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夏休みにいざチャレンジ、自由研究!
だけど、「研究のテーマってどうやって決めるの?」「進め方、まとめ方が分からない…」――自由研究ってムズカシイ!
そんなあなたのために、角川つばさ文庫で大人気のシリーズ「理花のおかしな実験室」から、理花とそらが出張研究にやってきてくれました!
理科が大好きで、《究極の科学者》をめざす理花が、この夏どうやって自由研究にいどんだのかポイントをお話してくれるよ。
理花とそらの大研究をいっしょにおいかけて、自由研究を攻略(こうりゃく)しちゃおう!
【第1回】自由研究のテーマは、身近な「なんで」「どうして」にあり!?
理科が大好きな小5の理花(りか)。今年の夏は、いっしょに《究極の実験》めざしてお菓子作り=実験をしてきた相棒(あいぼう)・そらくんと、〈共同研究(きょうどうけんきゅう)〉に挑むことに。
テーマが決まらないまま、クラスメイトとキャンプに参加する二人ですが……?
*
「理花、宿題もう終わったの? すごいな」
ソファで雑誌を読んでいたパパが声をかけた。
「全部じゃないよ。だけど、キャンプの前にほとんど終わらせておこうって思ってたんだ」
「そっか。キャンプは来週だもんなぁ」
「あとは自由課題だけなんだけど……何しようかな……あ、パパ、パソコン借りていい?」
「何を調べるんだい?」
「自由課題のテーマ」
学校で出された自由課題っていうのは、自由って言うだけあって、一人一人好きな勉強をして出せばいいというもの。
絵を描いていく子もいれば、読書感想文を書いていく子もいる。
去年は絵を描いて出したんだ。だけど今年はやりたいことがあった。
自由研究だ。
パソコンで「夏休みの自由研究」って入力して調べてみる。だけど出てきたのは本のタイトルだったみたいで、開いてみても内容が見られなかった。
これじゃあ、わかんないよ!
「うーん」
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ディスプレイの前でうなっていると、後ろで見ていたパパが笑う。
「調べ物にはインターネットに向いているものと向いてないものがあるからねえ。じっくり調べたいときはやっぱり本の方が詳(くわ)しく書いてあるよ。うちにも自由研究の本、なかったかな?」
わたしは家にあった自由研究の本のことを思い出す。前にやった、アイスキャンディの実験がのっているやつだ。
「でもあれはほとんどやっちゃったし」
夏休みとか関係なくやっていたものだから、ほとんど終わってしまっている。
「そうかぁ」
パパはディスプレイをのぞき込むと、ふと言った。
「そうだ。ひさびさにパパと一緒にやってみるかい?」
二年生まではパパと一緒に実験をしていたことを思い出す。
すっごく楽しかったんだ! だけど……。
「……ううん。今年は自分で考えてやってみたいんだ!」
パパはちょっと残念そう。
でも「理花はすっかり科学者だなあ」とうれしそうでもあった。
「だけどテーマがムズカシイんだよね……」
わたしがちょっと弱音を吐(は)くと、パパは考え込む。そして「身近なナゾに注目するといいかもねえ」と言った。
「身近なナゾ?」
「理花が普段(ふだん)『なんで』とか『どうして』って思うようなことに、面白い研究の種(たね)がたくさんつまっているんだ」
「『なんで』、『どうして』、かぁ」
「というか、理花には得意分野があるじゃないか」
「得意分野?」
首を傾げるとパパは笑った。
「いつもやってることだよ」
いつもやってるって言ったら──《お菓子作り》だ!
わたしが目を見開くと、パパはにっこり笑った。
「その延長でいいんだと思うよ。共同研究でもいいんじゃないかな」
共同研究という響(ひび)きに、急にワクワクが大きくなるのがわかった。
だって、そらくんと一緒に自由研究ができたら素敵だなって思ったんだ!
*
ごはんが炊(た)けると同時に、バーベキューが始まった。
そらくん、桔平(きっぺい)くん、シュウくん、ゆりちゃん、ななちゃん、そしてわたし。それから他の学校の女の子が四人で大きなテーブルを囲む。
テーブルはバーベキュー専用で、中央には網(あみ)と炭を置く場所があった。
桔平くんが火をつけてくれた炭が赤々と燃えている。上に置かれた網にお肉をどんどんのせると、じゅうじゅうという音があたりに響いていく。
そらくんたちが切ったキャベツやピーマンやにんじん、かぼちゃやとうもろこしなどの野菜も並べられて、色とりどりですごくおいしそうだ。
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「肉の焼ける匂いって最高だよな……」
トングをもったそらくんがわたしのお皿にお肉をのせてくれる。そうして自分のお皿にものせながら隣(となり)に座った。
「おいしそうだよね……」
わたしはうなずいた。
お皿の上のお肉は網の焼き色が付いていて、それがまたすごく食欲をそそった。
ほんと、すごくおいしそう!
お肉が行き渡るとみんなで一斉に言う。
「「いっただっきまーす!」」
口に入れると香ばしい匂いが広がる。
ああ、おいしい!
ほっぺが落ちそう!
