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【第2回】実験のポイントは「比べてケンショウ」!? / 『理花のおかしな実験室(3)自由研究はあまくない!?』ダイジェスト


第2回 実験のポイントは「比べてケンショウ」!?

キャンプから帰ってきて、いざ、自由研究スタート! 理花とそらは、どんな風に実験を進めたのかな?

 次の日、そらくんは大きなリュックサックを背負ってわたしの家の実験室にやってきた。しかも手にはマシュマロの入ったビニール袋まで持っている。
「すごい荷物だね……」
「あれ? 理花、まだ声が少し変じゃね? 鼻声だ」
 そらくん、やっぱり意外にするどい。
 昨日の寝冷えのせいか、まだちょっとだけ鼻が詰(つ)まってる。そしてちょっと喉(のど)も腫れてる感じだった。
 だけどそこまでひどくないし、心配させたくない。せっかく来てもらったのに、中止にするのも嫌だった。
「大丈夫だよ」
「そっか?」
 そらくんはちょっと安心したように笑うと、リュックから道具を出していく。
 全部きれいに並べて手を洗うとエプロンをつける。
 さあ、焼きマシュマロに挑戦だ!
「だけど……、バーベキューみたいな火はないよね」
 ここで火って言えば……と、カセットコンロに目を向ける。
「コンロの火を使うしかないか!」
 カセットコンロの火をつけて、フォークに刺して炙ろうとしたものの……。
うわっ……焦(こ)げた!
 え、バーベキューのとき、あれだけ上手に焼いてたのに?
 わたしも一つやってみる。
 だけど、火に近づけるとシュルシュルと縮(ちぢ)んで、あっという間に黒く焦げてしまう。
「ほんとだ! すぐに焦げちゃう~!」
 マシュマロは二十個入り。残りのマシュマロは十八個だ。
 あんまりムダにできないよ~!
「ガスの火だと、バーベキューと同じようにはいかないっぽい……」
「そういえば、青い炎は赤い炎よりも熱が高いってパパが言ってたけど、そのせいかも」
 そらくんはタブレットを取り出すと、検索窓に「家で焼きマシュマロ」と入力した。
 そしてすぐに、「トースターで作れるらしいぜ」と目を輝(かがや)かせた。
 うん、それならいけそうだ!
「トースター、持ってくる!」
 わたしは家に戻ると、ママにお願いしてトースターを借りてきた。
「あ、うちのとはちがう種類。うちのって温度調整とかない。ダイヤルだけ」
「そうなんだ?」
 うちのトースターには一応温度調整機能がついている。だけど、いつも230℃にセットしてあるんだ。
 レシピには、アルミホイルにマシュマロを並べて、トースターで五分焼く、と書いてある。
「メッチャカンタンだな!」
 わたしはそれをすばやくメモする。
 なんたってタブレットの使用時間は三十分だし!
 また調べたいことが出てきたときに、時間切れで困りたくないもんね。


 マシュマロを四つ入れると、トースター、スイッチオン!
 今度こそ上手くいきますように!
 そう思いながら、焦がしてしまったマシュマロに目を落とす。
 そらくんが「もったいねえし、焦げてないところだけ食べてみる!」と言うと、マシュマロにかじりついた。
「んー、まあまあいける。あ、茶色くなってるとこ、味が変わっててうまい!」
 わたしもちょっとだけかじってみる。
 だけど鼻が詰まってるせいか、そらくんの言っていることがよくわからなかった。
 サクッとしてはいるんだけど、それだけっていうか。
 ちん! と音がしてハッとする。
 あ、トースターのこと忘れてた!
 あわててあけると……。
「うわっ……また焦げ気味じゃね?」
 とほほといった様子で、そらくんがうなだれた。
 マシュマロのほとんどに黒に近い焦げ色がついている。
 しかもコンロのときとちがって、均等に焦げていた。
 わたしもがっかりしかける。だけど、
「レシピ通りなのに……どうして
 そらくんの言葉にハッとする。
『どうして』?
 あ、これも身近なナゾだ! 研究の種(たね)!
 そう気づくとがっかりが消えて、代わりにワクワクが湧いてきたんだ。
 わたしは焦げたマシュマロをじっと見つめる。
「えっと……焦げるってことは、焼く時間が長かったってことだよね」
 パンを焼くときでも、焼きすぎたら焦げちゃうし。
 そう思いながらトースターを見てハッとする。
 あ、そうか!
「さっき、うちのトースターとそらくんちのトースター、種類がちがうって言ってたよね!? もしかして、レシピを作った人のところともトースターがちがうから、おんなじように焼けないんじゃないかな?」
「あ、そっか。そういや、バーベキューの火と、コンロの火─同じ火でもだいぶん焼け方がちがったよな」
「ひとまず、焼く時間を短くしてみよう


