『ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!』特別対談 第1回

ダンスが義務教育に組み込まれたり、オリンピックの種目にブレイキンが追加されたり、TikTokを中心にダンス動画が盛り上がったり。ダンス人口は年々増えて、ダンスに関わる仕事も増えてきています。
今回は、児童書『ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!』の著者・さちはら一紗さんと、日本発世界初のプロダンスリーグ「D.LEAGUE」で活躍するダンスチーム「KADOKAWA DREAMS」のKISAさん、HINATA.Mさん、颯希(SATSUKI)さんによる特別対談をお届けします。(全3回)
第1回は、KADOKAWA DREMASのROUND.9~ROUND11の振り返り。実際のダンスはYoutubeなどでご覧いただけますので、ぜひチェックしてみてください。
――小説『ダンサー!!!』の制作においては、KADOKAWA DREAMSさん(以降、KD)の運営するダンススタジオのレッスンの見学・取材をさせていただいたり、原稿の監修にご協力いただいたりと、お世話になりました。先日は、ROUND.9を現地で観覧させていただきました。
一紗さん:ROUND.9のショーケース「掃除のSpeciaList::」すごかったですね。客席から見ると、暗いステージに黄色の手袋が光っているように浮かんで見えて、視覚的なインパクトが強くて、すごくワクワクさせられました。小道具も机しかないのに、これは「掃除」だとわかる動きや表現がすごかったです。
KISAさん:うれしいです。ありがとうございます。
――「掃除」のテーマはどこからきたのでしょうか?
KISAさん:もともとテーマは決まってなくて、ミーティング中に颯希から「これ、掃除に見えるくない?」という声があって、掃除をテーマにしようということになりました。
颯希さん:自分は出身が名古屋なんですけど、机を運ぶことを方言で「机をつる」って言うんですよ。この作品は最初は「指揮者」というテーマを想定してMINAMIちゃんがつくっていたんですけど、まだ「指揮者」がしっくりこないねという制作過程のなかで、「この机をつっているような動きって学校の掃除に見えるよね」という会話が発展していって完成しました。
一紗さん:作品が先にあって後からテーマを差し込んでいく、ということもあるんですね。
HINATAさん: ROUND.11の作品(LIVE-雷舞-)は、先にテーマをしっかりと固めてから、そのコンセプトに合ったものをダンスで表現していくという作り方でした。この「掃除のSpeciaList::」のパターンのようにテーマやタイトルを後付けしていくのは、めずらしいやり方で、普段はあまりやらない戦い方だったと思います。
――続いて、見事SWEEP勝ちを収めましたROUND.10のお話をお聞きしたいと思います。
一紗さん:「HIP HOP IS...」は、KDを見せつけるぞという気迫を感じました。衣装はKDのマークの翼をイメージされているのかなと思ったりもしました。「HIP HOP IS...」というテーマは、王道でありながら解釈が難しい問いだと思うのですが、実際に見たときには、「HIP HOPのど真ん中をやるぞ」という迫力がダイレクトに伝わってきた演目でした。
HINATAさん:いちばんうれしい言葉です。「HIP HOP」にはいろんな捉え方があっていいと思います。ひとつのじゃない正解っていうのがすごいおもしろいなと思って、このテーマを提案しました。
KDはいろんなダンスのスタイルを持っていて、メンバーもそれぞれ違うジャンルを踊れるなかで、チームにひとつ軸があったら絶対勝てると思っています。その軸は、自分はHIP HOPだと思っています。
勝利後のコメントで、自分の場合は、「HIP HOP IS...」の後に続く言葉は「MOTIVATION(モチベーション)」だと思っていると話しました。自分たちが高いモチベーションで躍ることによって、それを見た誰かの生きる活力=モチベーションにもなったらいいなという思いを込めていて、そういうのも含めて、この作品からHIP HOPというものを感じてくれていたらうれしいなと思いました。
一紗さん:エースパフォーマンスもすごくかっこよかったです。
HINATAさん:ありがとうございます。
KISAさん:SWEEP(6対0)で勝てたので、自分も見てて「うおおお」と感動しました。
――颯希さんもソロパートがありましたね。
颯希さん:あの部分はフリースタイルで、直前まで何していいかわからなかったんですよ。5人のフォーメンションでまわりの人を操るような構成案もあったんですが、「やっぱりソロでしちゃえば?」「好きなのやりなよ」という言葉が出てきて。実はROUND.10はソロの部分とは別のパートで慣れない動きがあり、久々に体にけっこう負担をかけてしまっていて、余裕がなかったんです。それでめちゃくちゃ集中したROUNDだったんですが、その分ソロは「楽しんでしまえ」という感じでナチュラルなものが出たかなと思います。
