
今回は、けいたろうさんが気になる画家、わたなべさとこさんにインタビュー!
どうしてこんなにすてきなのでしょう?
にへいたもつさんとの共作で、新作絵本『だーっこ だっこ』を出版された、わたなべさとこさん。まさにタイトル通り、抱っこしたくなるような動物を描かれます。愛らしい眼差しを向ける、フワフワ柔らかそうな動物達、素敵なその絵の秘密に迫ってみました。
―絵を描かれるときに画材は何を使っているのですか?
油性色鉛筆とペトロール(油彩画を描くときに、油絵具の粘度や濃度の調整、希釈などに用いられる溶剤)です。色鉛筆はいろんなメーカーの物を使用しています。(ユニ アーテレーズカラー/ FABER-CASTELL ポリクロモス色鉛筆 / KARISMA COLOR / トンボIROJITEN(色辞典)他)
―絵本の絵をどのような工程で描いているのか、教えてください。もし、絵を描かれる工程で工夫されていることがあればあわせて教えてください。
文章を読んで、一番最初に鉛筆でラフデッサン(下描き)を描きます。そのデッサンを絵本の形にしながら構図や表情など試作を重ねてダミー本を作り、絵本の原画を描いていきます。
原画は色鉛筆で描いてはペトロールを布や綿棒で紙に染み込ませる。また、その上から色鉛筆で描く……それの繰り返しで仕上げていきます。ペトロールを使って、油性色鉛筆の顔料を紙に染みこませると色鉛筆の塗り重ねがうまく出来ます。もちろんぼかし効果もあるので柔らかい表現にもつながります。

鉛筆ラフ

描き始め

ペトロールで紙に染めつけ

完成直前。葉っぱの色が濃く葉脈が赤い

完成。葉っぱの色を修正をして、目鼻を仕上げる(ママを見る目線は特に注意)
―わたなべさんの画風(絵のタッチ)が確立したのはいつ頃ですか? これまでいろいろと試されてきたのでしょうか?
1989年の出産を機に、それまで油彩画を製作していたのを断念して、アクリル画に転向しましたが、アクリル絵の具が乾く速度についていけなくて困ってしまいました。子どもがいてたびたび筆を止めても又すぐに描き始められる画材は……色鉛筆! それ以来色鉛筆を中心にいろいろ試しました。
―今の画風になったきっかけを教えてください。
2009年夫がボローニャ国際絵本原画展に入選したのをきっかけに、イタリアで開催された児童書専門のブックフェアBOLOGNA CHILDREN'S BOOK FAIRに行って、信じられないぐらいの絵本に襲われて大興奮。どうしても絵本が描きたいと、現在の塗り重ねる描き方になりました。赤ちゃん絵本なので、赤ちゃんの目で見てもはっきり認識できることは重要ですが、柔らかい雰囲気にもなるように塗り重ねは大切です。
―一般の方が色鉛筆で絵を描く時に「こうしたら素敵な絵が描けますよ」というポイントがあれば、教えてください。
フワフワ柔らかい絵を描きたいのなら、色鉛筆の芯はマメに削って尖らせて。芯が太くなると紙の繊維をつぶして色鉛筆の混色が汚くなってしまうので、尖らせると細かい表現ができます。
―今回は「だっこ」をテーマにした絵本を描かれましたが、たいへんだった所があれば教えてください。
一番悩んだのは、作者のにへいさんが伝えたい思いを反映する構図作りです。その中でも、いろんな子たちがママやパパを見つけて……のページ。次のページのだっこが、嬉しい・安心・気持ちいいにつながる様にしたかったので、この見開きをどうするか考えがまとまるまで何も進みませんでした。


―わたなべさんが初めて手がけられた絵本「わたしはだあれ?」の発想の元となった絵があるとうかがいました。よろしければ拝見できませんか?

―おぉ、これは雰囲気のある絵ですね。この絵が絵本作家デビューにつながったわけですね。この絵についても少しお話頂けますか?
展覧会でこの原画を見て、「わたしはだあれ?」の構成をされた後路(うしろ)さんに絵本のアイディアが浮かんだそうです。
この絵は作画工程でPCを使っています。洋紙に和紙の印刷をしてるのが絵本原画と違うところでしょうか。
―今後出版される作品のご予定を教えてください。
来年も、にへいさんと絵本を出版予定です。
―さいごに、わたなべさんが描かれた絵本を読んでいる皆さんに、メッセージをお願いいたします。
絵描きなので、絵がメッセージになってくれるといいなと思いながら描いていますが、絵本によってコミュニケーションと愛情が実感できるひとときを紡いでもらいたいです。だっこしてもらって読んでもらうのも、読んだ後にぎゅ〜ってだっこしてもらうのも、嬉しいです。
わたなべさとこさん、ありがとうございました!
「だっこして」そう言ってもらえるのは、人生のうちほんの一時。いっぱい抱っこして、心の器を満たして欲しい。「抱きグセはつきません!」僕が尊敬する保育士も、そう言っています。親子の絆を育む絵本。
わたなべさとこさんの絵本作家デビュー作です。
愛らしい動物達が、“だあれだ?遊び”をしています。読んでいる子ども達も、一緒に遊べます。「あったり〜っ!」と言われると嬉しくて、いつの間にか大好きになってしまう絵本。
読めば始まるこちょこちょ遊び。「こちょこちょして!」言うのが恥ずかしい時に娘は、この絵本を持って来ます。僕も娘と触れ合いたい時に、選びます。親子の時間が欲しい時、絵本ってメッセージにもなるのですね。
当時生後6ヶ月だった娘が、初めて好きになった絵本。読みながらなでてあげると、本当に嬉しそうでした。それが僕も嬉しくて、父子の時間が増えました。絵本は、赤ちゃんの時から始まるのだなぁと、改めて思いました。