『ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!』特別対談 第3回

ダンスが義務教育に組み込まれたり、オリンピックの種目にブレイキンが追加されたり、TikTokを中心にダンス動画が盛り上がったり。ダンス人口は年々増えて、ダンスに関わる仕事も増えてきています。
今回は、児童書『ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!』の著者・さちはら一紗さんと、日本発世界初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」で活躍するダンスチーム「KADOKAWA DREAMS」のKISAさん、HINATA.Mさん、颯希(SATSUKI)さんによる特別対談をお届けします。(全3回)
第3回は、作家とダンサーが考えていることについて、自由に語ってもらいました。
――作家とダンサーという職業について、遠いようで共通する部分もあるように思います。どちらも「表現のプロ」のお仕事ですが、お互いに似ていると感じるところはありますか?
一紗さん:自分のやりたいことと、やらなければならないことを両立しなければいけない、というのはプロに共通しているのかなと思います。私自身も、自分が書きたい表現やエピソードがありつつも、この物語を読んでくれる人のことを想像して、こういう楽しさ、おもしろさがあるべきだ、というのを考えながら書かなければいけないなと思っています。
そのうえで、自分が伝えたいことを狙ったとおり100%に伝わったらうれしいなと思います。できているかはわかりませんが……。
KISAさん:めっちゃ読みやすくてわかりやすかったですよ!
一紗さん:安心しました。理想に対して100%の小説を書くのは難しいけど、自分のできる100%の小説を書きたいなとは思いますね。小説は(〆切を気にしなければ)いくらでも書き直しができるので、際限がなくなってしまうのですが……。
KISAさん:ダンスも作品をつくっていくなかで、いろんなアイディアが出てくるのですが、良い方向に向かっているのかわからなくなることがあります。こっちのほうがいいのか、悪いのか。そういう時は、とりあえず両方つくってみて比べるようにしています。それでなんとか本番前日までに80%くらいまで持っていって、当日にもっと改善できるとこないのか突き詰めて、最後の最後は自分たちがつくったものを信じて、「これで絶対いける」と念じて本番に臨んでいます。
Dリーグのお客さんは年齢もバラバラだし、ダンスに詳しい人も詳しくない人もいるので、わかりやすくしようという話はしています。ターゲットを決めて逆算するというのは作品づくりで大事だと思って、私たちも最近ちゃんと考えはじめました。
一紗さん:ロジカルですね。
KISAさん:ダンスって、人の好みだし何がいいのかわからない、採点しづらい、という部分もあると思うんです。そのなかでも、テーマだったりスキルだったり演出だったり、なにか1個でもピンとくるものがあれば、お客さんもジャッジの方にも印象に残るものがあるんじゃないかなと。私たちも、やりたいことと伝えたいことが合わさるようになればいいなと思っています。
一紗さん:ダンスも短い時間のなかで緻密な調整をしていますよね。
KISAさん:作品の構成、流れもすごい大事だと思っていて、KDは特にシンクロやソロをどの位置にするかめっちゃ考えています。小説も話の流れや緩急の付け方も大事で、ダンス作品と通ずる部分があると思います。
一紗さん:KDの作品はメリハリがはっきりしていて、何度見ても飽きないダンスだなと思います。
――ここで話は変わりますが、みなさん小中学生の頃はどんな生活をしていましたか?
KISAさん:私、ダンスしかしてなかったな。遊び禁じられていたんで。
HINATAさん:マジで?
KISAさん:自転車乗るようになったのも小学5年生頃にようやく。怪我するとダンスできなくなるし。スキーも行ったことなかったかな。骨折りやすいって聞くし。リスクを回避してとにかくダンスばかりしていました。
HINATAはドラムしてるし、曲も作れるし、多彩だなあと思います。
HINATAさん:僕は小学校1年生か2年生の時にダンスを始めました。自分は好きなものが多すぎて、空手とか水泳とかいろいろ習っていました。今でも続いているのは、ドラムとダンスです。中学校の時にはサッカーが好きすぎてダンスを一回止めたこともあります。当時、サッカーで副キャプテンやっていました。中学を卒業する時、ダンスをするかサッカーを続けるか悩んでいたのですが、東京のダンスの学校を受けてみたら合格できて、ほかの進路より早めに決まったのでダンスの道を選びました。
一同:よかったー!!
