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【もしかして花粉症かも? 春先に多い子どもの鼻水・鼻づまり〜「季節性アレルギー性鼻炎」】「小児科医ツカダ先生に聞く 子どもの病気・ケガ&ホームケア」第12回


 子育てをしている保護者の皆さんは、子どもの成長ともに、実にさまざまな病気やケガがあることを実感しているのではないでしょうか。特に自分で症状が伝えられない小さなお子さんは、急に症状が現れたり、症状が長引いたりしたとき心配ですね。この連載では子どもの病気・ケガとホームケアについて、現役小児科医として多くの症例を見ている塚田こども医院院長の塚田次郎先生にわかりやすく教えてもらいます。

 第12回の今月は、「季節性アレルギー性鼻炎」を取り上げます。いわゆる鼻水や鼻づまりといった、子どもの「鼻炎」の症状が気になることはありませんか? 発熱したり寒気がしたりといったカゼの症状がないのに、やけに鼻をすすってばかりいる、鼻をかゆがる、いじりたがるのは鼻炎が疑われます。特にアレルギー性の鼻炎の場合、アレルゲン(アレルギーを引き起こす原因物質)がある限り症状が続きます。中でも、季節性アレルギー性鼻炎は花粉によって引き起こされる「花粉症」の名でよく知られていますが、大人だけでなく乳幼児時期からでも花粉症を発症するお子さんがいます。基本的な情報を知った上で、花粉の飛散が多くなる2〜4月は、お子さんの鼻のようすをよく観察してみてください。


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今月のトラブル
【季節性アレルギー性鼻炎】

Trouble
【季節性アレルギー鼻炎】

 



 

アレルギー性鼻炎の種類と原因、症状

 「鼻炎」というのは、鼻の中の粘膜が炎症を起こし、鼻水や鼻づまりなどの症状が出ることを言いますが、鼻炎の原因として多いのが、アレルゲンの関与するアレルギー性のものです。このアレルギー性鼻炎には、ダニやハウスダストなど、季節を問わない原因によって1年中鼻炎症状がある「通年性アレルギー性鼻炎」と、スギやヒノキ、ブタクサなどそれぞれ原因となる花粉の飛散時期に症状の出る「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」とがあります。いずれもアレルゲンを身の回りから減らすことが症状の緩和につながります。
 どちらの鼻炎であるにせよ、鼻炎が引き起こす鼻づまりは子どもの集中力や思考力を低下させ、睡眠の妨げにもなります。また、鼻がつまることで口呼吸になりやすく、カゼをひきやすくなるなど、生活の質にダイレクトに影響します。

●通年性アレルギー性鼻炎
原因 → ダニ、ハウスダスト、動物の毛やフケ、カビ、大気汚染など
症状 → 鼻水、鼻づまり、くしゃみなど
合併症 → 気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎など


●季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)
原因 → 花粉(スギ、ヒノキ、ブタクサ、イネ、ヨモギなど)
症状 → 鼻水、鼻づまり、くしゃみなど
合併症 → アレルギー性結膜炎、皮膚のかゆみなど


子どもの季節性アレルギー性鼻炎の特徴

 季節性アレルギー性鼻炎(以下、花粉症とします)は原因となる花粉の飛散時期に症状が出ます。大人の花粉症の症状では、連続するくしゃみやサラサラとした鼻水が特徴的ですが、子どもの場合はくしゃみはあまり出ず、鼻づまりが多い傾向があります。子どもは大人に比べて鼻の穴や鼻腔自体が小さいため、いったんつまるとそれ以上の花粉が入りづらく、そのためくしゃみが少ないのです。鼻水も大人のサラサラと流れるような鼻水と比べて、やや粘っこい鼻水が出る場合があります。また鼻炎のみでなく目のかゆみも花粉症ではありがちな症状ですので、目をこすったり、目のまわりがむくんだりする場合があります。

【子どもの花粉症を疑うポイント】
 子どもの花粉症はカゼと見分けがつきにくい場合があります。特に、自分で症状を伝えられない小さな子どもでは、花粉症かどうかがわかりにくいものです。以下のようなことがないか、ポイントをチェックしてみてください。

□ 鼻をよくすすっている
□ 鼻をこすったりさわったりする
□ 口呼吸をしている
□ 鼻づまりで夜中によく目をさます
□ 目をかゆがったりこすったりする
□ 目が充血したりむくんだりしている
□ 晴れている日や風の強い日の外出後に症状が強く出る
□ カゼだと思って薬を飲んでいても鼻水や鼻づまりがよくならない
□ 鼻がムズムズするため、鼻や口のまわりをしきりに動かす

 

  • こども1

     
  • こども2

     
  • こども3

花粉症の診断と治療は?

