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【第3回】先行研究は「利用」しちゃえ!? / 『理花のおかしな実験室(3)自由研究はあまくない!?』ダイジェスト


第3回 先行研究は「利用」しちゃえ!?

オリジナルだと思っていたのに、そっくりの研究を図書館で見つけて、大ピンチの二人。そこで思いついた「わたしたちならでは」の研究とは……?

 わたしは図書館でのことを思い出して、ウツウツとしてしまう。
 ちゃんと自分たちで考えて、実験してケンショウしたことなのに、本の真似をしたと思われるのはすごくくやしい
 自分たちの研究が大したことないって思えてしまった、あのときのショックがじわじわと蘇(よみがえ)ってきて、泣きたいような気分になってきた。
 あのままじゃゼッタイ出せない。
 だけどどうしたらいいんだろう。
 考え込んでいると、そらくんがふと言った。
「シュウの研究、すごかったよな。……悔しいけど認めるしかないよな。あいつがすごいって。あー、素直にアドバイス聞いとけばよかったんだろうけど、なんでか、イライラしててさ」
 しみじみとそらくんが言うのを聞いて、わたしはハッとした。
 ん? アドバイス─?
もっと得意分野で勝負したらいいのに
 シュウくんの言葉が頭の中に湧き上がる。
 得意分野─あれ? それ、誰かと前に話をしたような……。
『理花には得意分野があるじゃないか』
 パパの言葉と重なったとたん、わたしはあっと叫んだ。
「そらくん、それだよ! わたしたちの得意分野で勝負だよ!」
「え? 得意分野?」
「わたしたちの得意分野と言ったら?」
「─あ」
「「料理だ!」」
 同時に口にする。


  本で見たのは『砂糖』を使った『理科』の実験だ。
 だけどわたしたちは『焼きマシュマロ』っていう『料理』を題材にしている。
 料理=理科だって思い込みすぎてたのかもしれない。
 たしかに料理は理科と似ている。だけど似てるけど、ちがう。ちがうよ!
 だから、きっと焼きマシュマロならではの─わたしたちならではのちがった研究ができるはず。
「シュウは去年の研究のテーマを発展させたって言ってたよな? ─じゃあ、おれたちも焼きマシュマロのテーマをさらに進化させればいいんじゃないか?

