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動物園の飼育員さんに聞きました!『野生動物と暮らしてみたら』連載第7回


動物と一緒に暮らしてみたい…と動物好きなら一度は夢見る世界! でも、実際はどんなことが起きているのか、動物たちのもっとも身近な存在である飼育員さんたちにお話しを伺いました。ご自身も大の動物好きという人気イラストレーター・伊藤ハムスターさんの4コママンガもお楽しみください!
第7回目は「エミュー」について、東京都恩賜上野動物園・エミュー担当の飼育員さん(飼育員歴15年)に教えていただきました。




 

 


Q:飼育していて困ったこと、大変なことはどんなことですか?

日本で飼育されているエミューは冬にペアになり、春先に卵を産みます。この時期に人がエミューのいるエリアに入ると、エミューが後ろをついてまわるなど、人との距離がかなり近くなるので、この時期はとくに動きに注意しています。 多くのエミューは穏やかな性格ですが、脚の力が強く、鋭い爪を持っているため、繁殖期以外でも一定の距離を保ちながら管理するようにしています。


Q:どのようなことに気を付けて飼育していますか?

驚くとパニックを起こして走り出すことがあります。エミューを驚かさないよう急な動きはしない、いつも同じルートで作業をおこない、イレギュラーな動きをできるだけしないといったことに気を付けています。また、逃げ場がなくなると焦ってしまうので、作業時はエミューの動きに気を配り、展示場の角に追い込まないよう注意しています。


Q:うれしいのはどんなときですか?

放飼場内に水浴びができる場所を設置したところ、すぐに利用してくれたことです。エミューは水浴びが好きな動物なので、飼育環境を改善し、来園者にその生態を伝えることができました。


Q:どれくらい懐きますか?

鳥には、刷り込み(ふ化して最初に見たものを親と認識する習性)があるため、ふ化直後から育てれば懐くのかもしれません。 しかし、人の手で育てるとエミューとしての自覚を持てず、繁殖や他個体との生活に影響がでる恐れがあるため、当園では実施していません。懐くという概念で測るのは難しいですが、世話する人がかわっても特に警戒せず普段通りに餌を要求するので、飼育下のエミューは警戒心があまり強くないのかもしれません。 制服を着た人がバケツで餌を持っていくと、だれにでも近寄ってきます。顔を認識しているというよりは、制服と餌のバケツに反応しているようです。


Q:一緒に暮らすとしたら…どんなことが起きそうですか?

飛ぶために体を軽くする必要がある鳥類は、体内に糞をためずにすぐに排泄してしまいます。飛ばない鳥のエミューにもその性質が残っているため、色々な場所で何回も、水分が多い糞をたくさんします。また、羽が抜け替わる時期におちる羽毛の量も多いため、掃除が大変です。脚の力が強く、鋭い爪を持っているので、畳やフローリングなどの床はボロボロに傷つくおそれがあります。さらに、水浴びも大好きなので、エミューの体が収まるサイズの池が必要です。水浴び後は体をブルブルさせて水を跳ね飛ばすので、一帯がびしょ濡れになる覚悟も必要です。


Q:印象的だったエピソードを教えてください。

メスがいないのに、オスが石を卵に見立てて抱卵行動を始めたことがありました。エミューはメスが産卵すると、抱卵と育雛(雛を育てること)はオスのみで行うという面白い生態があります。エミューの抱卵日数は2カ月ですが、そのオスは約2カ月間、石を温め続けました。気温が高くなっていく時期で、そのまま続けると体調を崩すおそれがあったため、石と巣材を回収したところ、あっさり抱卵をあきらめました。

 

東京都恩賜上野動物園

1882年に開園した日本初の動物園です。「生きた博物館」として、世界各地から動物が集まり、展示されてきました。長い年月で培った飼育技術をいかし、動物の魅力的な展示に取り組み、多くの動物の繁殖も成功しています。日本の歴史とともに喜びも悲しみも経験し、名実ともに日本一の動物園として、多くの方に愛されています。

※マンガに描かれている食事の内容は、上野動物園のものとは異なります。

東京都恩賜上野動物園HP
〒110-8711
東京都台東区上野公園9-83
TEL:03-3828-5171


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寄稿:中村 倫也 監修:小菅 正夫 イラスト・マンガ:伊藤ハムスター イラスト:服部 雅人

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
A5判
ISBN
9784041140413

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©野生動物と暮らしてみたら展


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