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【重症化すると危険! アレルギーと関わりの深い、子どもの喘息】「小児科医ツカダ先生に聞く 子どもの病気・ケガ&ホームケア」第8回


 子育てをしている保護者の皆さんは、子どもの成長ともに、実にさまざまな病気やケガがあることを実感しているのではないでしょうか。特に自分で症状が伝えられない小さなお子さんは、急に症状が現れたり、症状が長引いたりしたとき心配ですね。この連載では子どもの病気・ケガとホームケアについて、現役小児科医として多くの症例を見ている塚田こども医院院長の塚田次郎先生にわかりやすく教えてもらいます。

 第8回の今月は、「子どもの喘息」を取り上げます。子どもの喘息は多くの場合、早ければ0歳から始まり、3〜4歳までに大半が発症しています。小学校に上がるころには落ち着いてきて、10歳ごろにはほとんど発作を起こさなくなるのが一般的ですが、なかにはそのまま成人の喘息に移行していくこともあります。症状や原因について正しく理解し、治療法や悪化を防ぐポイントを知っておきましょう。


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今月のトラブル
【子どもの喘息】

Trouble
【子どもの喘息】

 



 喘息は、呼吸をするための空気の通り道である気道が狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューとする喘鳴や呼吸困難などの発作を起こす病気です。一般的に喘息とは、気管支喘息を指しますが、咳だけが続く喘息は咳喘息と呼ぶ場合もあります。


喘息の発作はどんなもの?

 気道に炎症が起こると、その粘膜は過敏になります。すると、ちょっとした刺激によって気道が傷ついて狭くなり、空気の通りが悪くなるという症状がたびたび引き起こされます。日常生活は送れる程度のものから、食事や睡眠をはじめ生活のあらゆることが困難になるほどの重い程度のものまで、症状には段階があります。様子が気になったり、以下のような様子があったりしたときは、小児科や呼吸器内科などの医療機関を受診してください。大きな発作や呼吸困難の場合には救急車を呼ぶことが必要になります。

〈喘息発作の症状の段階〉
●小発作→胸に耳を当てるとゼーゼー、ヒューヒューはしているが、会話は可能で呼吸困難はなく、睡眠も食事もとれる。
●中発作→ゼーゼー、ヒューヒューがよりはっきり聞こえて、会話は苦しく、話しかけに応じられる程度。熟睡できず、食事もあまりとれない。
●大発作→呼吸困難がひどく、喘鳴も激しく、話しかけても返事ができない状態。睡眠や食事も苦しくてとれない。

 喘息発作のきっかけは、アレルゲン(アレルギーを起こす原因物質)であることが多いのですが、中にはアレルゲンが特定できない、アレルゲンが関与しないタイプの喘息もあります。また、RSウイルスなどの感染がきっかけになることもあります。くわしいことは、病院で調べないと診断ができません。
 気管支喘息の原因として一番多いアレルゲンはダニ、ハウスダスト、カビなどです。ペットの毛やフケも原因になることがあります。

〈喘息発作のきっかけになりやすいもの〉
●ダニ、ハウスダスト
●カビ
●ペットなど動物の毛やフケ
●RSウイルスなどの肺炎を引き起こすウイルス
●タバコの煙などの化学物質や大気汚染物質
●天候や運動
●ストレス
 など



 喘鳴や呼吸困難は伴わず、咳だけが慢性的に続く咳喘息の場合でも、放置すると気管支喘息に移行してしまうことがあります。咳喘息もアレルギーのある人に起こることが多いのですが、ゼーゼー、ヒューヒューがないためただの風邪と見過ごしがちです。風邪はもう治っているのに、子どもの咳が数週間にわたって続いている場合などもやはり受診をおすすめします。


喘息の治療はどんなことをする?


