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ゲーム依存に関するお悩みにおこたえします!【どうしてもやめられない……子どものゲーム依存 第5回】


子どもがどうしてもゲームがやめられない……そんな悩みを抱えている親御さんも多いのではないでしょうか?
本連載では、子どものゲーム依存について、ネット・ゲーム依存専門心理師として、カウンセリングだけでなく講演活動も行っている森山沙耶さんにわかりやすく教えてもらいます。

第5回は、ヨメルバ会員のみなさんから寄せられたゲーム依存に関するお悩みにおこたえします。



 


【お悩み】

子どもがゲームうまくいかなかったと言って泣いて騒いで悔しがります。このようなときどうしたらいいか?

【森山さん回答】
 子どもがゲームをやっていて、なんでそんなに泣いて悔しがるのか、あるいは怒ってしまうのか、親としては理解できず困惑してしまうこともあると思います。そのようなとき、子どもの気持ちを何とか落ち着けたくて「そんなことで泣かないの」とか「怒っちゃダメ」と言ってしまうかもしれません。ただ、ネガティブな感情に蓋(ふた)をするような表現で感情を抑えようとすると、「ネガティブな気持ちは表現してはいけない」「我慢しなければいけない」といった考え方を子どもが持ちやすくなります。また、感情的になって興奮しているときに無理に落ち着けようとしてもうまくいかないばかりか、火に油を注いでしまい、お互いにヒートアップすることにもなりかねません。そうならないように、感情的になっているときには無理に落ち着かせようとせず、一旦落ち着くまで待つことも必要です。



 そして、具体的な対応を考える上で重要なことは、泣いて騒ぐという行動がどういったときに生じるのかを理解することです。

 ゲームで感情的になる原因はさまざまです。試合に負けること、自分が思い通りに立ち回れないこと、仲間が思い通りに立ち回ってくれないこと、相手からの煽り行為などがあげられます。どのような状況が悔しさや怒りの引き金になるのかは人によって異なります。状況によって、その後の関わり方も変わってきますので、まずは引き金となる状況を観察してみてください。例えば、自分がうまく立ち回ることができず、それが悔しくて泣いている場合と、相手から嫌なことを言われたり、煽られたりすることが悔しくて泣いている場合では、子どもにかける言葉も変わってくるでしょう。

 泣いて騒ぐ行動が起こる直前の状況を特定したら、次に行動の後の結果に注目します。泣いて騒いだときに、「親がやってきて自分に注目する」「泣き止ませるためにお菓子が与えられる」「ゲームが延長できるようになる」などの行動の結果、注目されることや欲しいものが手に入ることを経験すると、その行動は継続され、繰り返されやすいのです。つまり、困った行動に対して褒美になるような結果を与えないということが大切になります。



 子どもの気持ちが落ち着いているタイミングで、ゲームでの悔しい気持ちを受け止めながら、悔しさ自体を否定するのではなく、表現の仕方について一緒に考えてほしいと思います。子どもが悔しさや怒りを表現する方法が「泣いて騒ぐ」「暴れる」しかなければ、そのような表現を繰り返してしまうのは当然とも言えます。どのように気持ちを表現してよいのかわからない場合は、親も一緒にゲームをしてお手本を示してあげるのもよいですし、YouTubeなどで活動しているプロゲーマーでお手本になりそうな人の動画を見てみるのもよいでしょう。また、スモールステップでできることを増やしていけるように関わっていくことが大切です。「泣いてしまうけど声のボリュームは大きくならなかった」「荒い言葉を使わずに悔しいと言えるようになった」など、100%ではないにしても少しずつ適切な表現のレパートリーが増えていくとよいと思います。

 もし「悔しがって泣く」という行動とともに、ものに当たって暴れたり、家族や周りの人に暴力をふるうなど、危険な行動を伴う場合には明確な行動の制限を考えていく必要もあります。このような場合には、ぜひ地域の子育てに関する相談窓口やスクールカウンセラーなど身近な窓口に相談してください。

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【お悩み】

休日や放課後は、子どもがずっとYouTubeを観ながらゲーム漬けになってしまいます。本も好きなのですが、すぐに読み終わってしまって、またYouTube&ゲームに戻ってしまいます。このままだと、中毒になってしまわないか心配です。何か良い解決方法はありますでしょうか?

