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⇧この連載が本になりました⇧
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タイトルは『脳科学の先生! 子どもの発達障害の悩みを最新研究で解決してください』(久保田競、原田妙子/著)です。連載時から大幅に改稿し、新規書き下ろしコラムを追加した特別版です。
本の発売を記念して、全5回に渡って追加連載を行います。内容は、その新規コラムの一部抜粋で、主に発達障害や育脳、脳科学について語っています。
面白くてためになるお話が満載なので、みなさんぜひご一読ください!
※これまでの連載を読む
コラム:良い親子関係を築くには
興奮して泣いている子どもを抱き上げて、頭をなでたり背中をさすったりしているとだんだん落ち着いてきて泣き止む、ということがよくあります。このとき、脳内で起こっていることについて、最近わかってきたことがあるのでご紹介しましょう。
皮膚には、体毛の生えている有毛皮膚と毛のない無毛皮膚(手のひらや足の裏など)があります。有毛皮膚の表面には、快感を発生させるC繊維と呼ばれる神経繊維があります。皮膚をなでると、この神経繊維から、刺激が大脳皮質の体性感覚野というところをとおって、快感を起こす働きのある島皮質というところへと伝わります。そして、島皮質から「気持ちいい」という指令が出て、泣いている子どもが安心して泣き止む、というわけです。
さらに「なで方」ですが、1秒間に3センチなでるくらいのゆっくりとした速度で、20秒以上なでるのが効果的という研究結果(※18)があります。親のほうも、子どもと皮膚が触れ合うように抱くことで、気持ちよくなり、親子で一体感が生まれ、より良い、親密な親子関係を築くことができるのです。
さらに、ラットの研究ですが、母親が子を頻繁に舐(な)めたり、グルーミング(毛づくろい)したりすることで、子の海馬にあるグルココルチコイド受容体というストレスホルモンの調節に関する遺伝子を変化させることがわかりました。つまり、グルーミングのような愛着行動が行われると、子がストレスに強くなり、しかもその状態が、その子孫へと受け継がれていくというわけです。このような母性行動の世代間伝達は、ラットなどげっ歯類、サル・ヒトなど霊長類で見られる(※19)ことがわかっています。
乳幼児期の円満な親子関係が大切であることは繰り返し述べていますが、それが脳の発達にも影響し、遺伝子にも組み込まれて世代を超えて受け継がれていく、というわけです。
次回の追加連載 第3回「心の理論――ASD児の心を理解する「サリー・アン課題」」は3/23(木)10:00 に公開されます。
※18:参考文献 Ackerley, R. et al. Human C-tactile afferents are tuned to the temperature of a skin-stroking caress. J Neurosci 34, 2879-2883, doi:10.1523/JNEUROSCI.2847-13.2014 (2014).
※19:参考文献 Sapolsky, R. M. Mothering style and methylation. Nat Neurosci 7, 791-792, doi:10.1038/ nn0804-791 (2004).
コラムに関連した「子どもの発達お悩み相談室」連載の記事は…
書誌情報
『脳科学の先生! 子どもの発達障害の悩みを最新研究で解決してください』
著者:久保田競 原田妙子
最新研究で最高の子育てを!
・家計が子どもの脳に与える影響
・グルーミングで脳がストレスに強くなる
・急激に大きくなるASD児の脳
・3年後にIQを100以上にする療育
ヨメルバ人気WEB連載を書籍化(「うちの子ちょっと変わってる?」子どもの発達お悩み相談室)
全編改訂×新規書き下ろしコラム付
脳科学者が一般読者からの30のお悩み相談に答えます。
子どもを病ませない育て方とは?
わが子の「ちょっと変わってる」を障害にしないために――
・言葉の遅れには言葉のシャワー
・暴言などの虐待で発達障害と似た症状が
・喘息やアトピー性疾患の子のADHDリスク
・自閉スペクトラム症児の腸内細菌
・子どもの癇癪にはタイムアウト法
・子の海馬を10%大きくする親の働きかけ
・登校しぶり。無理強いするとどうなる?
5歳までに自己制御能力を身につけることが、子どもの人生を大きく左右する!
「過敏でパンツが履けない」「かたくなにオムツでウンコする」「偏食」「癇癪」「家庭内暴力」「登校しぶり」「吃音」「睡眠」「言葉の遅れ」「爪かみ」「妄想」「肥満」「低出生体重児」など――
脳科学者が30の子育ての相談に最新研究で答えます!
著者:久保田 競著者:原田 妙子
- 【定価】
- 1,540円(本体1,400円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 四六判
- 【ISBN】
- 9784041095317