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【インタビュー】宗田理さんが本当に届けたかった新作。ぼくらシリーズ『ぼくらの秘密基地』を書かれた宗田律さんに聞く。2025年版の新たな「ぼくらの七日間戦争」の物語。

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宗田 律(そうだ りつ)さん


累計2000万部「ぼくらシリーズ」の最新作『ぼくらの秘密基地』が7月9日に発売されました。宗田理さんが2024年4月、95歳でお亡くなりになり、その思いを引き継いだご子息の宗田律さんが書かれた新作です。
「七日間戦争」は中学1年の男子たちが廃工場に立てこもり、解放区を作る物語でした。新作では、女子だけの解放区を作る物語です。宗田律さんに新作を書かれた経緯や思いをお聞きしました。


<プロフィール>

宗田 律(そうだ りつ)
1972年、東京都生まれ。宗田理さん次男。20年以上にわたり、宗田理さんの創作活動を支え、角川つばさ文庫「ぼくら」シリーズ全てにたずさわる。


 

――今回、宗田律さんが、ぼくらシリーズを書かれることになったのは、どのような経緯だったのでしょうか?

宗田律さん(以下、宗田):昨年、父、宗田理が、亡くなる十日前に受けた『NEWSポストセブン』の取材の中で、「もし、『ぼくらの七日間戦争』の現代版を書くとしたら、どんな作品になるだろうか」と問われ、次のように答えました。
「主人公は女の子にしてもいいですね。ある日、クラスの女子生徒たちが学校に来なくなる。それぞれが自宅の自室で何かに没頭しているようだが、実は、彼女たちには、彼女たちだけの壮大な計画があった……」
『ぼくらの七日間戦争』は男子が中心になって活躍する話です。多くの読者から、女子を主人公にした新作が読みたいという声が、長年にわたって届いていました。父は、それに応えたいという気持ちで、女子たちが主人公となる、新しい『ぼくらの七日間戦争』の構想をずっと練っていたのですが、残念ながら叶わなくなってしまいました。このアイディアを、父に代わって形にすることができないだろうか?と思ったのが発端です。

――そう思われたのは、それまで律さんがお父さんと長くお仕事をご一緒にされていたからでしょうか?

宗田:父が40年にわたって築き上げてきた『ぼくら』シリーズは本当に偉大で、何世代にもまたがって多くの読者やファンの方々に愛されてきました。ぼくが簡単に『書きたい』などと言えるような作品でないことは、身に染みるほどわかっています。にもかかわらず、形にしたいと思ったのには理由があります。
ぼくは2005年から約20年間、アシスタントとして、秘書として、父の創作活動をサポートし、その間、刊行した宗田理作品のすべてに関わってきました。
書き下ろし作品であれば、父がアイディアを着想した段階で、父と話して物語のあらすじを整理し、編集者さんとの打ち合わせに同席。内容が固まり、執筆が始まってからは、父が必要とする資料の収集やまとめ、取材の代行、原稿の校正などを行いました。
こうしてリリースした角川つばさ文庫の書き下ろし『ぼくら』シリーズは15作にのぼります。ぼくはこの経験を通して、『ぼくら』シリーズのテーマ決め、設定、キャラクター、文体等について、深い理解を得ることができました。
父は、子どもたちを応援したい、元気にしたい、という一心で、亡くなるまで『ぼくら』を書き続け、次作の構想まで練っていました。20年間、一番近くでその姿を見て、支えてきたからこそ、父の想いを引き継ぎたいと思いました。



宗田理さんと宗田律さん


 

――宗田理さんが考えていた『ぼくら』シリーズのテーマや大事にされていたことはどのようなものでしょうか?

宗田:父が『ぼくら』シリーズの中に一貫して込めていたのは、次のようなメッセージです。
「悪い大人にだまされるな」
「自分の頭で、ものごとを考えよう」
「仲間とともに、知恵と勇気を持って臨めば、どんな困難も乗り越えられる」
これらは、いつの時代にも通用する普遍的なものです。だからこそ、若い読者を中心に、40年間読みつづけられているのだとぼくは思います。
そしてこれらのメッセージは、今以上に情報があふれ、世の中の変化が激しくなり、ますます先を見通すことが難しくなるこれからの時代でこそ、より大きな意味を持つのではないでしょうか。

――新作『ぼくらの秘密基地』を書いてみて、大変なことはどんなことがありましたか?

