夏の時期に増える、あせも、虫刺され、日焼け。肌を露出する季節に多くなりがちな皮膚トラブルですが、近年は少し様子が変わってきています。
エアコンの使用で汗をかきにくい時間が増えた一方、外遊びでは一気に強い紫外線や暑さにさらされるなど、生活環境での変化が著しくなっています。近年の過酷な気温変化のなかで、子どもの肌にもさまざまな負担がかかっていることでしょう。
特に小学生くらいまでの子どもは、かゆみを我慢することが難しく、無意識に掻き壊してしまいがちです。その結果、軽いトラブルだったはずが「とびひ」などの感染症に進んでしまうことも少なくありません。
「この程度でも受診した方がいいの?」「市販薬で様子を見て大丈夫?」と迷う保護者も多いのではないでしょうか。
そんな夏に多い子どもの皮膚トラブルの特徴や見分け方、家庭でのケア、受診の目安を中心に、神奈川県立こども医療センター皮膚科の馬場直子先生にお話をうかがいました。
馬場直子先生
神奈川県立こども医療センター皮膚科
1983年滋賀医科大学医学部卒業。
横浜市立大学皮膚科講師、横須賀共済病院皮膚科勤務を経て、1994年から神奈川県立こども医療センター皮膚科部長、2015年より横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼任、2024年から神奈川県立こども医療センター皮膚科非常勤。専門は小児皮膚科学全般で、特に小児アトピー性皮膚炎、血管腫やあざの治療、皮膚感染症など。NHK「すくすく子育て」に出演し、子どものスキンケアについて発信している。
夏の三大皮膚トラブル
夏によく見られる子どもの皮膚トラブルといえば、あせも、虫刺され、日焼けが代表的です。「汗・虫・紫外線」の3つの量がこの時期に増えることが主な要因なので、すべてを防ぎ切ることは難しいのですが、事前にある程度の予防や対策は可能です。
① あせも(汗疹)
《症状》
首や背中、ひじやひざの裏などに、細かく赤いブツブツが出て、その箇所がかゆくなります。
《原因》
あせもは「細菌や汚れそのもの」が主因ではなく、汗の出口(汗管)がふさがることで起こります。夏季はとくに、皮膚表面の汚れや角質層の乱れによって、汗が出にくくなる状況で発症しやすくなります。
《予防》
とにかく汗をかいたまま、汚れたままにしておかないことです。蒸れや厚着も状況を悪くします。
●汗を濡れタオルなどですぐに抑え拭きする(こすらない)
●シャワーで汗や汚れを洗い流す
●下着をこまめに替える
●昼寝や夜中の寝汗にも注意
《対処》
●できる限り掻かせない(悪化して「とびひ」になるリスクあり)
●清潔を保つ(汗を残さない)
●赤みが強く、長引く場合や心配な場合は皮膚科受診(状況によりステロイドを処方)
② 虫刺され
夏の虫刺されは、公園や、キャンプなどのアウトドア環境はもちろん、家の庭や虫の入り込んだ室内などどこでも起こります。
蚊、ハチ、ブヨ、アブなどが代表的です。
《症状》
子どもは虫刺されに免疫がないこと、皮膚の防御力が弱いこともあり、症状が強く出てしまう傾向があります。
刺された直後ではなく、時間が経ってから強い痛みやかゆみが出る場合もありますし、場合によっては水ぶくれ、まれに発熱を伴うことも。またハチは刺したときの毒性の特徴が、アナフィラキシーショックにつながりやすく、激烈な反応が出るリスクが高いため特に要注意です。
●蚊→小さめの赤い腫れとなって、強いかゆみが出る(痛みはほぼない)
●アブ→赤く大きく腫れ、強い痛みに加え出血することも。刺された瞬間にすでに痛いのが特徴
●ブヨ→赤く大きく腫れ、あとから強いかゆみが出る。複数箇所刺されやすい
●ハチ→熱を持った強い痛み。刺された1箇所が赤く腫れて硬くなる。集団で襲われたり、スズメバチは1匹でも複数回刺せるので症状が重症化しやすい
《刺されやすい状況》
蚊、アブ、ブヨは吸血が目的で、人間の呼吸で排出される二酸化炭素、体温、汗などの匂いに寄ってくるといわれています。ハチは巣の近くでは特に防衛本能が強く働きます。1匹のみしかいないとしても、手で払いのける、よけるなどの大きな動きに対してや、黒など濃い色に反応しやすいとされています。