 喘息と診断された場合、治療の柱は大きく分けて3つあります。
1、 喘息発作が起きたときに、発作治療薬を使う
2、 気道の慢性的な炎症をしずめ、発作を予防するための長期管理薬を使う
3、アレルギーの原因物質を減らすなど、喘息を悪化させる要因を減らす

 1の発作治療薬は、狭くなっている気道を広げる作用のある薬(気管支拡張薬)です。呼吸の苦しさを一時的に緩和しますが、これで気道のアレルギー炎症が治るわけではありません。
 2の長期管理薬の役割は、症状にあわせて必要な薬を組み合わせて服用することで、発作を未然に防ぐようコントロールしていくことです。医師の処方どおり、決められた期間正しく服用し、喘息発作が出ていないからといって大人の判断でやめてしまわないようにしましょう。喘息の治療とは、発作が起こる原因をできるだけ正確にとらえ、その原因に応じて処方された薬を使い、症状がない状態をキープして日常生活をきちんと送っていくこと、と考えてください。
 3の喘息を悪化させる要因を減らすというのは、ダニやハウスダストなどといったアレルゲンへの対処です。
 以下で、喘息の原因やアレルギーとの関係をさらにみていきます。


喘息の原因とアレルギー



 先述しましたが、喘息のきっかけとなるものとして、一番多いのは室内のダニやハウスダストです。発作のきっかけはさまざまですが、喘息はアレルギーとの関連が深い疾患といえます。
 乳児期にアトピー性皮膚炎になり、1歳過ぎあたりからはダニなどのアレルギー症状が出て、次第に喘息に移行するという例が多くあります。喘息は幼児期に強い発作を起こすことが多く、学童期には次第に落ち着いてくるのですが、中学生になるころにはアレルギー性鼻炎など目や鼻のアレルギーが始まる、といったように次々とアレルギー症状に悩まされることを「アレルギーマーチ」と呼びます。アレルギーになりやすい体質のお子さんは、アレルギーマーチのリスクが高いといえます。
 比較的小さい頃に症状が出る、アトピー性皮膚炎や喘息の治療をしっかりする必要があるのは、このアレルギーマーチを食い止めたいということがあります。アレルギーの原因物質を見極めて、お子さんの体内に極力入れないようにすることで、つらいアレルギー症状を少しでも減らしていきたいですね。
 現在、アレルギーの最初の入り口は乳児期のバリア機能の未熟な皮膚から、さまざまな物質が体内に取り込まれてしまうことだといわれています。食物、ダニ、ハウスダスト、カビなどがその代表的な物質ですので、これらから子どもの皮膚を守るために、清潔を保って十分に保湿することは、アレルギーの発症を防ぐ上でとても重要です。


喘息を予防、軽減するポイント

 喘息の大敵となるダニやハウスダスト、カビ、ペットの毛やフケ、タバコの煙などには、できるだけ喘息を持つ子どもが触れないように環境を整備していくことが大切です。保護者の方は仕事や家事、子どものお世話と、ただでさえ忙しい毎日と思いますが、喘息の軽減には生活場所の環境整備が欠かせません。大変かもしれませんが、できることから取り組んでいってください。




〈家庭で気をつけていきたいアレルギー原因対策〉
●こまめに掃除をする
 掃除機がけは軽くでも毎日かけるのが望ましく、三日に一度はすみずみまでしっかり時間をかけて掃除するとよい。
●じゅうたんやカーペット
 ダニのすみかになりやすいので、できれば敷くのを避ける。
●寝室や寝具の取り扱い
 シーツ、布団カバー、枕カバーの洗濯はこまめに。布団は外に干して日光に当てる。一週間に一度、寝具にも掃除機をかける。長期管理薬を使用して発作の予防に努めていても、寝ているときの発作が多いようであれば、防ダニ寝具を使用する。
●空気の入れ替え
 部屋は風通しをよくして、空気の入れ替えをときどき行う。
●タバコの煙を持ち込まない
 タバコは屋外や換気扇の下で吸っても、喫煙者の呼吸や服についた有害物質が発作の引き金となるので、原則禁煙に。
●ペットの毛やフケ
 イヌやネコの毛やフケ、鳥の羽毛などがアレルギー原因の場合は、掃除の徹底でよくならなければ、喘息が治癒するまでペットをよそで預かってもらうことも検討し、無理であれば最低でも患者である子どもと同じ部屋を使わないなどの工夫が必要。

 

 

 

 

 



 



【塚田先生プロフィール】

塚田次郎(塚田こども医院 院長)
1981年自治医科大学卒業、同年医師国家試験合格。新潟市民病院にて臨床研修、新潟県立坂町病院小児科勤務を経て、1990年新潟県上越市栄町にて塚田こども医院を開設。日本小児科学会認定医。


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