
「子どもは勝手に大きくなる」は大間違い! 身長は食事と生活習慣を変えればなりたいスタイルを目指せるかもしれない! 身長を伸ばすまったく新しいメソッド21を掲載した『1万5000人のデータに基づいた すごい身長の伸ばし方』をためし読み! ”身長外来”のパイオニアが効率的に身長を伸ばすメソッドを伝授します。
連載第3回は、第3章「寝る子は本当に育つ」の中から「身長を伸ばすために必要な睡眠時間とは?」と「質のよい睡眠とは? 寝た子は起こすな!」を紹介します!
※本連載は『1万5000人のデータに基づいた すごい身長の伸ばし方』から一部抜粋して構成された記事です。
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身長を伸ばすために必要な睡眠時間とは?
身長を伸ばすための最も重要な3つの要素「食事」「睡眠」「運動」のうち、この章では、睡眠についてお話しします。
睡眠で重要視しなければならないのは、時間と質、どれくらいの時間を眠ればいいのか、そして、質のよい睡眠をとるにはどうしらいいかという点です。
まず、睡眠時間について考えましょう。
アメリカの非営利慈善団体である国立睡眠財団(National Sleep Foundation)が年齢別の推奨される睡眠時間を公表しています。
睡眠の専門家だけではなく、小児科や産科婦人科、老年学、神経学、解剖学といった多くの学会の専門家がこの検討に加わり、2018年に論文として発表されたものです。
次ページのグラフを見てください。推奨睡眠時間のグラフで、年齢別の適正睡眠時間が示されています。
いちばん左から0〜3か月、4〜11か月、というように右に行くにつれて年齢が上がっていき、いちばん右が65歳以上となります。
グラフでは、濃い色のゾーンが適正睡眠時間を表しています。0〜3か月の赤ちゃんであれば、14〜17 時間が適正睡眠時間になります。薄い色の上下の部分が準適正睡眠時間となります。0〜3か月の赤ちゃんであれば、11〜13時間、もしくは18〜19時間が準適正睡眠時間ということになります。
グラフ全体を見ていだければ、すぐわかりますが、グラフが右に進むほど(年をとればとるほど)、適正睡眠時間がへっていきます。
逆にいえば、若ければ若いほど、たくさん寝ることが求められていることになります。
文字通り、寝る子は育つのです。
寝ている間に成長ホルモンが分泌されますから、しっかり睡眠をとることは身長を伸ばすためには欠かせないことです。
グラフからみなさんの身長に関連するところをピックアップしてみましょう。
年齢による適正睡眠時間はこのようになります。
・0〜3か月:14〜17時間
・4〜11か月:12〜15時間
・1〜2歳:11〜14時間
・3〜5歳:10〜13時間
・6〜13歳:9〜11時間
・14〜17歳:8〜10時間
・18〜25歳:7〜9時間
よく「8時間寝てください」といわれますが、このデータに基づけば、8時間で足りるのは14歳以上です。
13歳以下であれば、8時間寝ても、睡眠時間が十分には足りないということになります。
そこで、身長を伸ばすための適正睡眠時間を学校区分に合わせてわかりやすくまとめ直すと、次のようになります。
● 小学生:9〜11時間
● 中学生:8〜11時間
● 高校生:7〜10時間
なお、睡眠時間は長過ぎてもよくありません。
ですから、ここで示されている適正時間を目標に、眠る時間をコントロールするといいでしょう。
身長を伸ばすためには、睡眠時間の確保することも大事ですが、それに劣らず、睡眠の質も重要です。
質のよい睡眠とは? 寝た子は起こすな!
