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動物園の飼育員さんに聞きました!『野生動物と暮らしてみたら』連載第10回


動物と一緒に暮らしてみたい…と動物好きなら一度は夢見る世界! でも、実際はどんなことが起きているのか、動物たちのもっとも身近な存在である飼育員さんたちにお話しを伺いました。ご自身も大の動物好きという人気イラストレーター・伊藤ハムスターさんの4コママンガもお楽しみください!
第10回目は「ホッキョクグマ」について、の北海道・札幌市円山動物園の鳥居佳子さん(飼育員歴2年)に教えていただきました。

※マンガの内容は、動物の生態を元にしたフィクションです。

 




 

 


Q:飼育していて困ったこと、大変なことはどんなことですか?

プールの管理が大変です。ホッキョクグマは、海で生きる哺乳類(海棲哺乳類)の一種で、泳ぐためのプールは欠かすことができません。新しく建てられたホッキョクグマ館のプールは、深いところで3.7 m。プールを満水にするのに約10時間かかります。その大きなプールを月1回でも掃除することはできないので、毎週あるいは2週間に1回の頻度で潜水して掃除しています。夏場はプールが冷たく気持ちいいのですが、冬は氷点下になるため30分潜るのも大変です(30分では掃除しきれない)。また、水の入れ替えを2~3か月に1回行っていますが、担当者だけでなく、ほかの職員にも手伝ってもらって掃除しています。なるべくキレイなプールでクマたちが泳げるようにという気持ちで頑張っています。


Q:どのようなことに気を付けて飼育していますか?

体調管理です。体が大きい肉食動物のホッキョクグマは、簡単に触ることはできません。体調が悪くなっても捕まえて検査することもできません。そのため、日々の行動、食欲、排泄物(糞と尿)、体形などを観察し、変化がないかを気を付けています。日々のトレーニングもその一環で、血液検査やケガをしたときの簡単な治療などを行っています。


Q:うれしいのはどんなときですか?

試行錯誤した環境エンリッチメント(※)に対して、動物から反応が得られたときです。例えば、プールを1つつぶして、水ではなくチップを入れたところ、今ではお気に入りの休憩場所になりました。放飼場に刈り取った草を山にして積んでおいたときは、すぐに崩しにいったりして楽しんでいました。そういった反応があったときはうれしいです。

※環境エンリッチメント:動物園や水族館など野生動物を飼育している場所で、飼育動物の福祉と健康のため、飼育環境に対して行われる工夫のこと。


Q:どれくらい懐きますか?

懐く、というより、担当者とそうでない職員の区別はついています。担当者以外の職員がくると、においをしきりにかいだりしてやや興奮します。


Q:どれくらい賢いですか?

ホッキョクグマは賢いです。給餌や清掃の時に、こっちの部屋に移動してほしいと思って、そこの扉の音を出すと、だいたい移動してくれます。


Q:一緒に暮らすとしたら…どんなことが起きそうですか?

家で一緒に暮らす…。まず先に襲われることしか思いつかなかったのですが。少なくともプールは必要で、水代が大変そう。爪が鋭いので、ケガします。また、ホッキョクグマのために夏は冷房が必須で、冬は暖房を入れることができないです。


Q:印象的だったエピソードを教えてください。

自分自身にとっても動物にとっても初めての繁殖に取り組み、幸い事故もなく雌雄の同居・交尾を確認することができました。雌のリラは、同居1日目に自分よりも倍以上大きな雄にとても驚き怖がって、全速力で走って逃げていきました。数日雄から逃げている様子で、うまくいくのか心配でしたが、雄から雌に上手にアプローチをしてくれたおかげで少しずつ雄を受け入れていきました。その時に、ようやく大人になったなぁと感じました。どことなく幼さもなくなったように感じます。無事、母親になってくれるように願って、これからもサポートしていきます。

 

札幌市円山動物園

北極圏にすむホッキョクグマとアザラシを展示している広大なホッキョクグマ館があります。見どころの一つは、泳いでいる様子が見られる水中トンネル。さまざまな角度から動物を観察することができます。

札幌市円山動物園HP
〒064-0959
札幌市中央区宮ケ丘3番地1 

TEL:011-621-1426

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寄稿:中村 倫也 監修:小菅 正夫 イラスト・マンガ:伊藤ハムスター イラスト:服部 雅人

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
A5判
ISBN
9784041140413

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©野生動物と暮らしてみたら展


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