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動物園の飼育員さんに聞きました!『野生動物と暮らしてみたら』連載第9回


動物と一緒に暮らしてみたい…と動物好きなら一度は夢見る世界! でも、実際はどんなことが起きているのか、動物たちのもっとも身近な存在である飼育員さんたちにお話しを伺いました。ご自身も大の動物好きという人気イラストレーター・伊藤ハムスターさんの4コママンガもお楽しみください!
第9回目は「チンパンジー」について、の北海道・札幌市円山動物園の祐川猛さん(飼育員歴30年)に教えていただきました。

※マンガの内容は、動物の生態を元にしたフィクションです。


 




 

 


Q:飼育していて困ったこと、大変なことはどんなことですか?

担当したばかりのころは、檻越しでも怖くて近づけませんでした。大きな声で脅かしてきたり、壁を叩いたり、ほかの場所への移動もスムーズにいきませんでした。慣れてきてもケンカをしたり、病気になったり、赤ちゃんのお母さんが死んで飼育員が母親代わりになったりしたこともあります。


Q:どのようなことに気を付けて飼育していますか?

病気にならないように餌や飼育場の掃除に気を遣うのはもちろん、ケンカをしてけがをしないように心掛けています。餌の種類を増やしたり、沢山の道具を使って時間をかけて食べてもらったり、みんなに平等に餌をあげたいところだけどまとめ役のリーダーに少しだけおいしいエサをあたえたりとケンカの原因をなるべく作らないようにすることです。


Q:うれしいのはどんなときですか?

子供がうまれて大人になってくれたときです。


Q:どれくらい懐きますか?

チンパンジーはとても人間に近い仲間です。人間がすることは、すぐに覚えます。円山動物園では、健康管理をするため体に触れるトレーニングをしています。ヒトの指のサインで手や足・お尻・口の中などに触れたり、見せてくれます。もっと慣れてくると注射ができたり、採血もできたりします。


Q:どれくらい賢いですか?

チンパンジーはとても賢いです。リンゴが何個あるか数を数えたり、葉っぱでコップを作って水を飲んだりすることは簡単なことです。あるとき、餌に大きなナメクジがついていました。じっと見つめてゆっくりと動き出すナメクジを少し観察して優しく触ってみるとヌルヌルしていたので、素手では触らず葉っぱにくるんで排水溝(部屋の掃除をするときの汚れた水が流れるところ)まで持っていき、捨てていました。そしてチンパンジーは社会性がある群れで助け合って暮らしています。群れの中で生きていくにはたくさんのルールを学ばなくてはいけません。


Q:一緒に暮らすとしたら…どんなことが起きそうですか?

チンパンジーはとても賢いのでヒトと一緒に暮らすことはできます。しかし人間の社会ではさらに多くのルールを学んで、沢山我慢をしなければなりません。自然に暮らすチンパンジーは、明るくなったら起きたい、「俺は強いぞ」と大声を出して壁やガラスをバンバン叩いたり、食べたいときに食べたい、ウンコ、オシッコはしたい時にどこでもしたい、暗くなったら寝たい。チンパンジーには当たり前のことを我慢しなければならないことはストレスになり、健康的に長生きはしないでしょう。


Q:印象的だったエピソードを教えてください。

チンパンジーの母親が死んでしまい、子供の母親代わりをしたことがあります。人間に育てられたチンパンジーの子供は自分を人間と思い込み、チンパンジーの社会では生きていけなくなります。そうなる前に、母親代わりの人間のほうがチンパンジーにならなければなりません。ほかの子育て中の母親チンパンジーと一緒に暮らしたりしながら、たくさんのチンパンジーたちに助けてもらって、その子もチンパンジーらしく大人になりました。チンパンジー達も助け合って生きているのです。

 

札幌市円山動物園

園内にあるチンパンジー館は、生き生きとした生態を観察できるよう自然生態的施設として建設されました。ジャングルジムや人工アリ塚を設置し、子育てなどの集団生活を自然に近い状態で観察することができます。

札幌市円山動物園HP
〒064-0959
札幌市中央区宮ケ丘3番地1 
TEL:011-621-1426


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寄稿:中村 倫也 監修:小菅 正夫 イラスト・マンガ:伊藤ハムスター イラスト:服部 雅人

定価
1,540円(本体1,400円+税)
発売日
サイズ
A5判
ISBN
9784041140413

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©野生動物と暮らしてみたら展


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