「妊娠したかもしれない」「どうすればいいんだろう」。
妊娠・出産は人生のなかでも大きな出来事ですが、そのスタートには不安や戸惑いがつきものです。
はじめてのことだからこそ、何を聞けばいいのかもわからない——そんな方のために、知っておきたい大切な知識を、現役の産婦人科専門医がやさしく、わかりやすくまとめたのがこの『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』です。
妊娠がわかったときにすることから、妊婦健診の流れ、出産の準備や赤ちゃんとの生活まで。
知っておくだけで安心できる情報が、イラストや図解とともにぎゅっと詰まっています。
自分のためにも、大切な赤ちゃんのためにも、まずは「知ること」からはじめてみませんか?
※本連載は『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』から一部抜粋して構成された記事です。
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◆ 陣痛本当に乗り切れる?
「鼻にスイカを突っ込む」「腰と腹に定期的にタイキック」「おなかを引き裂かれる」「いつまでたっても出ないウ●チ」などなど。さまざまなたとえで表現される陣痛ですが、かなり痛いのは事実のようです(私は一生経験することはないので、これだ! という言葉は見つかりませんが……)。なかには野獣のように吠えまくっていた妊婦さんもいます。今まで妊婦さんにビシビシ厳しかった女医さんですら、自分が出産した後はどんな妊婦さんにもやさしくなってしまうくらい大きな転機となるようです。
さて、ひと口に陣痛といっても「お産の流れガイド」(P88〜89)で説明したように、ずっと同じ痛みが続くわけではありません。最初の陣痛は、生理痛程度の痛みのことが多いですし、一過性におなかが張って、その後消失してしまう前駆陣痛というものもあります。
陣痛の定義は、一応「10分以内の定期的な子宮収縮か1時間に6回の子宮収縮が、胎児娩出まで続く」となっているのですが、陣痛と前駆陣痛を見分けるのは難しいため、弱い陣痛の間は一時様子を見るか、どうしても不安であれば病院に問い合わせてみましょう。
では、陣痛中はどのように過ごせばよいのか……。これはもう人それぞれ、千差万別です。寝ころがる人、階段を上り下りする人、四つんばいで耐える人、テニスボールやゴルフボールをお尻に押しつける人、アクティブチェアを利用する人……、どんな方法でもよいのでだんだんと陣痛が強くなってくるのを待ちましょう。
ただ、ひとつだけ注意点が。子宮の出口が全開大になるまでは、どんなにおなかが痛くなっても、なるべくいきまないこと。「いきみを逃す」なんて表現をしますが、子宮口が開ききる前にいきんでしまうと、赤ちゃんに余計なストレスがかかってしまったり、子宮の出口が傷つく原因になってしまいます。
とてもツラいでしょうが、なるべく分娩台まではいきみを逃すことを心がけましょう。どうしても陣痛を乗り切る自信がない場合などは無痛分娩という選択肢も。医師に相談してみてください。

遠藤先生の伝えたいこと
・陣痛と前駆陣痛の判別はつきにくいので、最初は様子を見るべし
・陣痛中の過ごし方は自由だが、子宮口全開大まではなるべくいきみを逃す
◆ 上手ないきみ方のコツ
子宮口が全開になって、赤ちゃんの頭が下りてくると、いよいよいきんでお産になりますが、いきみの上手・下手って、正直かなりあります。あれもこれも書いてしまうと、分娩時にはきっとパニックになってしまうと思うので、上手ないきみ方のコツを3つに絞ってお伝えします。
1 姿勢が大事!
お尻を分娩台にぴったりとつけて、いきむ時は自分のおへそをのぞきましょう。いきむ時に手元のレバーを引っ張り上げるようにすると、自然とお尻がくっつきます。
2 いきむ時は息をなるべく漏らさない!
子宮収縮に合わせていきむ時は、直前に助産師から「息をいっぱい吸って〜、はいっ! いきんで〜!」と声をかけられると思います。しかし、最初にためこんだ空気がいきむ際に漏れると、残念ながら一緒に力も逃げてしまいます。逆に収縮がない時は、赤ちゃんに酸素を送るように深呼吸を。
3 顔ではなく、骨盤に力を入れる!
いきむ時に顔が真っ赤になっている妊婦さんがいますが、実は顔にはかなり力が入っているのに、骨盤に力が届いていないことに! ひどい便秘のお通じ時をイメージして、お尻でいきむように。この3点を覚えておけば、きっとお産を乗り越えられます。ファイト!
遠藤先生の伝えたいこと
・いきみの上手・下手がお産を左右する
・3つのポイントを押さえて安産を
大切な妊娠期~産後を、より安全に、より楽しんでほしい
妊娠・出産は、人生のなかでもかけがえのない一大イベントです。
うれしさと同時に、不安や疑問が押し寄せてくるのはごく自然なこと。
「これで合ってるのかな?」「こんなとき、どうしたらいい?」
診察時になかなか聞けない、相談できないこともあるでしょう。
また、妊娠・出産は女性だけが担うものではありません。
パートナーや家族も一緒に知識を持ち、支え合って新たな命を迎える時代です。
はじめての人にも、もう一度の人にも。この一冊が、みなさんにとって安心して出産の日を迎えるための心強い味方になりますように。
【書籍情報】
著者: 遠藤 周一郎
- 【定価】
- 1,650円(本体1,500円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- A5判
- 【ISBN】
- 9784046069177