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「癇癪がひどく、感覚過敏もある4歳の娘。私や夫の口にヨーグルトがつくのも嫌がり、「食べないで」と言い困っています。」子どもの発達お悩み相談室 第36回


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q36:癇癪がひどく、感覚過敏もある4歳の娘。私や夫の口にヨーグルトがつくのも嫌がり、「食べないで」と言い困っています。

■家族状況
ぺこ(相談したい子の母、40代前半)、夫、長女(相談したい子、4歳)

■ご相談
 4歳の娘について相談です。日頃から癇癪が酷く悩んでいます。例えば、うまく靴下を履く事ができない。おやつを食べていて手がベタベタしたとき、服を脱ごうとして上手く脱げないとき、パズルをしていてパズルのピースがズレてしまったときなど、キャーと高い声を出して癇癪が始まります。私もいつ癇癪が始まるのかヒヤヒヤしながら子育てをしている状態です。幼稚園の先生曰く園では全く癇癪はありませんと聞いています。娘は少し発語が遅く、今でも発音が不明瞭な所があり時々伝わらないこともあります。(3歳児健診の時、言語聴覚士の先生に相談しましたが問題ありませんでした。)また感覚が過敏な所があり、パジャマのズボンが履けなかったり、掛布団を嫌がります。視覚の面では、私や主人がヨーグルトを食べているときに少しでも唇に食べ物が付く事を嫌がり「これは食べないで!」と隠されてしまいます。そんな娘の事を理解してあげることができず、つい感情的に怒ってしまいます。娘に寄り添う為には、どのように対応したらよいのか是非アドバイスお願いします。

A. 専門家の回答

自分のこだわりで人の行動を変えさせるのはNG。

ヒヤヒヤしながらの子育ては子どもにとってもストレス
「いつ癇癪が始まるのかヒヤヒヤしながら子育てをしている」というのは、ぺこさん自身もつらいでしょう。逆に娘さんの立場からすると、常に親に心配そうに見られているというのは、ジャッジされているようで、きついのではないでしょうか。

 そんな状況もあって、ピリピリとした空気の中、ちょっとしたことでも気に障って癇癪を起こしてしまう。ぺこさんもつい感情的に怒ってしまい、拍車をかけるという悪循環になっているように思います。

 幼稚園では全く癇癪はないというのは、他のお子さんもいて先生も娘さんだけいつも見ているわけではないのでのびのびできるからなのかもしれませんね。おうちではお母さんにわかってもらいたいという甘えが出ていることも考えられます。癇癪が起きた時には、「幼稚園では頑張ってるんだよね、えらいね。お家だと怒っちゃうこともあるよね。大丈夫だよ。」と、一旦外で頑張っているお子さんを労ってあげてください。

 そのようなお母さんのサポートがあると、お子さんの高ぶった気持ちを少しずつ緩やかにしていくことができます。嫌なことがあっても、優しい言葉をかけてもらったり、受け入れてもらえると、人はネガティブな気持ちにもうまく対応できるようになります。それは、大人でも子どもでも同じことです。

親は「お助けマン」
 また、感覚が過敏なところがある、ということですが、確かにそれで癇癪を起こしやすい特性のあるお子さんはいます。その場合、癇癪を起こすきっかけとなるようなことは、できるだけ取り除いておくのが最善の策かもしれません。

 例えば、靴下ははきやすい状態にして渡す。服も脱ぎ着しやすいものを選ぶ。そして、「こういうのだったら着やすいかなと思ったんだけど、どう?」とお母さんがお子さんのことを考えてやっていることを伝えたうえで、お子さんの気持ちも聞く、というやりとりをしてください。そういうやりとりが毎日繰り返されることで、親子の温かい関係性が育まれていきます。お子さんはお母さんに受け入れられているという気持ちで安心し、自分もお母さんに優しくしたいという行動が現れ、心地よい関係がつくられていくはずです。「ゴムのところも柔らかいよ、どうかな」とか、「ツルツルの肌触りだね」などあらかじめ気にしそうな感覚の部分も先手を打って大丈夫なことを見せながら渡すといいでしょう。

 手のベタベタが気になるのなら、手を拭く濡れタオルを用意しておく、パズルはさりげなく「これどこかなあ?」などと言いながらズレを直すなど、ごきげんとりをするのではなく、「手助け」をしてください。

 そして、この靴が小さくなったら、次はヒモ靴にしてみる?とか、これができるようになったら次はこれ、という見通しを伝えておくと良いと思います。娘さんのような特性のあるお子さんの場合、先の見通しを立てるのが苦手ということがままあるためです。

子どもの「できた!」を増やす
 親のサポートについては、時々、親が手を出すと子どもを甘やかすことになり成長を妨げてしまう、と思っている親御さんがいます。子どもの頃にそのように育てられた人に多いようです。

 でも、例えば困っているお年寄りがいたら手助けしますよね。同じことです。助けては子どものためにならないということではありません。お母さんが助けてくれるという安心感を与えることも大切です。

 うまくできないから癇癪を起こすのであれば、うまくできないであろうことはできるようにサポートをする。そして、最後の部分は自分でやらせるようにします。自分で「できた!」という喜びが、発達のエネルギーになります。できた!という体験を増やして、すかさず「わあ、うまくできたね、お母さん嬉しいな」とほめましょう。

こだわりを人に押しつける態度には「NO」を
 また、娘さんがぺこさんやパパの口にヨーグルトがつくのを嫌がって「食べないで」と言うとのことですが、これは、だんだんとやめられる方向にもっていきましょう。ぺこさんは感情的にならずに「ヨーグルトがついてるのはママのお口だよ。ママは大丈夫だから心配しなくていいよ。ママが取りたいと思ったら取るから」と、娘さんが感じていることと、ママが感じていることは同じではないよ、と優しくわからせるように伝えましょう。最初は本人にはわからないかもしれませんが、くり返し言うようにしてください。

 4歳という年齢で、他の人と自分は感じ方に違いがある、ということを理解させるのはまだ難しいのですが、娘さんの嫌がる気持ちもうまく受け止めながら、これはママのこと、とわからせるようにしていきましょう。

ポジティブな子育てが子どもの自己コントロール力を育む
 少し気になったのは、言語聴覚士の先生に問題ない、と言われたのに、発語が遅かったし、発音も不明瞭だとぺこさんが思われていることです。子どもの発達にはばらつきがあり、必ずしも母子手帳の「発達の目安」どおりにはいかないこともよくあります。

 子どもはそれぞれ、様々な特性を持って生まれてきます。娘さんの場合、感覚が過敏だったり癇癪を起こしやすい、という特性があるのでしょう。そういうタイプだということをまずは親が理解しておくことが大切です。癇癪を起こされると、誰でも、またかとうんざりしてしまうと思いますが、どうかそんな姿も丸ごと受け入れてあげてください。

 子どもが自分の行動をコントロールするのは、脳の前頭前野が担う「実行機能」という働きによるものです。実行機能は、状況に応じて自分がどんな態度をとるかを決める、行動の司令官の役割を果たします。この実行機能のもとになる認知機能は、幼児期に飛躍的に発達します。そして、この時期に周囲がポジティブな働きかけをし、適切な足場を作ってあげることで、ますます伸ばすことができるのです。

 そのためには、ぺこさんにも心の余裕が必要です。パパにもっと育児に参加してもらったり、おじいちゃんおばあちゃんに協力をお願いするなど、自分自身が少しでも余裕が持てるように、娘さんのために環境を整えられると良いと思います。

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久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。

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