HINATAさん:ダンスは好きな時もあれば、つらいなと思った時もありました。自分はサッカーをやったからこそ、ダンスが好きなんだって気づきました。今まで経験したすべてのことが今の自分につながっているなと思います。
颯希さん:僕も幼稚園の時にサッカーしていました。コーチに蹴るリズムが悪いね、と言われたのを親が気にして小学生に上がる前にダンス教室に入りました。小3くらいにサッカーとはバイバイしました。あと幼稚園の横にスイミングスクールがあって、水泳を小学5年か6年まで習って泳力検定1級まで取っていました。プロダクションに所属したり、空手を習ったりと、いろいろ経験しました。自分の意思というよりは、親の意思が大きかったですね。
一紗さん:私も子どもの頃は、運動系の習い事をいろいろとしていました。ダンス、体操、水泳といろいろやったんですけど、水泳はバタフライができるようにならず、体育の成績もずっと悪い子どもでした。どうやら才能がないらしくて(笑)
ダンスもピアノも習っていたし、合唱クラブも入っていて、運動も音楽も好きだったんですが、実は私すごい音痴で……。
颯希さん:僕も歌うの好きなんですけど、子どもの頃にカラオケで歌い終わった後の「あなたの音域はここからここまでです」という画面表示で「ファ」の音しか表示されなくて。僕も音の取り方がぜんぜんわからないんですけど、歌うのは楽しいですよね!(笑)
一紗さん:好きなことが得意だとは限らないんですよね……。
逆に小中学生の頃は、国語の授業と作文はあまり好きではありませんでした。得意なものと好きなものもずっと一致しない人生だったんですけど、結局は得意なものを好きになればいいんですよね、と言い聞かせながら生きています。
小学生の頃は、小説家になりたいとまでは思っていませんでした。でも絵を描くのは好きで、友だちと4コマ漫画を描いてみたりしていました。中学生になってからは小説家になろうと思って、自分で書いたものをWebサイトで公開しはじめました。
――ダンスも小説書くのも、特別な道具なしにひとりでできるので、始めやすいという共通点がありますね。
KISAさん:体揺らしたら、それはもうダンスです。
一紗さん:特に最近、ダンスって本当に身近になったように感じます。昔はなかなか外で踊りにくい雰囲気がありましたけど。今はスマートフォンでダンスを撮影している若い子たちがいるの自然ですもんね。外で見かけたらほっこりしながら見守ります。
KISAさん:KDの映像を教材として使用していただいている学校もあります。子どもたちがダンスの映像をタブレットで見るような授業があって、急スピードでダンスが身近になったなあと。
颯希さん:僕たちが子どもの頃は授業でダンスの回があっても、恥ずかしがって踊らない子ばかりだったんですが、今は違いますね。KDとしてワークショップで小中学校に訪問することがあるんですけど、みんな人気の振りを自然に踊っていて、「ダンス=恥ずかしい」じゃなくて、「ダンス=楽しい」に変わってきているなと感じています。
一紗さん:ダンスがカジュアルなエンタメになってきているのかもしれませんね。
――子どもたちがダンスに前向きなのはいいことですね。世の中が便利になっていって、AIが台頭してくるようなこれからの時代、単純に計算問題が解けるとかよりも「自己表現ができる」ということの価値はますます高まっていくように思います。
――最後に、ダンサーを目指す小中学生やその保護者の方へ向けて、応援メッセージをお願いします!
KISAさん:KADOKAWA DREAMSは、プロダンスリーグのDリーグという環境で活動させてもらっています。ダンス関係の仕事は私たち以外にも幅広くて、バックダンサーという職業もあるし、振り付け師もあるし、バトルやコンテストといったフィールドもあります。
友だちと遊んで踊ったり、音に合わせて体を揺らしたりするだけで、それは立派なダンスだと私は思います。もしダンスにちょっとでも興味があったら、思ったままに突き進んで、好きだと思えたらその気持ちを貫いてほしいと思います。
颯希さん:それにプラスして……。自分のことを否定してくる人って世の中にたくさん出てくると思います。それを跳ね除けるわけでもなく、全部受け止めるわけでもなく、いい意味で受け流して真っ直ぐに好きなことを続けていれば、おのずと付いてくれる人や好きになってくれる人がいると思うので、人生楽しんでください。
HINATAさん:「諦めない」ってかんたんなようで意外と難しくて、行動に移しても、それを何年も続けられる人はほんのひと握りだと思います。諦めない人間になってほしいです。
――一紗さんからも、作家としてメッセージをお願いします。
一紗さん:私も「好き」を大事にしてほしいなと思います。好きなものを書くのがいちばん楽しく書けると思うし、今好きなものは大人になっても好きなままだと思うので。それと、好きなものを増やせたらすごい素敵だと思うので、「興味あるかも」と思ったことには、どんどん飛びこんでほしいと思います。
それから、好きなもののことを「どうして好きなのか」を言葉にしてみるのもおすすめです。好きの気持ちを言葉にできると、同じものを好きな友だちができるかもしれませんよ。
――本日はありがとうございました!