 小児耳鼻科を受診した場合、鼻水や鼻づまり症状のある病気には副鼻腔炎や鼻茸(鼻ポリープ)などもあるので必ず鼻腔内の観察をします。アレルギー性鼻炎が疑われる場合は、アレルゲンを特定するための血液検査や皮膚プリックテスト(アレルギー物質を含むエキスを皮膚に少量滴下して専用の針で皮膚に小さな傷をつける)が行われることもあります。問診や検査の結果、アレルゲンが植物の花粉だとわかれば、花粉症の治療に進みます。
 花粉であれ、ダニやハウスダストであれ、アレルギーの場合はアレルゲンを避けることとその除去が対処の基本です。その上で、薬を使って症状を抑える対症療法を施し、抗アレルギー薬や鼻噴霧用ステロイド薬などを使用します。そのほかの治療では、根治が期待できる免疫療法として舌下免疫療法(薬剤を長期にわたり、毎日服用してアレルゲンに身体が慣れるようにする)があります。

家庭でできる花粉症予防策は?

 花粉症の究極の予防策は、「花粉に接触しない」ことです。もちろん100%接触しないのは無理ですが、普段の行動でだいぶ避けることができますので、生活を見直してみてはいかがでしょうか。現在発症していない大人や子どもでも、花粉に接触し続けていると、ある年から突然発症することもあります。すでに発症している人だけでなく、未来の発症を防ぐためにも、家族全員で協力して花粉をできるだけ取り込まないことを心がけるといいですね。



 

【家庭でできる花粉症予防】

● 天気予報を見て、計画的に行動する
→ 晴れた日や雨の翌日、風の強い日には花粉が多く飛散します。夜間や早朝の飛散は少なめです。

● マスク・メガネの使用
→ 花粉をできるだけ目、鼻、口へ入れないために有効です。

● 花粉飛散の多い時期の外出時は、できるだけ花粉の付着しにくい素材の衣服を選ぶ
→ 花粉の付きやすい素材はウール、化繊、絹、綿の順で、ウールは飛び抜けて花粉付着率が高いのでできるだけ避けたほうがいいでしょう。

● 室内に入るときは花粉をよく払う
→ 上着や帽子などは玄関の外ではたいてから屋内へ。できれば帰宅後すぐに入浴、少なくとも洗顔をして着替えることをおすすめします。

● 窓や戸の開閉に注意する
→ 外からの花粉を招き入れないことを念頭に置きます。換気のためには空気清浄機を使うのがベター。花粉飛散時期には布団や洗濯物も外に干すのは控えます。

● こまめに掃除する
→ 花粉は水に弱いのでぬれ雑巾で床をふいたり、室内に落ちた花粉が舞い上がらないようにフローリングワイパーなどをそっとかけたりすると効果的です。

● タバコやダニ、ハウスダストに注意
→ 花粉症を悪化させる要因となるものはできだるだけ回避・除去して、規則正しい生活を送るよう努めてください。



【花粉の種類や飛散時期を知る】



 

 植物はそれぞれの時期に花粉を飛ばします。花粉症で有名なスギやヒノキは、それぞれ2〜4月、3〜5月が飛散時期ですが、ブタクサは8~10月に飛散します。ほぼ1年中何かしらの花粉が飛散するので、ひとつだけでなく複数の花粉症にかかることもあるのです。
 また、罹患する人の多いスギやヒノキなどでは、毎年製薬会社や天気予報のサイトなどで飛散予測が発表されています。いつからどのように飛散するかを頭に入れておくと、早めに受診したり、花粉を避ける行動がとれたりするなど、事前の対策ができます。

 

★2024年スギ・ヒノキ花粉のピーク予想

※参考資料 日本気象協会2024年1月18日発表予測



 

 

 

 



 



【塚田先生プロフィール】

塚田次郎(塚田こども医院 院長)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年新潟県上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。


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