「あとは、温度もかも。さっきの焦げたやつも、あれはあれでうまかったんだよな」
ケンショウしてみよう、か」
「何を? どうやって?」
 わたしはちょっと考える。
 この実験をしようと思った初めのナゾ。それは『マシュマロを焼いたらどうしておいしいのか』ってこと。
 それをわかりやすく説明するには─。
「今って、マシュマロの味が変わる原因、を調べたいんだよね? だったら、今やったマシュマロの実験を、もうちょっと細かくやってみるのはどうかな」
「細かく?」
 わたしはノートを開くと表を書き始める。
「さっき、五分だと焦げて、三分だったら甘くならなかった。三分焼いたあとに一分焼き直した─四分がちょうど良かった」
 ってそらくんが言ってたよね?
「あと、コンロで焼いて焦げたやつも、別のおいしさがあった気がするんだよな」
 そらくんは言う。
 そのへんについては正直に言うとわからなかったから、そらくんに任せてしまおう、とわたしはたずねる。
「そらくんは甘さが変わったって言ってたけど、四分と焦げたものの甘さってちがった?」
「ん~?」
 そらくんは考え込む。
「苦みがあったから余計に甘く感じたのかも?」
 わたしはうなずく。そういう細かい部分もちゃんと調べたほうがいい気がする。
「今度は、焼かない─つまり〇分、一分、二分、三分……って感じで、時間を区切って比べてみよう

できた!
 だけど……できあがった表をしばし見つめて、そらくんは言った。
「なーんとなくだけど……パッとしない……気がしねえ?」
 わたしもちょっと思っていたことなので素直にうなずいた。
 結果の欄(らん)、一行なんだもん。なんだか寂しい表だ。
 それにちょっと気になることがあったんだよね。
 最初にコンロの火で焼いて焦げたマシュマロを見る。それは五分焼いて焦げたマシュマロとは、ちょっとちがうように見えたんだ。
 コンロのほうが焦げ方にムラがあるし、焦げ色も強くて一部は黒くて炭みたいになってる。
 火とトースターだときっと熱さがちがうからだと思う。トースターは230℃で焼いたけど、火って確か1000℃とか超えてた気がするんだ。
 つまり、焼く温度も関係あるんじゃないかな
 だとしたらそっちのケンショウも一緒にしないとダメなんじゃないかなって。
 あとは……。
 わたしはそらくんが記入した『甘さ』の欄をじっと見る。
『ふつう』『甘い』『ちょっと甘い』『すごく甘い』『苦みがあるけど甘い』。
 ……うーん、なんとなくこの結果が気になる。
 するとそらくんがため息をついた。
「実験自体は時間かけて結構がんばった感じなのに、なんか結果がしょぼいっていうかさ、まず研究っぽくないんだよな……」
「研究っぽくない……?」
「なんつーか、説得力がないっていうか?」
 説得力がない、かぁ。
 それって、これを見た人が、なるほどってナットクしてくれないってことだよね。
 その原因について考えて、ふと思いついた。
 そうだ。他の実験と比べてみればいいかも。
 わたしは自分の実験ノートを開く。そしてホットケーキの実験の表─まぜる回数の欄、30回と200回を見てはっとした。
 もう一度マシュマロの甘さの欄を見る。
「結果が数字じゃない……から?」
 数字だと大きい、小さいがはっきりわかるんだ。
 だったら、甘さって、数字にできないのかな。
 そう思っていると、そらくんが言った。
「じゃあ、甘さを数字にする方法を探すか? たとえば五段階評価にするとか?」
「五段階にするって……甘くないはゼロ、すごく甘いは五。そんな感じってこと?」
 そらくんがうなずく。たしかに数字になってるけど……。
 わたしはなんとなくしっくりこずに、ノートを見つめて考え込んだ。
 今はそらくんとわたしが食べ比べてるだけだ。そしてそらくんの感想とわたしの感想、たった二つでも、ちょっとだけだけどちがっている。
 だとすると。
「甘さって、人の感じる感覚だよね……。わたしたちが感じた甘さでも、他の人が食べたらちがうって思うかもしれないよね? 甘いのが好きな人は五でも三くらいに思うかもしれないし。甘いのが嫌いな人はゼロでも三くらいに感じちゃうかも」
「そっか……たしかに」
 それに、なんだかテーマからずれていっている、そんな気がした。
 だって、わたしたちが今知りたいのって、『マシュマロを焼いたらどうしておいしいのか』だ。そこから外れたらダメな気がする。
「ねぇ、『おいしい』と『甘い』って同じなのかな?」
「ん?」
「自由研究のテーマは『マシュマロを焼いたらどうして《おいしい》のか』だったよね。だけど表には《甘さ》についてしか書いてないから」
 そう言うとそらくんは、
「『おいしい』と『甘い』かぁ。うーん……」