KADOKAWA DREAMS推薦『ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!』は2025年4月23日発売!
著者: さちはら 一紗 イラスト: tanakamtam
- 【定価】
- 1,375円(本体1,250円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- B6判
- 【ISBN】
- 9784046844606
プロフィール
さちはら一紗
関西出身。「5分で読書 昼休みの事件簿」(KADOKAWA)収録短編で児童書デビュー。ライトノベル作家・シナリオライターとしても活動中。
KISA
「KADOKAWA DREAMS」#2
23-24シーズンよりKADOKAWA DREAMS リーダーに就任。CHAMPION SHIP優勝に導いた。
4歳からダンスを始め、様々なジャンルを習得し小さな身長を武器にしながらGirls hiphopとpoppingを兼ね備え唯一無二の存在になる。
数々のソロコンテスト、ソロバトル、チームコンテストでの優勝、入賞。
他にもアーティストのバックダンサーや国内外問わず""KISAO""とゆうダンサー名でソロ活動で活躍。
世界大会でのソロバトルでも優勝を果たす。
今ではKADOKAWA DREAMSのメンバーKISAとして国内外にもチャレンジをし続け、より多くの人々に夢と希望を与え自分たちも更なる高みを目指す。
周りにリスペクトを持ちつつ、今年も3連覇に向かってチーム一丸となって再び頂点を目指す。
HINATA.M
「KADOKAWA DREAMS」#10
2002年生まれ兵庫県出身。
7歳の頃から映画『THIS IS IT』の影響でストリートダンスを本格的に始める。
小学生の頃は6歳から始めたドラムで舞台に立ったり、ダンサーとしてはコンテストで全国大会優勝や海外アーティストなどのダンサー、PV出演などを経験する。
中学生の頃はサッカー部の副キャプテンで、高校から上京、日本留学プロジェクトにて日本代表としてLAに二ヶ月弱留学。
そこで、自身のアパレルブランド『DAF』のオーナーになる。
現在はD.LEAGUE 22-23 23-24 SEASONのチャンピオンであり、ラッパー""FASM""としてアーティスト活動も行っている。
颯希(SATSUKI)
「KADOKAWA DREAMS」#4
2000年8月生まれ愛知県名古屋市出身。
スポークラブのサッカーのコーチにボールを蹴るリズムを指摘され、母の提案により6歳からダンスを始める。
13歳の時に当時組んでいたチームでオーストラリアでのジュニアクラスの世界大会で優勝、しかし世界中のダンサーを生で見て、改めて世界のダンスの広さを知ると同時に自分もその人たちみたいになりたいと憧れる。
その後、機々なオーディションを受けAIや湘南乃風、BTSなどの名だたるアーティストのバックダンサーを経験。
19歳の時、自分の夢に近づく為にLos Angesに一年以上単身でダンス留学。
本場の情熱やスキル、ダンスに対する愛を生で感じダンスだけではなく考え方などの心境の変化もあった。
留学中にはSteve AokiやLay(EXO)などの海外アーティストのMVに出演。
2020年4月に始めたTiktokは毎日投稿を今も尚続け、100万人ものフォロワーを獲得している。
21-22 SEASON ROUND.12, 22-23 SEASON CHAMPIONSHIP, 23-24 SEASON ROUND.2, 23-24 SEASON CHAMPIONSHIP にてMVDを獲得。
D.LEAGUEに参戦し5年目、 前人未到のD.LEAGUE 2連覇を超えたD.LEAGUE 24-25 SEASONも持ち前の創造力と遊び心、
そして圧倒的な世界観で世界中の皆さんを魅了し必ずKADOKAWA DREAMSを何としても総合優勝へと導きDリーグ3連覇を果す。