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動物園の飼育員さんに聞きました!『野生動物と暮らしてみたら』連載第1回


動物と一緒に暮らしてみたい…と動物好きなら一度は夢見る世界! でも、実際はどんなことが起きているのか、動物たちのもっとも身近な存在である飼育員さんたちにお話しを伺いました。ご自身も大の動物好きという人気イラストレーター・伊藤ハムスターさんの4コママンガもお楽しみください!
第1回目は「ゾウ」について、北海道の札幌市円山動物園の飼育員、野村友美さん(飼育員歴7年)に教えていただきました。




 

 



Q:飼育していて困ったこと、大変なことはどんなことですか?


食べる量も糞の量も多いため、動物園の他のどの動物よりも毎日のエサの準備や糞の掃除が大変です。一日に出す糞の量は一頭あたり100kgほどで、当園では4頭飼育しているため400kgにもなります。また、体が大きく力も強いため、設置しているおもちゃや施設自体も壊されてしまったことがたくさんあります。


Q:どのようなことに気を付けて飼育していますか?

ゾウは賢く、温和なイメージがあるかもしれませんが、体が大きく、力もとても強い動物です。ゾウにとっては傷つけるつもりがなかったとしても、少しのことで人間にとっては大けがや死亡事故につながってしまいます。当園ではより安全に配慮した「準間接飼育」という方法で飼育を行っていますが、それでも気を付けていなければ事故につながってしまう可能性があるため、安全に飼育できるようゾウとの接し方には十分気を付けています。


Q:うれしいのはどんなときですか?

現在メス1頭が妊娠中です。動物の命を繋いでいくことは動物園の使命なので、妊娠がわかったときはとてもうれしかったです。無事に産まれ、育ってくれることが今の一番の願いです。(本が出版される頃には、「子ゾウが無事に産まれたこと」になっているかもしれません。)


Q:どれくらい懐きますか?

懐くとは少し違いますが、知っている人・知らない人の認識はあるように感じます。飼育担当者ではない職員や、新しく担当になったばかりの職員が餌を与えようとすると、少し距離をとって怪しんでいるような様子がありました。何度も顔を合わせているうちに、だんだん慣れてきて怪しむ様子もなく餌を食べるようになります。


Q:どれくらい賢いですか?

当園ではエサを高い場所に吊るして与えていますが、鼻を伸ばしても届かない高さだった時に周りにあった大きな丸太を持ってきて、踏み台にして食べていました。最初やり始めたのは1頭だけでしたが、気づけば他の3頭も同じように踏み台を使うようになっていました。最近では丸太1本だけでなく、2本重ねて更に高くして食べていることもあり驚かされました。


Q:家で一緒に暮らすとしたら...どんなことが起きそうですか?

まず、体が大きすぎて家には入ることができませんし、それどころかゾウのパワーであっという間に家が壊されてしまうかもしれません。一日に食べる量は、体の大きなゾウは200kgにもなると言われているので、ゾウを満足させられるだけのエサを確保するには広大な地が必要になります。また、糞の量も1頭あたり1日に100kgを超えるため、あっという間に家の周りが糞だらけになってしまいそうです。また、皮膚の健康を保つために水浴びや泥浴び、砂浴びを頻繁に行います。それが十分にできるような水場やヌタ場、砂場も必要です。


Q:印象的だったエピソードを教えてください。

エサとして枝葉を与えていますが、人間の腕くらいの太さまでならバキバキと折って食べてしまいます。枝を折るときに、大体は足で端を踏み、反対の端を鼻でつかんでバキっと折っていますが、それでも折れなかったときには硬いものの上に置いて反対の足で踏んだり(シーソーのような状態)、壁に立てかけた状態で真ん中の部分を足で踏んだりするなど、あれこれ工夫しながら上手に食べていて、いつもすごいな~と感じています。
 

 

札幌市円山動物園

こちらで飼育されているのはアジアゾウ。本来はあたたかい場所で暮らす動物なので、ゾウたちが暮らしやすいよう、気温や湿度が適度に保たれるゾウ舎内で飼育されています。寒い日に屋外に出ることもあるそうで、「雪の中のゾウ」という珍しい風景を見られることも!

札幌市円山動物園HP
〒064-0959
札幌市中央区宮ケ丘3番地1 
TEL:011-621-1426

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寄稿:中村 倫也 監修:小菅 正夫 イラスト・マンガ:伊藤ハムスター イラスト:服部 雅人

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
A5判
ISBN
9784041140413

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©野生動物と暮らしてみたら展


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