【森山さん回答】
 確かに、ゲームや動画ばかりになり、長時間することが当たり前になってしまうのは心配になるだろうと思います。

 暇だなぁ、退屈だなぁと思ったら、ついついゲームやYouTubeに手を伸ばしてしまうということが繰り返され、自然にゲームやYouTubeを始めることが習慣になり、一旦始めると長時間やり続けるという状況を想像して考えてみます。

 家庭内でゲームやYouTubeの使用ルールはあるでしょうか? ルールがある場合は、そのルールが守られてないということになりますので、ルールの内容や仕組みを考え直す必要がありそうです。例えば、ゲームや動画の時間が短すぎて守れないのか、時間がどのくらい経ったかわかっていなくて過ぎてしまうのか、口約束をしただけでペアレンタルコントロールなどゲームを終える仕組みが整っていないなどのケースがあります。状況に応じて、より効果的な方法を話し合って修正していくことが大切です。

 ルールがもともとない場合は、ゲームやYouTube漬けにならない程度の時間設定を親子で考えてルール化することをおすすめします。ゲームや動画サイトは、あともう一戦したい、あともう一個見たいという仕掛けがたくさんあり、子どもの自発性に完全に任せてしまうといつまでもゲームや動画を続けてしまいがちです。親子でどのくらいならできそうか、ある程度満足感が得られるかということを話し合って、ほどよい時間を決めてみてください。そして、ゲームを終えたら、注目し、褒めることや関心を示してあげて、約束を守って行動した点を促進するような関わりも大切です。



 また、ゲームをしたり、動画を見ない時間は、すぐにゲームや動画ができない環境を作ることも必要です。例えば「タブレットやゲーム機は普段棚にしまっておき、使ったあとは片付けるようにする」「YouTubeの見守り機能を活用する」などがあります。

 その代わりに、読書が好きなお子さんであれば、好きな本をすぐに読めるようにしておきます。子どもが思わずそこに足が向いてしまうような、快適に本が読める読書スペースを整えてあげてもよいと思います。また、ゲームのように達成感を得られる工夫を考えるのも一つの手です。スタンプカードにスタンプやシールを貼ってあげて、ポイントが溜まったら好きな本を購入できるというような工夫もできます。また、読書だけでなく、子どもが楽しいと思えるものを開拓していくことも併せて考えていきたいところです。アウトドアよりも室内で読書やゲームをしている方が好きなお子さんであれば、パズルや工作、ビーズなど子どもが楽しいと思えて、かつ高額でなく継続できるものだと親も快く提供できるかと思います。



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【お悩み】

Nintendo Switchなどゲームばかりしたがって困っています。親としては絵本を読んでほしい。

【森山さん回答】
 絵本を読む年齢ということは未就学児くらいのお子さんと想像しますので、3〜6歳くらいの年代を想定してお答えします。

 まず子どもが「ゲームばかりしたがる」ときの対応についてです。ゲームのプレイ時間や時間帯が家庭の中で決まっているのであれば、約束の時間以外で「ゲームをしたい」と駄々をこねて要求したときにゲームができることを学習していくと、「ゲームをしたい」という要求が繰り返されるようになってしまうでしょう。未就学児でもある程度はゲームをする時間を確保してもよいと思いますが、基本的にはその時間の中で楽しむということにしたほうがよいと思います。ただし「ゲームをしたい」という気持ちを持つこと自体は否定するものではありませんので、「ダメ!」と叱りつけるよりは「やりたくなるよね」と応えつつ、また明日ゲームの時間にやろうねと声をかけたり、他に興味が移るように別の遊びに誘うなどして対応してみてください。

 親御さんとしては絵本を読んでほしいとのことですが、とても良いことだと思います。アメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics:AAP)では、乳児期から就学前の間に年齢に応じた読み聞かせをすることが、認知、言語、情緒的発達のために重要だとして、推奨しています※(1)。海外の研究でも、絵本の物語をアニメーションで子どもに見せる場合では視覚的な知覚に偏ってしまうのですが、絵本を読み聞かせたほうが子どもの言語発達を促すといった報告など多数の研究で絵本の読み聞かせの効果が明らかになっています。



 就学前であれば、まだ自分一人では絵本を読み進めるのは難しい子も多いと思うので、1日1回短時間でも親子で一緒に絵本を読む時間を作ってみるのはいかがでしょうか。仕事や家事で時間をとることに難しさを感じるかもしれませんが、子どもに触れ合いながら絵本を読むことで親御さんも思いの外リラックスできるのではないかと思います。子どもにとって、絵本を読む時間が親と一緒に過ごす楽しいひとときで、安心感を得られる時間だと感じられると、絵本を読むことが「楽しい」「心地よい」といった快適なものとして学習できるようになると思われます。


【引用文献】
(1)    American Academy of Pediatrics: Early LiteracyEarly Literacy https://www.aap.org/en/patient-care/early-childhood/early-childhood-health-and-development/early-literacy/

【プロフィール】

森山 沙耶
ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)所長
公認心理師、臨床心理士、社会福祉士
2012年、東京学芸大学大学院教育学研究科修了。家庭裁判所調査官を経て、病院・福祉施設にて臨床心理士として勤務。
2019年、ネット・ゲーム依存予防回復支援サービスMIRA-i(ミライ)を立ち上げ。当事者とその家族に対するカウンセリング、予防啓発のための講演、執筆活動を行う。
著書に『専門家が親に教える子どものネット・ゲーム依存問題解決ガイド』(2023年7月Gakkenより発売)



 



 


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