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「海苔と白いごはんと納豆だけ。ちょっと偏食がひどすぎるのでは?」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q3. 海苔と白いごはんと納豆だけ。ちょっと偏食がひどすぎるのでは?

■家族構成
相談者:かりんパパ(相談したい子の父、30代後半)、妻(30代後半)、娘(相談したい子、5歳)

■ご相談
 うちの娘は、ほぼ海苔と白いごはんと納豆しか食べてくれません。ごはんにふりかけをかけるのもダメです。ふりかけがかかった上の部分だけ残されます。わが家は共働きで、妻は外で働き、私は2年前から自宅兼オフィスで仕事をしています。家事は分担しており、幼稚園のお弁当作りはだいたい私がやっています。さすがにお弁当に納豆を入れるわけにはいかず、ほぼ毎日白いごはんと海苔のおにぎりに、小さなゼリーを入れています。

 もちろん、最初は卵焼きやウィンナーなど色とりどりのものを工夫して入れてみましたが、ごはんと海苔以外は、キレイに残していました。時々、白いごはんと海苔だけでキャラ弁を作ったりもしますが、いかんせん白と黒のツートーンでは、幼稚園児のお弁当にしてはシブすぎます。

 だいたい伸び盛りの幼少期に、こんな食生活でいいはずがない、とあの手この手で、肉や野菜など他の食材もかわいくカットしたりして食卓に出すのですが、食べてはくれません。

 妻は「いつも同じでいいなんて、楽チン!」なんてのんきに言っており、私からすると親の態度として信じられません。幸い、ジュースは飲んでくれるので、果物に野菜を混ぜたジュースを作ったり、市販の野菜ジュースを出したりしています。また、ゼリーが好きなようなので、果物をペースト状にしてゼリーにしたりして、なんとか栄養の偏りを防ごうと努力しています。

 今のところ、小柄ながらも順調に身体は発達しているようですが、なんでも美味しそうに食べる他の子を見ると、「なんでうちの子はこんなに好き嫌いが激しいんだろうか」と悲しくなります。離乳食の時に、当時、育休中だったズボラ妻が「ひきわり納豆おかゆ」ばかり食べさせていたからだろうか、とか、もっと小さかった頃に、私が無理やりいろんなものを食べさせようとしたせいだろうか、など悩みは尽きません。娘は4歳の時、自閉スペクトラム症の疑いありと診断を受けており、そのせいなのでしょうか。

 

A. 専門家の回答

食べられないのは「感覚過敏」の特性のためかも。無理強いは絶対禁物です。
 かりんパパ、モノトーンのキャラ弁なんて、すごいですね! ぜひ見てみたいです。ゼリーやジュースにして工夫するなど、なんとか娘さんに、楽しく食事をして欲しいという愛情を感じます。

 発達に特性のあるお子さんの場合、半分以上に何かしらの偏食がある、という調査報告があります。さらに調べると、どうやらそれは、単なる好き嫌い、というだけではなく、口に入れた感じや見た目などの感覚過敏が原因であることもわかってきました。

 感覚過敏というのは、「味覚」「嗅覚」「触覚」「視覚」「聴覚」といった感覚が、非常に敏感になっていることをいいます。偏食でいうと、食事の準備をする音が嫌だとか、食事中の会話の声が嫌だとか、自分が食べ物を噛む音、例えばキュウリを噛む時のポリポリする音が嫌だという場合もあります。

 感覚過敏は発達障害、特に自閉スペクトラム症のお子さんの80%にあるという研究があります。もっとも、定型発達のお子さんの25%にも感覚過敏があることがわかっており、感覚過敏がある=発達障害である、というわけではありません。

 また、目新しいものを食卓に出したときに、「これ、なんだろう?」と形や匂いで期待が高まる定型発達のお子さんも多いのですが、ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんには、なじみのないものを受け入れるのが苦手、という特性があります。

 娘さんが決まったもの以外食べられないのは、そういう特性のせいだと考えられます。決して「わがまま」や「パパを困らせたい」といったことではなく、さらには「ズボラ妻」(私個人は決してそうは思いませんが)のせいでもありません。

「食べること」をツライことにしない
 ここで一番やってはいけないことは、「無理やり食べさせる」ということです。かりんパパも診断前にやってしまったことを後悔されていましたね。ご自身で娘さんの立場に立って気づかれてえらいと思います。感覚過敏な子どもたちにとって、得体の知れないものを、力ずくで口に入れられるという体験は恐怖でしかありません。触覚が嫌な場合は、例えばドロッとしたスライムを口に入れてるような感覚なのかもしれません。口にしたら鳥肌が立つなんてお子さんもいるくらいです。そうなると、食事=嫌な気持ちになる恐ろしいこと、としてインプットされてしまい、食事嫌いになってしまいます。生きるために欠かせない「食べる」ということが、毎回苦痛なものとなってはあまりにもかわいそうです。

 娘さんは食べられるものが少なくても、身体は成長しているようなので、ママのようなスタンスで、おおらかに見守ってあげてください。パパやママがいろんなものを楽しく食べている姿を見せていれば、そのうち、何かのきっかけで食べられるものが増えていくだろうと思います。

 偏食も、匂いがダメ、食感がダメ、味がダメ、見た目がダメ、温度がダメ、などお子さんによってそれぞれに理由があります。かりんパパのように、お子さんの特性を見て、工夫されるのはとてもいいですね。無理強いはせず、お子さんが心地よく食事ができ、身体も成長しているのなら、よしとしましょう。

 

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久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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