そらくんはあっという間にお肉を食べ終わると、今度はまめまめしくみんなのお皿に野菜を配ってまわる。
「そらくん、替わるよ! 食べられないでしょ」
わたしが言うと、そらくんはニカッと笑う。
「おれ、こういうの好きだから大丈夫!」
すごいなぁと感心してしまう。
他校の女の子たちもちょっと恥ずかしそうにしながらもうれしそうだ。ひそひそと耳打ちをしている子もいる。
あの子、かっこいいよね。
女の子たちの口がそう動いた気がしたとたん、誇らしさと同時に、何とも言えない苦しさが湧き上がる。
え、なに、この気持ち。
とまどったとき、網を挟んで前に座っていた桔平くんが突っ込んだ。
「っていうか、そら、おまえ、肉ばっか取ってんじゃん! もしかして野菜食べたくないからじゃないの?」
「─バレたか! おれ、ピーマンニガテ!」
とたん、笑い声でその場が沸き、わたしの中のもやもやが少し和らいだ。
気を取り直して野菜を食べる。
とうもろこしも焦(こ)げ目がついていて、そこがちょっとだけ苦くって、だけどおいしい。かぼちゃもピーマンも火が通るとすごく甘くなる。不思議。
ぐるりと配って回って戻ってきたそらくんが、かぼちゃを頬張りながら言う。
「バーベキューって、ほんとメチャクチャうまいよな!」
「家で焼くのとぜんぜんちがうよね……!」
「それに、このごはんもメチャクチャうまい! この『おこげ』とか炊飯器(すいはんき)じゃできないしさ~。どうしてこんなにちがうんだろな」
あ、また『どうして』。─研究の種だ!
そう思っていると、またお肉がお皿にのせられた。
いい匂いが鼻に届くと、ついついそちらに気持ちが移ってしまう。
お肉! おいしい!
そうしてお肉と野菜でお腹がいっぱいになったころ、最後のメニューが運ばれてきた。
「ほら、とっておきのデザートだよ!」
「わああ、マシュマロだ!」
高い声が上がる。
え、マシュマロ? なんで?
不思議に思っていると、
「こうするんだ」
お兄さんがまず最初に焼き方を教えてくれる。
それを見ながら、向かい側に座っていたななちゃんがワクワクした顔で言う。
「焼きマシュマロだよぉ、キャンプではいつも食べてるんだけど、焼くと甘くってすごくおいしいよ!」
へえ! 焼くとおいしくなるって初めて知った!
「菓子のことなら任せてくれ!」
そらくんが一番乗りで串にマシュマロを刺す。
網を外し、炭火の近くでてばやく炙る。
何人かがそらくんの真似をして炉の周りに集まった。
そんな中、くるくるといい感じで串をまわすそらくんは、特別に手慣れているように見える。
一回見ただけなのに。やっぱりパティシエの才能を感じるなあ……。
そんなふうに感心していると甘い匂いが漂ってくる。うわあ、いい匂い!
「理花、ほら」
そらくんは焼けたマシュマロをわたしに差し出した。
これ、わたしのために焼いてくれた、の?
そう思ったとたん、どきんと胸が跳ねた気がした。
「え、いいの?」
そらくんはうなずくとにっこり笑った。
なんだか急激にうれしくなる。
わたしだけに、特別に焼いてくれたような気がしてしまったのだ。
そ、そんなわけない、ってば!
ドキドキしながら口に入れて、わたしは目を丸くする。
外はカリッとしているのに、中はとろっとしているのが絶品!
うわああ、おいしい!
*
「理花ちゃんの思い出は?」
思い出かぁ。
わたしは少し考えて口にした。
「マシュマロ、かなぁ」
はじめて食べた焼きマシュマロ。すごくおいしかった。
「ほんと、どうして焼いたらあんなにおいしいんだろうね!」
ゆりちゃんが何気なく言ったとき、わたしはハッとする。
『どうして』。
それが、頭の隅っこに残っていた自由研究という言葉にパズルみたいにはまったんだ。
「あ」
『どうして』─まただ! パパの言ってた、研究の種!
しかもこれはお菓子がらみ。ってことはそらくんと一緒に研究できそうじゃない!?
浮かんだアイディアにドキドキしてくる。
そらくんに話しかけようとして、わたしはハッとする。
あ! だめだ! わたしとそらくんが実験してることは、まだ秘密だった!
桔平くんに知られたら、きっとさっきみたいに冷やかされちゃうよ~~! それは、イヤだ。だけど─。
うずうずしてしまう。どうしても今、伝えたくてしょうがなくなる。
わたしはシュウくんをちらりと見る。
シュウくんはまたカメラに目を落として、何かぶつぶつとつぶやいている。
次に、桔平くん、そしてななちゃんとゆりちゃんに順に目線を向ける。
よし、まだキャンプの思い出話に夢中でこっちを見てない!
みんなが見ていないうちに─!
「そらくん」
ひそひそと呼びかけると、そらくんは意外そうな顔でわたしを見た。
「どうした?」
「マシュマロって、自由研究のテーマにできるかもって思って」
急いで言うと、そらくんの目がきらりと輝いた。
「『マシュマロを焼いたらどうしておいしいのか』だよ!」
「あ!」
「そらくん、まだ自由研究のテーマ決まってなかったよね? これ、お菓子作りに関係してるし……この研究が、もしかしたら《究極の菓子》につながるかもしれないし」
それに、『後半にいっぱい菓子作りをやろうな』って約束してたし!
「一石二鳥だよね?」
一石三鳥って言っていいくらいかも!
「だから、一緒にやらない?」
周りを気にしたからすごく小さな声になったけど、そらくんには伝わったみたいだった。
そらくんは力強くうなずく。
やった……! これで、そらくんと自由研究ができるよ!!
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理花はキャンプ中、ほかにどんな「どうして」「なんで」を見つけたのかな? 気になったら下の本もぜひチェックしてね!
作:やまもと ふみ 絵:nanao
- 【定価】
- 748円(本体680円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046320803
いろいろな自由研究にチャレンジしよう!
夏休みの宿題の中でも最も苦労する課題の1つが自由研究…。
ということで、夢中になること間違いなしの自由研究ネタをご紹介しています!
ぜひチャレンジしてみてくださいね♪