《予防》
●長袖長ズボン着用(肌の露出を減らす、暑くなりにくい薄手の素材を選ぶなども考慮する)
●虫よけを塗っておく
(スプレータイプは吸い込みに注意、一度保護者の手に出してから塗るのが望ましい。乳幼児はかぶれに注意してシールタイプなどの利用も)
《対処》
●清潔にする(汚れている場合)
●流水や保冷剤で冷やす(即効性あり)
●薬(抗ヒスタミン・ステロイド)で持続的に抑える
●ハチの注意点→呼吸困難や意識低下がみられるときは即救急受診が必要
ハチのアナフィラキシーショックは、刺されて2回目以降で起こることがあります。
また蚊で発熱を繰り返すことがあるようなときは、非常にまれに「蚊刺過敏症(EBウイルス関連)」になっていることもあるので、受診したほうがよいでしょう。市販薬には、抗ヒスタミン入りが基本ですが、強いかゆみや痛み、炎症を抑えるにはステロイドが最も効果が高いとされています。
刺されたあと、強いかゆみが止まらない、症状のせいで眠れない、腫れが強い、症状がさらに広がるといった場合は皮膚科を受診してください。
● 掻き壊すと「とびひ」になる?
「たかが虫刺され」と侮ってはいけません。小学生低学年くらいまでは強く掻き続けてしまい、その結果掻き壊しやすいので要注意です。症状がおさまらないのに放置すると、細菌感染を起こして「とびひ」になってしまうことがあります。
とびひは、伝染性膿痂疹(でんせんせいのうかしん)といって、皮膚の掻き壊した部分の傷に細菌が入り込み、水ぶくれやただれになります。それを触った手で別の場所に触ると、どんどん広がっていくのが特徴です。
これはあせもであっても虫刺されであっても、掻き壊してしまえばとびひを発症するリスクは同じです。
子どもにかゆみを我慢させることはほぼ不可能ですから、とにかく掻いてしまうときには、かゆみを止める策(市販薬を塗る、受診して治療するなど)を講じることが必要です。
➂ 日焼け
日焼けは元気の証のように思われがちですが、実際は程度の差こそあれ「やけど」であると認識したほうがいいでしょう。もちろん紫外線が肌に与える影響(皮膚の老化、皮膚がんリスク上昇)も見逃せません。日頃から肌の露出を減らしたり、日焼け止めをこまめに塗ったりするなどの、予防を心がけてください。
《症状》
●赤くなる
●痛い
●熱を持つ
●水ぶくれ
重症の判断としては、水ぶくれができたり、赤みが広範囲にわたる場合は受診をおすすめします。6〜12時間後(夜〜翌朝)に悪化したり、眠れないほど痛かったりする場合は早めの受診が必要です。
《対処》
まずはやけどをしたときと同じ考え方で「冷やす」ことが最優先です。ただ、保冷剤や氷を直接当てる、長時間冷やし続けるのはNG。特に子どもは広い範囲を長く冷やすと体温が下がりすぎるといった影響が強く出てしまいます。
痛みが強い場合はステロイド剤が有効ですが、できるだけ医師の処方の上での使用が望ましいでしょう。
★正しい冷やし方
・15~20℃くらいの流水で10~20分程度、痛みが落ち着くまで継続して冷やす。
・保冷剤や氷を使う場合は、タオルなどに包んで、短時間で済ませる。
《予防》
子どもの外遊び自体はすこやかな成長に欠かせないので、日焼けを極端に恐れることは不要ですが、日頃から気をつけておけることがあります。
●紫外線が最も強い10~14時の時間帯の外出や外遊びをできるだけ避ける
●日陰を選ぶ
●つばがあり首筋をカバーできる帽子、ラッシュガードなどで肌の露出を抑える
●日焼け止めを塗る(日常:SPF20〜30程度 レジャー(海・プール):SPF30〜50を目安に、2〜3時間ごとに塗り直す)
海や山のレジャーやキャンプなど、お楽しみがたくさんある夏ですから、子どもには楽しく安全に遊んでもらいたいですね。
あせもやとびひ、虫刺され、日焼けなどのさまざまなリスクを知って備えた上で、夏休みを存分に満喫いただけたらと思います。
写真:PIXTA