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妊娠中期・後期に知っておくべきことは?【『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』】ためし読み

「妊娠したかもしれない」「どうすればいいんだろう」。

妊娠・出産は人生のなかでも大きな出来事ですが、そのスタートには不安や戸惑いがつきものです。

 はじめてのことだからこそ、何を聞けばいいのかもわからない——そんな方のために、知っておきたい大切な知識を、現役の産婦人科専門医がやさしく、わかりやすくまとめたのがこの『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』です。

妊娠がわかったときにすることから、妊婦健診の流れ、出産の準備や赤ちゃんとの生活まで。
知っておくだけで安心できる情報が、イラストや図解とともにぎゅっと詰まっています。
自分のためにも、大切な赤ちゃんのためにも、まずは「知ること」からはじめてみませんか?

※本連載は『はじめてでもよくわかる 知っておきたい妊娠と出産安心BOOK』から一部抜粋して構成された記事です。


※これまでの連載はコチラから


◆ 赤ちゃんの推定体重はどうやって量るの?

 皆さんの関心が高い赤ちゃんの大きさ、いわゆる推定体重は、妊娠6カ月くらいから測定できるようになります。妊娠後期になると、毎週のように超音波検査を行い、赤ちゃんの体重を教えてくれる病院が多いのですが、体重が増えているのを楽しみに健診に来たら、体重が増えてないばかりか、逆に減ってしまうこともよくあり、不安を感じてしまう人が結構多いですよね。

 しかし、安心してください! 実は推定体重って、いい加減なんです。その理由は、体重を算出する計算方法にあります。推定体重の算出は、赤ちゃんを、「球体+ 円柱」の体積に近似させて、割り出しています。つまり、皆さん学校教育で習ったであろう数学の計算式を、赤ちゃんに応用しているだけなんです。そのため、完全な円形になっていないことがほとんどの妊娠後期のおなかでは、腹囲を正確に測れず、推定体重はブレやすいのです。ですから、妊娠後期で、推定体重があまり増えていなくても、多少小さくても、お医者さんは「大丈夫ですよ~」とサラッと言ってしまうのです。


赤ちゃんの頭を球体に、体を円柱に見立て、超音波で①BPD、②AC、③FLの長さを測り、そこから体重を算出します。


 

 ちなみに体重や各部分の大きさというのは、「標準偏差」というもので判断します。標準偏差とは、100人のクラスで身長測定をした時の平均からの数値のバラつきのこと。平均身長より2〜3㎝低くてもそれは別に異常ではないですよね? 「私、平均より1㎝小さいから栄養失調かも!?」なんて心配する人は、まずいないと思います。しかし、赤ちゃんのことになると、平均よりも少し小さかったり大きいだけで不安を感じるお母さんが多いもの。現在の産科健診では100人中95人が入るくらいの誤差は個性の範囲という判断になっています。

 ちなみに、私の子の場合ですが、「頭が大きくておなかが小さい」という状況で、結構心配になったものです。標準偏差でいうと、頭が100人中95人に入らないくらい大きく、逆におなか回りが100人中65人に入らないくらい小さかったのです。頭が大きいお子さんは結構いるし、逆に頭は小さい場合のほうが、染色体異常の可能性が高くよほど注意しないといけない所見なため、ほぼ問題ないのですが、わが子のことになると、やっぱり心配になってしまったのです(親バカですね)。

 結局、当時の教授にも見てもらったのですが、「大丈夫、大丈夫」と笑われてしまいました。やっぱり自分に近ければ近い存在の診察ほど、正常な判断はできないものだなあと実感しました。

 遠藤先生の伝えたいこと  



・赤ちゃんの推定体重は妊娠6カ月頃から測定できる

・ただし結構いい加減なので、それで一喜一憂しなくてOK




◆ 腰痛や便秘、足のつり、まるで体は老人!?

 妊娠中は、おしっこが近い、便秘になりやすい、足はつりやすい、他にもさまざまな体の変化が起こり、いつもどこかが「痛い」と言っている老人のような気分になってしまうことでしょう。なにせおなかの中で、もうひとり育てているんですから無理もありません。なかでも最も大きな変化としてあげられるのが、子宮や赤ちゃんの変化です。

 赤ちゃんは3㎏、羊水と子宮を合わせると5㎏にもなります。もともとの子宮の重さは約50gですが、10カ月で100 倍以上の重さになるのですから、凄まじい変化です。大きくなった子宮に膀胱や腸が押され、頻尿や便秘の症状が表れます(便秘はホルモンの影響もあります)。

 また、妊娠中は血液の濃度さが薄くなり、量が多くなります。総血液量が1・5倍になるため、心臓が頑張らなければならず、動悸や息切れが起こりやすくなります。

 また、出産時の出血に備え、血液が固まりやすくなるので、妊娠中期以降から血栓症のリスクが上昇します。予防としては、水分を十分にとること、足の筋肉を頻繁に動かすようにしてくださいね。

 遠藤先生の伝えたいこと  



・妊娠中期は何らかの不調がつきもの

・妊娠中の血栓症予防には水分補給と足の運動を




◆ 逆子! どうやったら正常に戻る?