HINATAさん:本番が一番よかったよね。いつも試合に出る前にメンバー全員集めてKEITAさんが話してくれるんですけど、自分のエースパフォーマンス前のさっぽん(颯希さん)がかませばそれが自分(HINATAさん)に伝わっていくから、ということを言ってくれて。それで、本番のさっぽんのソロが、リハよりもぜんぜん良い、一番の踊りで、自分はそれを袖で見て、気合いが入りました。みんなのパス回しがきれいにつながって最後エースで決めきれたなと思います。
一紗さん:本番で最高出力を出せるのは気持ちいいですね。
HINATAさん:最高でした。
――ソロのパートは事前に振りが決まって練習しているわけじゃないんですね。
HINATAさん:毎回違います。
KISAさん:HINATAのエースもやる度に違いましたね。バリエーションがたくさんあるから、見てるこっちもおもしろいです。
HINATAさん:本番の雰囲気を楽しみながら、その中で出てきたムーブを即興で踊ります。
一紗さん:本番で即興かますなんて、自分だったら緊張で頭が真っ白になりそうです。緊張感すらスパイスにして楽しめるんですね。
――ROUND.10はシンクロの難易度もすごい高そうに見えました。
HINATAさん:Dリーグで今シーズンから「シンクロ」という評価項目ができて、自分たちもシーズの最初の方は、シンクロはそろえばいいという感覚だったのですが、試合を重ねるごとに、作品のなかでシンクロも見せ場というか、ただそろっているだけにしたくないなと。振り数をもっと多くして、動きを増やして、見ている人に「これでシンクロするの!?」という驚きを与えられたらなと思いました。
KISAさん:シンクロで移動を加えたのは、ROUND.10が初めてでした。
HINATAさん:Dリーグを運営されているカンタローさんにも「あのシンクロは攻めだな」と言ってもらえて、思いが届いてよかったなと思いました。
一紗さん:シンクロの部分は思わず動画を巻き戻して見ちゃいました。
――続いて、ROUND.11「LIVE-雷舞-」の振り返りをお願いします。
KISAさん:SPダンサーの寧樹は、KDのユースチーム出身のダンサーです。寧樹は過去に一度KDが抱えるユースチームへのセレクションに落ちていて、その後再チャレンジして今は1.5軍にいます。実はROUND.4の時にも出るか出ないかのギリギリのラインにいたのですが、惜しくも出られませんでした。今回は、寧樹にしかできない技で、爆発的なエネルギーを出してくれたので、その輝いている姿を舞台の横から見ていて感動しました。すごくかっこよかったです。
ROUND.11のシンクロも、ROUND.10に続いてけっこう攻めました。移動とステップをシンクロでやるというのはチャレンジでした。
颯希さん:けっこう緻密な作業でした。曲を完成させなければいけない3日前くらいに音を調整して、移動のステップと演出がうまく合うようにしました。
KISAさん:最初のHINATAが真ん中で踊るシーンは、手の振りに目線が行くと思うんですが、実はずっと片足立ちなんですよ。「絶対に動くな、ブレるなよ~」と思って見守っていました。その緊張感が良い意味で客席にも伝わっていたのかなと思いました。
颯希さん:ダンスが始まる直前にいつものチーム名のコールがあって、一瞬会場が静まり返った後、会場のみんなが音楽音を聞きはじめて、HINATAの手の動きに視線が集約していったあの雰囲気、すごいよかったですよね。
KISAさん:緊張はしなかったの?
HINATAさん:緊張はするけど、緊張を楽しめるように最近はなってきた。特にここ3試合は楽しみの方が強くて、ステージに入って踊って歓声が聞こえてくるのもめちゃくちゃ気持ちよくて、それのためにがんばれます。
一紗さん:ROUND11の円柱型の小さいステージのような舞台装置も素敵でした。視線誘導にもすごい利いていて、演出としておもしろかったです。
KISAさん:あのお立ち台も、メンバーが作ってくれました。Dリーグのルールで重量の上限が決まっていて、規定以内に収まるようにがんばってくれました。
颯希さん:天板だけで7~8キロあって、残りの重量が限られている中で、発泡スチロールを使ったりと工夫してもらいました。
HINATAさん:あの上でLENAがエースパフォーマンスでめっちゃ激しく踊るから、それにも耐えられるようにということで試行錯誤した土台でした。
――今シーズンのKDの作品のなかでも、ROUND.11は音とダンスがいちばん融合していると感じました。音が見えてくるようで素晴らしかったです。「CyberAgent Legit」との上位対決を制して見事、ランキング1位にも躍り出ました。
KISAさん:そう言ってもらえるとうれしいです。いつも作品の全体をつくった後に「固め」といって、もう一回細かい部分のカスタマイズをしているんですけど、その時に、音に対してどう踊るかということはあらためて話し合っています。今回の「LIVE-雷舞-」だと、「感謝第一生命」という歌詞の部分は、4つ打ちのビートが重くて強いので、それに負けないようにダンスの振りも調整してこだわって練習しました。これからも三連覇を目指してがんばります!
