やけど事故例と予防策〉
● 使い捨てライターをいじっていて火災事故を起こす
予防策
・ 使い捨てライターは子どもが操作できないよう対策されたPSCマーク(製品の安全性に関して国の定めた技術上の基準に適合したことを証明するマーク)のついたライターを使用して、子どもの手の届かないところに保管する
● 火のついた花火をさわってやけどする、また衣服などに燃え移ってやけどする
予防策
・ 花火は燃えやすいものが近くにない広い場所で行う
・ 子どもだけで遊ばせない
・ 火を自分や人に向けないように言い聞かせる
・ 花火をするときは燃えやすい衣服(特に化繊など)を着たまま遊ばせない
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Trouble
【転落・転倒】
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転落・転倒で特に気をつけたいのは頭を打ったとき
乳幼児期の子どもは、ただでさえ頭が体に比べて重くバランスが取りにくいため、ちょっとしたきっかけで転落や転倒をしがちです。さらに成長していくと、保育園や幼稚園、学校の校庭で遊んでいて遊具から落ちる、転ぶ、ということもあるでしょう。
転落や転倒で手足や胸やおなかを打ってしまい、痛がる、出血している、顔色が悪い、苦しそう、ぐったりしているなど様子がおかしいときはすぐに救急車を呼ぶか、または至急救急外来の受診が必要です。
それ以外に特に注意したいのは、頭を打ってしまったときです。まずは傷がないか確認して、出血していたら清潔なタオルなどで止血します。傷がなければ打った場所をタオルでくるんだ保冷剤や氷などで冷やします。
頭の傷の様子や出血がひどければ救急車を呼ぶことが必要ですが、傷がひどくない場合でも、頭を打ったときは慎重に経過を見ることが必要です。頭を打った直後に症状が出るとは限りません。頭を打ったときは、まず自宅で安静にしてください。症状がなくても24時間は観察が必要で、最初の6時間は特に気をつけて様子を見ます。もし、意識を失ってしまったのか眠っているのかわからないときは、体を揺さぶったりしないように起こしてみて、意識の有無を確認します。そして以下の様子に当てはまるときは、その状態に応じて救急車を呼ぶ、受診をする、などの行動をとりましょう。
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【頭を打ったあとの症状と受診の目安】
・ 反応が鈍く意識がおかしい
・ けいれんを起こしている
・ 手足の動きがおかしい、しびれている様子がある
・ 出血が止まらない
・ 目のまわりや耳の後ろにあざができている
・ 目覚めない(意識を失っている)
→すぐに救急車を呼ぶ
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・ いつもと様子が違う
・ 繰り返し嘔吐する
・ 眠気が強い
・ 頭痛がひどくなる
・ たんこぶがある
・ 打った直後、短い間だが意識を失った
→できるだけ早く受診する(診療時間外でも救急外来に)
※ 上記のほかにも言動がおかしかったり普段と違ったりする様子がないかを確認し、おかしいと思ったときは受診してください。判断に迷うときは「子ども医療電話相談」(#8000)に相談してもいいでしょう(お住まいの地域によって、実施されている時間帯が異なります)。
※ まれにですが、数日たってから頭の中で出血が起きている場合がありますので、いつもと違う様子がないか注意してください。
子どもに起こりがちな転落・転倒事故
転落や転倒事故は、軽度のものも含め子どものうちはよく起こります。歩いたり走ったりとどんどん活動を広げていくなかで、いくら大人が注意していても子どもが転ぶ事故を100%防ぐことはできません。ただ、ベビーベッドやベビーチェアからの転落は、大人が普段から注意して行動することで、ある程度予防が可能です。転落・転倒事故の起こりやすい状況の事例をご紹介します。
〈2歳くらいまでの子どもに多い、転落・転倒事故事例〉
● 大人用のベッドで寝ていて、寝返りしてベッドの下に落ちる
● 子ども用ハイチェアで安全ベルトをしておらず、立ち上がって転落する
● 柵が降りた状態のベビーベッドから、目を離した隙に転落する
● オムツゴミをゴミ箱に捨てようとしている間にオムツ交換台から転落する
● 階段のベビーゲートが開けっ放しになっていて、階段を一人で降りて転落する
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● ベランダに出て、踏み台になるものがあることで柵を乗り越え転落する
● ソファなどから届く位置の窓が、子どもの手で開けられる状態になっていて転落する
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● 抱っこひもをしている大人がものを拾おうとかがんだとき、子どもが抱っこひもからずり落ちる
● 重い荷物をぶら下げたベビーカーが、バランスを崩して転倒したときに落ちる
● スーパーのショッピングカートでふざけていて転落する
● 滑り台やブランコ、ジャングルジムなどからバランスを崩して転落する
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どれもありがちな事故ですが、子どもはどんどん成長してできることが増えていくので、今日できなかったからといって油断していると、ときにあっと驚くような動きをすることがあります。怖がりすぎてもいけませんが、頭を硬い地面などに強打するのは大変危険ですから、リスクの高い場面ではできるだけ気をつけて、転落を防ぎたいですね。
参考資料/子どもを事故から守る!事故防止ハンドブック(消費者庁)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_002/assets/consumer_safety_cms205_230131_01.pdf
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【塚田先生プロフィール】
塚田次郎(塚田こども医院 院長)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年新潟県上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。