宗田:『ぼくらの七日間戦争』が書かれた当時とは、中学生を取り巻く環境が大きく変わりました。現代の女子たちが、どこにどういう形で立てこもるのかについては、いろいろ頭を悩ませました。
あとは、『ぼくら』シリーズの新作として違和感はないか、何度も読み返し、過去の作品を確認しながら書き進めていったことも大変な部分だったかもしれません。具体的には、ストーリーの流れ、個々のキャラクターのしゃべり方や言動がおかしくないか等のチェックを繰り返しつつ、リズムが良くて、読みやすい父の文体にできるだけ近づけたいと、推敲(すいこう)を重ねました。

――『ぼくらの秘密基地』では、女子だけで解放区を作ります。そして、『ぼくらの七日間戦争』と同じ七日間のお話ですが、新しい七日間戦争の違いやおもしろさは?

宗田:『ぼくらの七日間戦争』は、もともとは、父が大人に向けて書いた作品でした。ページ数も多く、七日間で次から次へといろいろな事件が起こります。全共闘など、子どもの読者にとっては少し難しい内容も含まれていました。
『ぼくらの秘密基地』は、角川つばさ文庫からの刊行ということで、小中学生をメインの読者対象として書いています。同じ七日間でも、女子だけで「秘密基地」を楽しむ前半パートと、「悪い大人」と戦う後半パートで構成しました。設定も現代なので、今の子どもたちにもイメージしやすい内容になっていると思います。

―――宗田理さんは悪い大人をこらしめる時に暴力ではなく、「いたずら」を使うことに、こだわりがあったと思いますが、新作での「いらずら」は?

宗田:「自分より強い相手、偉い相手に対して、知恵と勇気をふりしぼって、仕掛けるのがいたずらだ」と、父はいつも言っていました。『ぼくら』シリーズに登場する悪い大人に対しても、最後は、いたずらでこらしめるのが定番になっていたので、執筆中は、いつもいたずらのことで頭がいっぱいでした。ひとたび、読者が喜んでくれそうな案を思いつけば、実際に実行するのは不可能と思えるものであっても、迷うことなく採用しました。
爽快でありながら、どこかコミカル。それが父の描くいたずらです。新作でも、過去の『ぼくら』シリーズを参考に、ピラニア(実はおもちゃ)のプールや、地獄のターザンロープなど、『ぼくら』らしいいたずらを考えました。


―――最後に、『ぼくらの七日間戦争』の読者、ファンのみなさまにお伝えしたいことや、メッセージをお願いします。

宗田:父は、未来を担(にな)う子どもたちを応援したいと、『ぼくら』シリーズを約40年間書き続けました。そんな『ぼくら』シリーズが、これまで以上に長く読み継がれていかれるよう、父の想いを少しでも引き継いでいきたいと思っています。
『ぼくらの秘密基地』を読んでいただき、今後も『ぼくら』シリーズを応援していただけたら嬉しいです。


新刊『ぼくらの秘密基地』


原案: 宗田 理 文: 宗田 律 キャラクターデザイン: はしもと しん 絵: YUME

定価
880円(本体800円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046323750

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【内容紹介】
中学2年の夏休み、クラスの女子が姿を消した! 「解放区」を作るため、ある場所に立てこもったのだ!? 女子だけでライブ配信やファッションショーを行い、親や先生を追い返す。そして、最高の七日間に……なるはずが、犯罪グループの事件に巻きこまれ、ひとみと純子が誘拐されてしまい――!? 英治たちは敵のアジトに乗りこみ、女子との共同作戦を開始! さらに、ピラニアのプールや地獄のターザンロープ、ぼくら史上最強の巨大迷路を作って、迎え撃つ! 宗田理さんが届けたかった新たな『ぼくらの七日間戦争』!

 

【目次】



ためし読み公開中!



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