睡眠の質というと、人によって、さまざまなイメージを持たれるかもしれません。「寝つきがよい」とか、「熟睡感がある」とか、「目覚めがよい」などなど、いろいろな尺度が考えられます。
ただし、身長を伸ばすという1点に限っていえば、最も重要となるのは、睡眠の深さということになるでしょう。
質のよい睡眠とは、深い睡眠であり、それがまた、身長を伸ばす睡眠ともなりうるのです。
質のよい睡眠、深い睡眠がなぜ身長を伸ばすことにつながっていくのか、考えていきましょう。
本題に入る前に、私たちの睡眠のメカニズムについて簡単におさらいしておきます。
睡眠には、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」という2つのタイプの睡眠があります。
レム睡眠は、脳が起きていて、体は休んでいる状態です。レム睡眠中は目がぴくぴく動く、Rapid Eye Movement(急速眼球運動)があるところから、REM(レム)睡眠と呼ばれます。
レム睡眠では、脳は活発に活動し、記憶の整理や定着が行われていると考えられています。
一方、ノンレム睡眠では、脳も体も休んでいます。
眠りは、まずノンレム睡眠から始まり、一気に深い眠りに入ります。
眠りについてから1時間ほどたつと、徐々に眠りが浅くなり、レム睡眠へと移行。その後再び、ノンレム睡眠の深い睡眠に入り、続いて浅い眠りのレム睡眠に移行といった具合に、おおよそ90分周期で、ノンレム睡眠とレム睡眠が交互に出現するというパターンが一晩に3〜5回繰り返されます。
とくに重要なのは、ノンレム睡眠時において、成長ホルモンが分泌され、成長促進や疲労回復効果がもたらされる点です。
ここで、ワシントン大学の高橋由紀先生らによる睡眠と成長ホルモンについての研究論文を取り上げましょう。
この実験に協力したのは、20〜30歳代の男性4人女性4人の計8人。
8人に眠ってもらい、睡眠中に30分間隔で採血し、脳波と眼電図による眼球運動の有無を調べました。採血によって成長ホルモンの濃度がわかり、脳波と眼球運動から睡眠の深さが調べられます。
実験データをグラフにすると、次ページのようなものになります。
グラフの上の部分が睡眠の深さを示すグラフとなっています。この場合、グラフが下に向かうほど、眠りが深くなることを示します。
横軸は睡眠の時間軸を表しています。
グラフを見ると、夜10時に就寝し、11時前後で縦軸がステージ4付近まで届いています。
つまり、最初の90分の眠りが非常に深いということを表しています。
さて、そこで、それに対応する成長ホルモンの分泌のグラフを見てみましょう。
ご覧になっていただければ一目でわかる通り、最初の睡眠90分で分泌量が急激に上がったあと、急降下しています。
上の睡眠のグラフで、睡眠の最も深くなるステージ4に向かって眠りが深くなっていくのに応じるように、成長ホルモン濃度が上がっていることがよくわかります。
さらに詳しく数値を見ていくと、成長ホルモン濃度の最大値は40%に達しています。その後の睡眠では、そこまで高くなることは一度もなく、成長ホルモンの濃度の最小値は、およそ1〜5%程度にとどまったまま。
このように最初の寝入りばなの最も深く眠っているときと、朝方の浅い眠りのときとでは、成長ホルモンの分泌濃度に10倍程度の差があることがわかります。
このグラフは20歳女性のデータですが、別のある日は成長ホルモン濃度が70%まで分泌されているときもあったとされています。
つまり、深い睡眠を得られているときは、そうでないときの約20倍程度成長ホルモンが分泌されていたとも考えられます。
この研究データから非常に貴重な知見が得られます。
それをまとめると、次のようになるでしょう。
● 睡眠は、最初の90分が最も大切
● 最初の90分の睡眠で、いちばん低いときの10倍程度の成長ホルモンが分泌される
この論文によって、質のよい睡眠とは? という問いについても重要な手がかりが得られることになります。
身長を伸ばすために必要な成長のホルモンの分泌をより多く促すためには、最初の90分の眠りをできるだけ深くすることが重要ということになります。
この点は、ぜひお父さん·お母さんたちにご理解いただきたい内容だと考えています。
お子さんが眠りについたあと、最初の90分で、どっと成長ホルモンがたくさん分泌されています。
だからこそ、お子さんが眠りについた当初の時間帯は絶対に起こさないように注意してください。
寝た子は起こすな。
この研究が教えてくれる重要なポイントになります。
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