「これ、図書館で借りてきたんだ」
 そらくんが持ってきた本は、一昨日図書館で見たあの自由研究の本だ。
 砂糖の実験のページを開くと、砂糖水が加熱する温度でどのように変化するのかを調べる実験が載っていた。
 胸がズキズキと痛むような気がする。
「これに気づかなかったら、そのまま出せたんだろうけどな」
 そらくんがくやしそうに言う。
 けれどわたしはそれはちょっとちがうなって思った。
 でも反論する勇気が出ずに黙っていると、そらくんが言った。
「あ、またなんか溜(た)め込んでねえ?」
 ぎくり!
 こういうとこ、そらくん案外鋭(するどい)いんだよね……。
 わかってるんだ。自分の意見を言わなきゃいけないときがあるってことも。
 キャンプで、桔平(きっぺい)くんのために、お兄さんに反論したときのことを思い出す。
 だけど人とちがう意見を口にするのって、どうしても勇気がいる。
 ためらっていると、そらくんは小さくため息をつく。
「あのさぁ。おれと理花、ちがう意見があって当然なんだよ。二人で意見出し合った方がゼッタイいいものができるって思う。ってか、おれだけの考えでやるんなら、おれ一人でやってもおんなじじゃん。相棒(あいぼう)なんだから、遠慮(えんりょ)せずに自分の意見を言うこと! 約束だ」
 相棒なんだから。
 その言葉に背中を押される。
 そうだ。そらくんはきっとわたしが反対意見を言っても受け入れてくれる。
 だって相棒だから!
「……えっとね。わたしは逆に、もっと早くこの実験のことを知ってたらよかったって思ったんだ。だってこの本、ななちゃんが持ってた本と同じだよね? 宿題をみんなでやったときにちゃんと全部読んでたら─最初からこのことを知ってたら、もっとちがった研究ができたんじゃないかなって」
 今改めて考えると、図書館でわたしが感じたのは、同じような研究が既にあるっていうショックと、先に知っていればっていう後悔だった。
「そっか。だから勉強するのが大事なんだな……
 しみじみとしたそらくんの言葉にキョトンとする。
「理花が言ったのって、もしこのことを先に知ってたら、失敗しなかった。それどころか、これを利用してもっとすげえ研究ができたってことだろ? 先に知る─それって本を読んだり、誰かに教えてもらったりってこと─つまり『勉強する』ってことじゃん」
「そ、そっか!」
 それって、すごい発見だと思った。
 知ってたら、勉強したら─この研究をバネにして、さらに先に行けるんだ!
 じゃあ、ぜんぜん、がっかりする必要、ないじゃん!
 なんだか感動する。
 ってことは、この砂糖の実験、利用すればいいんだよね? ……うわあ、すごくやる気が出てきた!
「今からでも、遅くないよね?」
 そらくんはニヤリと笑う。
「だよな! よっしゃ、やる気出てきた! ─でも、どうする? おれたちの実験を、さらにすげえものにする方法」
 そしてわたしたちらしい実験にする方法!
 わたしはノートのタイトルを指でなぞった。
「『マシュマロを焼いたらどうしておいしいのか』─このナゾは面白いと思うんだよね」
 思いついたときの、あのドキドキを思い出す。
 面白いって思ったからやってみようって思った。
 今でも面白いって思うし、このテーマはやめたくないな。
 ふと『おいしい』に目が留まる。そこからなぜか目が離(はな)せなくなる。
 ─あれ、この感覚?
 前にもあった。ここにヒントがあるって、訴える何か。
 じっと見つめていると、そらくんもそこに目を落とした。そしてぽつりと言った。
「そういえば理花さぁ、『甘い』と『おいしい』はちがうんじゃないかって言ってたよな?」
 そらくんは『甘い』という文字を指さした。
『ふつう』『甘い』『ちょっと甘い』『すごく甘い』『苦みがあるけど甘い』。
 並んでいる甘さの比較を見て、パッと思いつく。
「……それだよ! だって、『甘い』は『おいしい』じゃないよね!?」
 砂糖を舐めても『甘い』だけで、お菓子を食べるみたいには『おいしく』ない!
「そっか。確かに……おれ『甘い』『ちょっと甘い』『すごく甘い』の『おいしさ』のちがい、あんまわかんなかった。『甘い』にしか注目してなかったっていうか」
「実は……わたしは甘さのちがいもあんまりわかんなかったんだ……」
 なんで言わないんだよ! とそらくんはため息をつく。だけどすぐに切り替えてつぶやいた。
「じゃあ、『おいしい』には何が関係してるんだ?」
「……もう一回実験、やってみようか。今度は『おいしい』に注目して」
 そらくんはうなずいた。
 残っていたマシュマロを出したり、トースターを借りてきたり。
 準備ができると、時間を区切って焼いてみる。
あれ?
 焼きマシュマロを食べたわたしは首をかしげた。
「おいしい。わたし、五分のがダンゼンおいしいって思う! バーベキューで食べたのと似てる!」
「え? そうか? 確かに甘いけど……そんなにちがう?」
 そらくんはびっくりしている。
 自分でもどうしてかよくわからなくて、もう一口食べてハッとする。
「わかった!」
「?」
 そらくんはきょとんとしている。わたしはちょっと興奮してしまう。
焦(こ)げてるからだ!
 甘みと苦みがある。それから─。
「でもやり方何も変えてないぞ? なんで今度だけそんなにはっきり言うんだ?」
 この間と今日のちがい。わたしにははっきりとわかる。
「わたし、この間作ったときって鼻が詰(つ)まってたんだよ……だから一番ちがうのは匂いだよ!」
「匂い……か!」
「焦げてると匂いがちがうんだ!」
「うわ、気づかなかった……すげえ!」
 そらくんがワクワクしている。
 わたしはキャンプのときのことを思い出して、あっと声を上げた。
「そういえば、お肉を焼いたときも、焦げたいい匂いがしたよね?」
「ごはんの焦げもだな! ……焦げと匂い……そうだ!」
 大きな声に目を丸くする。
 そらくんは椅子から立ち上がると、外に出て行く。
「どうしたの!?」
 あわててついていくと、そらくんは走り出しながらわたしに言った。
「他にも焦げ目をつける菓子がたくさんあるんだ! ヒントになるかもしれない。フルールに行こう!



さっそく、そらの家が営(いとな)む「パティスリー フルール」に向かう二人。ヒントは美味しすぎる「クレームブリュレ」にあって!?

この続きが、研究の肝(きも)! 理花とそらは、どうやってここから《再ケンショウ》したのかな? 気になる研究の結末は書籍『理花のおかしな実験室(3)』でお楽しみください!



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