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体は「本気になるゾーン」で変わる『体力おばけへの道 超ハードモード編 自分史上最高の「動ける体」を手に入れよ!』ためし読み

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努力しているのに、「思うように体が変わらない」と感じていませんか。
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※本連載は『体力おばけへの道 超ハードモード編 自分史上最高の「動ける体」を手に入れよ!』から一部抜粋して構成された記事です。



体は「本気になるゾーン」で変わる

 最大酸素摂取量、乳酸性作業閾値と血中乳酸蓄積開始点、運動後余剰酸素消費量。いずれも私たちトレーナーが学ぶ運動生理学で使われる専門用語ですが、言葉が難しいだけで、指している本質はそれほど難しくなく、それぞれ共通性があります。

 これらは結局、「どこで息が上がり始め、どこで長くは続かなくなるか」を示す指標です。

■ 体が、どの状態で本気になるのか?
 体力おばけになるにあたって、体は中途半端な刺激には適応しません。しかし、毎回限界まで追い込む必要もありません。重要なのは、体が「本気になるゾーン」に、短時間でも確実に入ることです。

最大酸素摂取量~スタミナの目安~

 最大酸素摂取量(VO2max)とは、体が一度にどれだけ多くの酸素を使ってエネルギーを生み出せるかを示す指標です。難しそうに聞こえますが、要するにスタミナの目安と考えてください。

 一般的に、運動習慣のない成人ではこの値は低く、日常生活レベルの動きでは高くなることはありません。一方、運動習慣がある人や持久系トレーニング(マラソンなど)を行っている人では、この数値は明確に高くなります。同じ年齢、同じ体格でも、「どれだけ本気で動けるか」に大きな差が生まれるのです。


 体力おばけになりたいのであれば、最大酸素摂取量(VO2max)に到達するレベルを基準にした高い運動強度を、一時的にでも体に課す必要があります。日常動作や軽い運動だけでは、この能力はほとんど向上しません。

■ 2つのスイッチポイント〜体が本気モードへ移行する境界線〜
 ここで、体が本気になるゾーンを理解するうえで欠かせない、2つの乳酸に関わるスイッチポイントが登場します。それが、LT(乳酸性作業閾値)とOBLA(血中乳酸蓄積開始点)です。
「乳酸」と聞くと、乳酸菌? 体にいいもの? 悪いもの? とイメージしてしまう人もいるかもしれません。ですが、ここで言う乳酸は、乳酸菌とはまったく別のものです。例えば、長い階段を一気に上ったとき。
 太ももがじわっと重くなり、「あ、きつい」と感じ始める。あの感覚の正体が、乳酸と関係しています。
 まずLT(乳酸性作業閾値)とは、運動の強度が上がり、体が「楽ではない」と感じ始める境界線です。

● 呼吸が深くなり、会話が少し難しくなる
● それでも、まだ動き続けられる

 このあたりがLTに近い状態です。
 さらに強度が上がると、OBLA(血中乳酸蓄積開始点)と呼ばれるラインに入ります。ここでは乳酸の産生が処理能力を上回り、「これはきつい」「長くは続かない」と、体がはっきり認識します。体が本気モードに切り替わる、もう一段深いスイッチです。
 重要なのは、これらが「危険なライン」ではないということです。むしろ、体が変わるために必要な合図のようなものだと考えてください。
 トレーニングを積み重ねていくと、このLTやOBLAは、より高い強度側へとシフトしていきます。以前は「きつい」と感じていたペースが、「まだ余裕がある」に変わっていく。これが、体力が高まっている証拠です。
 体力おばけとは、苦しさに耐えられる人のことではありません。きつさを感じる境界線そのものを、少しずつ押し広げていける人のことです。この2つのスイッチポイントを理解しておくと、なぜ短時間の高強度トレーニングが有効なのか、なぜ毎回限界まで追い込む必要がないのか、その理由が自然と見えてきます。

運動後余剰酸素消費量~酸素の借金を返している時間~

 本気の運動をしたあと、しばらく息が上がり、「はあはあ」した状態が続きます。これが運動後余剰酸素消費量(EPOC)、いわば酸素の借金を返済している時間です。

EPOC=Excess Post-exercise Oxygen Consumption

●Excess:余分な

●Post-exercise:運動のあとに

●Oxygen Consumption:酸素を消費する量


 つまり、「運動が終わったあとも、体が余分に酸素を使い続けている状態」です。

 運動中、体は一時的に「必要な酸素を前借りした状態」でエネルギーを使います。そのツケを、運動後にまとめて返しているわけです。軽い運動ではこの借金はすぐに返せますが、本気ゾーンに入った運動では、返済に数時間、場合によっては半日以上かかります。

 この時間帯には、

● 筋肉や神経の修復

● 乱れた体内環境の立て直し

● 次に備えるための再構築

 が進んでいます。つまり、体力づくりは運動中だけでなく、運動後の「はあはあ」まで含めて進んでいるのです。


 ここで一度まとめます。


1 スタミナ(最大酸素摂取量)の上限に近いところまで体を使う

2 有酸素だけでは足りなくなり、体の仕組みが無酸素に切り替わる

3 その後、酸素の借金を返しながら回復と再構築が進む


 この流れがそろったとき、体は初めて本気で変わります。

■ 3つの条件を満たすHIIT
 そして、この3つの条件を短時間で、かつ現実的に満たしやすいのが、高強度インターバルトレーニング、HIITです。HIITは「きつい運動」なのではなく、体が変わるために必要なゾーンに、効率よく入るための設計なのです。
 この考え方が分かれば、
「なぜ短時間なのか」
「なぜ全身運動なのか」
「なぜ毎回限界まで追い込まないのか」
が、すべて一本につながります。
 体力づくりは、気合でも根性でもありません。体が本気になるゾーンを理解し、そこに安全に、確実に入れる設計をすること。ここから先で扱うHIITの実践は、そのための具体的な方法論に過ぎません。




運動は小さく始めていい

体力とは、どれだけ頑張れるかではなく、どれだけ合理的に自分の体を使えているかが重要です。
「体力は、誰でも伸ばせる。運動は、小さく始めていい。」
 その理解を行動へとつなげるために、解説をしてきました。拙著のタイトルにある「超ハードモード」とは、無理をする合言葉ではありません。体が本気になる強度を見極め、必要な分だけ使えるようになること——その判断力こそが、本書で伝えたかった「ハードさ」です。
若いうちは勢いでも前に進めます。しかし、忙しさや責任が増え、回復の時間が限られるほど、無計画な努力は続きません。だからこそ、壊れない設計と、回復を前提にした強度設定、そして日常に組み込める習慣が必要なのです。
体力とは、無理ができる能力ではありません。長く前に進み続けるための基礎性能です。
体を信頼できるようになると、行動に迷いが減り、生活の質は確実に変わります。この本が、体を再設計し、もう一段上を目指すきっかけになれば幸いです。
壊さずに、積み上げる。それが、私の考える「体力おばけへの道」です。

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