 図書館は予想通りにすごく涼しかった。
 外が暑すぎたからか、寒いくらいに感じる。
 ちょっと鳥肌が立ってしまうくらい。
 ロビーには先についていたそらくんがいた。
 そして「先にちょっと探しておいた!」と抱えていた本を見せてくれる。
「あ、これ、『超カンタン 夏休みの自由研究』だ!」
 それはななちゃんが持ってきていた自由研究の本とおんなじ本だった。
「閲覧(えつらん)コーナーに机があるよ」
 わたしが言うとそらくんは「じゃあ、そこでやるか。涼しいし!」とうなずいた。
 子供向けの閲覧コーナーは、近くに小さい子向けの絵本コーナーがあるから、いつもちょっと賑やかだ。
 だから少しならおしゃべりしても大丈夫なんだ。
 二人で並んで本を開く。
 そして上手なまとめ方について調べていたときだった。
 あれ?
 わたしは本をめくる手をピタリと止める。
……そらくん
「なんだ? あれ、理花、顔色悪くねえ?」
 それどころじゃないって思った。
「そらくん、これ見て」
 そらくんはわたしが開いたページを見て、さっと顔色を変えた。
「砂糖の加熱による変化? って……これ……似てねえ?」
 似てるっていうか……これ……。
 どうしてわたし、この実験、見逃したんだろう?
 それは砂糖を水に溶かしたものを加熱して、色と味の変化を調べるという研究だったのだ。
 砂糖水は加熱温度によって、色や形や味を変えていく。その様子が写真付きで載(の)っている。
 透明だった砂糖水がどんどん茶色く変化していく様子は、マシュマロが焦げていく様子にすごく似ている。
 すごくわかりやすい実験だった。
 そして、わたしには、マシュマロの実験の重要な部分を上手にまとめたものに思えた。
 わたしたちの実験、あきらかに、負けている。


 その事実に、がん、と頭を殴られたみたいなショックで身動きが取れない。
 わたしたちの実験が一気に色褪せていくのがわかった。
 そらくんも同じだったのか、黙って本を見つめていた。
「これじゃあ、ダメだな。提出できない」
 そらくんがため息のような声で言った。
真似してるって言われる。しかもレベルがこっちの方がぜんぜん上って、おれでもわかる」
 完敗だ。そらくんががくりと肩を落とす。
 わたしもその通りだと思った。
 自分たちで考えたはずの実験がすでに本に載っている。
 そのことはなんだかすごくショックだった。
 いくらがんばっても、子供のわたしたちが発見したことなんて全部、すでにあきらかにされてるのかもしれないって思えて。
 なんだか悔しくて涙が出そう。
 せっかくの実験がぜんぜん大したことないみたいで。
 こんなんじゃ、究極の実験なんて、いつになったらできるかわかんない。



理花とそらの自由研究はいったいどうなる!?
【第3回 先行研究は「利用」しちゃえ!?】に続きます!



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