――貴重な裏話をありがとうございます。
KISAさん:そういえば、ROUND.11は「和」の雰囲気のある作品で、「祭り」をイメージしながら作品づくりをしていたのですが、ちょうど一紗さんの書かれた『ダンサー!!!』でも、ヤコたちが大会で「和」と「祭り」をテーマに踊っていたシーンがあって、すごい運命を感じました。
一紗さん:私も配信で見ていて、通じるものがあってとてもうれしい気持ちになりました。
KISAさん:今回のテーマは「LIVE-雷舞-」でしたが、実は「雷神」の案もありました。小説にもライバルチームに「ライジン」が出てきましたね。
一紗さん:昨年度までのKDの和テイストな作品を参考にさせていただきながら執筆した部分もあります。予想外のシンクロに、私も運命を感じました。
――ありがとうございます。それでは、小説『ダンサー!!!』のお話もお聞きできればと思います。
(続く)
KADOKAWA DREAMS推薦『ダンサー!!! キセキのダンスチーム【ヨルマチ】始動!』は2025年4月23日発売!
著者: さちはら 一紗 イラスト: tanakamtam
- 【定価】
- 1,375円(本体1,250円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- B6判
- 【ISBN】
- 9784046844606
プロフィール
さちはら一紗
関西出身。「5分で読書 昼休みの事件簿」(KADOKAWA)収録短編で児童書デビュー。ライトノベル作家・シナリオライターとしても活動中。
KISA
「KADOKAWA DREAMS」#2
23-24シーズンよりKADOKAWA DREAMS リーダーに就任。CHAMPION SHIP優勝に導いた。
4歳からダンスを始め、様々なジャンルを習得し小さな身長を武器にしながらGirls hiphopとpoppingを兼ね備え唯一無二の存在になる。
数々のソロコンテスト、ソロバトル、チームコンテストでの優勝、入賞。
他にもアーティストのバックダンサーや国内外問わず""KISAO""とゆうダンサー名でソロ活動で活躍。
世界大会でのソロバトルでも優勝を果たす。
今ではKADOKAWA DREAMSのメンバーKISAとして国内外にもチャレンジをし続け、より多くの人々に夢と希望を与え自分たちも更なる高みを目指す。
周りにリスペクトを持ちつつ、今年も3連覇に向かってチーム一丸となって再び頂点を目指す。
HINATA.M
「KADOKAWA DREAMS」#10
2002年生まれ兵庫県出身。
7歳の頃から映画『THIS IS IT』の影響でストリートダンスを本格的に始める。
小学生の頃は6歳から始めたドラムで舞台に立ったり、ダンサーとしてはコンテストで全国大会優勝や海外アーティストなどのダンサー、PV出演などを経験する。
中学生の頃はサッカー部の副キャプテンで、高校から上京、日本留学プロジェクトにて日本代表としてLAに二ヶ月弱留学。
そこで、自身のアパレルブランド『DAF』のオーナーになる。
現在はD.LEAGUE 22-23 23-24 SEASONのチャンピオンであり、ラッパー""FASM""としてアーティスト活動も行っている。
颯希(SATSUKI)
「KADOKAWA DREAMS」#4
2000年8月生まれ愛知県名古屋市出身。
スポークラブのサッカーのコーチにボールを蹴るリズムを指摘され、母の提案により6歳からダンスを始める。
13歳の時に当時組んでいたチームでオーストラリアでのジュニアクラスの世界大会で優勝、しかし世界中のダンサーを生で見て、改めて世界のダンスの広さを知ると同時に自分もその人たちみたいになりたいと憧れる。
その後、機々なオーディションを受けAIや湘南乃風、BTSなどの名だたるアーティストのバックダンサーを経験。
19歳の時、自分の夢に近づく為にLos Angesに一年以上単身でダンス留学。
本場の情熱やスキル、ダンスに対する愛を生で感じダンスだけではなく考え方などの心境の変化もあった。
留学中にはSteve AokiやLay(EXO)などの海外アーティストのMVに出演。
2020年4月に始めたTiktokは毎日投稿を今も尚続け、100万人ものフォロワーを獲得している。
21-22 SEASON ROUND.12, 22-23 SEASON CHAMPIONSHIP, 23-24 SEASON ROUND.2, 23-24 SEASON CHAMPIONSHIP にてMVDを獲得。
D.LEAGUEに参戦し5年目、 前人未到のD.LEAGUE 2連覇を超えたD.LEAGUE 24-25 SEASONも持ち前の創造力と遊び心、
そして圧倒的な世界観で世界中の皆さんを魅了し必ずKADOKAWA DREAMSを何としても総合優勝へと導きDリーグ3連覇を果す。