「自然分娩したい」という妊婦さんにとって、逆子はやっかいな問題ですよね。現在、逆子の経腟分娩を行っている施設は少ないため、多くは帝王切開術によるお産を選ばざるを得ません。そのため、妊婦健診が後半になるにつれ、逆子になっているかどうかは、大切なポイントのひとつとなります。

 ネットで逆子を戻す方法を調べると、漢方・お灸・ツボなど、信憑性が高そうなものから低そうなものまであって混乱してしまいますよね。なかには「赤ちゃんに『直って!』と直訴する」「温めると直るといわれているので、おなかにドライヤーをあてる」なんていう方法まであるとか。

 また、多くの産院では、逆子体操という方法を紹介していると思います。これは、うつ伏せになってお尻を高くする体操ですが、あまりやりすぎるとおなかが張りやすくなることもあるし、そもそも医学的根拠があるわけではありませんので、必死になって体操をし続けるのもあまりおすすめできません……。

 皆さんに覚えておいてほしいのは、実際に最後まで逆子が直らないのは、わずか5%程度ということです。「逆子体操で直った!」「お灸で直った!」という妊婦さんがまわりにたくさんいるかもしれませんが、もともと何もしなくても自然に直っていた可能性も否定できません。気長に、最後まで諦めずに赤ちゃんが戻るのを待つのがいいと思います。実際に私の経験でも、帝王切開術前日ぎりぎりに逆子が戻った妊婦さんも、何人もいらっしゃいます。

 ワイルドな妊婦さんだと「いっそ外から赤ちゃんを無理やり回転させて逆子を直す方法はないかな」と思う人もいるかもしれません。

 実は実際に外から赤ちゃんをグルッと回転させる「外回転術」という方法が存在します。ただし、この方法には大きなリスクがともなうため、病院で取り入れていないところもありますし、ましてや絶対に自宅ではやらないこと!

 なぜなら、赤ちゃんが子宮内で回る時に、胎盤が剥がれてしまう危険があるからです。外回転術は十分な人員を確保して、胎児の心拍をチェックしながら行うもので、慎重な病院だといつ帝王切開になってもいいように、硬膜外麻酔(脊椎から針を挿入し麻酔薬を流し込む局所麻酔)を背中から挿入してから処置を行うことも。まさか自宅で、赤ちゃんをグリグリ回そうとするお母さんはいないと思いますが、一応忠告しておきますね。

 また、逆子の妊婦さんが破水した場合、へその緒が子宮の外に飛び出てしまう「臍帯脱出」という緊急事態を引き起こすこともあるため、すぐに病院に連絡して受診するようにしましょう。

 遠藤先生の伝えたいこと  



・最後まで逆子が直らないのは5%程度

・逆子の直し方のひとつである外回転術は自宅ではやらないように!




◆ 入院準備どこまで必要?

 妊娠・出産本を見ると、「入院準備品リスト」なるものが載っていることが多いのですが、印鑑・母子手帳など、手続きに必要なものから、ベビーの着替えやだっこひものような赤ちゃん関連アイテム、さらに産後のお母さん関連アイテムや、「本当にコレ必要なの?」というものまで書いてあることも……。

 正直いうと、そんなに入念に準備をしなくても何とかなります! 陣痛中に使うテニスボールやうちわなんかは、置いてある産院がほとんどで、用意してあるアロマを焚いてくれるところも多いです。

「赤ちゃんのオムツ、ミルクや着替え、お母さんの室内着や腹帯くらいは準備しておかなくちゃ!」と思うかもしれませんが、多くの産院ではミルクやオムツの会社から一定量提供されていて、産まれたての赤ちゃんに必要な消耗品をお母さんにプレゼントしてくれたりします。

 さらには、室内着や腹帯、各種アメニティーなど、入院中に必要な物品を全て入れてあるマザーズバッグというものを入院時に渡してくれる産院も多く、入院中、困らない程度のものは補えたりもします。入院準備については、妊娠・出産本より、自分がお産する施設の助産師に、「本当に本当のところ、何が必要ですか?」と聞いておくのが一番かもしれません。

 遠藤先生の伝えたいこと  



・入院準備は出産する施設の助産師に確認を

・施設によっては入院準備品をプレゼントしてくれるところも



大切な妊娠期~産後を、より安全に、より楽しんでほしい

妊娠・出産は、人生のなかでもかけがえのない一大イベントです。
うれしさと同時に、不安や疑問が押し寄せてくるのはごく自然なこと。
「これで合ってるのかな?」「こんなとき、どうしたらいい?」
診察時になかなか聞けない、相談できないこともあるでしょう。

また、妊娠・出産は女性だけが担うものではありません。
パートナーや家族も一緒に知識を持ち、支え合って新たな命を迎える時代です。
はじめての人にも、もう一度の人にも。この一冊が、みなさんにとって安心して出産の日を迎えるための心強い味方になりますように。

【書籍情報】


著者: 遠藤 周一郎

定価
1,650円(本体1,500円+税)
発売日
サイズ
A5判
ISBN
9784046069177

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