親が良かれと思って放つ「正論」が、実は子どもの心を閉ざし関係を壊しています。
元教員で子育てコーチである著者は、その原因はスキル不足ではなく、親が無意識に抱える「不安」というエゴにあると断言します。
本書は、自己受容を通じて自身の内側と向き合い、エゴをゆるめて本来の本音に気づくことで、言葉と親子関係を本質的に変える一冊です。
「正しい親」という呪いを解き、信頼を置くことで、一生モノの絆を築くための秘訣を紹介します。
連載第3回は、第3章「今の自分を深く理解する」の中から「感情はどうやって生まれる?」を紹介します!
※本連載は『「あなたのため」をやめましょう 親のエゴを手放せば子どもは動き出す』から一部抜粋して構成された記事です。
私たちの中には、「子どもに幸せでいてほしい」「笑顔でいてほしい」という、愛情や良心から生まれる本音があります。これは本来、とても自然で温かい願いです。
けれど、そこに自分の不安や恐れ、過去の傷、あるいは「こうあるべき」という外側の基準が分厚く重なってくると、その愛情は少しずつエゴに覆われていきます。
すると、本当はただ「幸せでいてほしい」「健やかに育ってほしい」と願っているだけなのに、いつのまにか「勉強しなさい」「ちゃんとしなさい」「なんでできないの?」という形で表現されてしまうのです。
私たちの中には、本音とエゴが別々に存在しているというよりも、〝本音の上にエゴが重なっている〞状態なのです。
だからこそ、大切なのはエゴを責めることではありません。
「こんなふうに反応してしまう自分はダメだ」と否定するのではなく、エゴをゆるめて、その奥にある、あなたの純粋な願いに気づいていくこと。
その願いにもう一度立ち戻ることができたとき、子どもへの関わり方も、少しずつ変わり始めていくのです。
そう、今こそ本当の自分につながり直し、本当の自分に戻ることが必要なのです。
そこで、ここからは、自分の内側をより深く理解していくフェーズに入っていきます。
子どもへの関わり方を本質的に変えていくために、欠かせないのが「今の自分を理解すること」(自己理解)です。
「なぜ、頭ではよくないとわかっているのに、イライラしてしまうのか」「なぜ、穏やかに過ごしたいのに、不安に振り回されてしまうのか」という悩みは多いものですが、そこには、必ず理由があります。
その理由をひも解きながら、自己理解を深めるプロセスを見ていきましょう。
感情はどうやって生まれる?
自分を理解するための入口となるのが「感情」です。
私たちにとって最も身近なものである「感情」は、自分を知るための大切なメッセージを常に送り続けています。
しかし、日々の生活の中で、そのメッセージを意識することは、ほとんどないのではないでしょうか。
だからこそ、ここからは、「感情」を入口として、自分の内側をひも解き、自己理解を深めていく方法について見ていきます。
感情は突然生まれているわけではない
私たちはつい、「子どもが〇〇したからイライラした」「子どもにこんなことを言われたから腹が立った」というように、出来事と感情が直接つながっているように感じてしまいます。
しかし実際には、出来事と感情のあいだには、別の要素が存在しています。
それをシンプルに表すと、「出来事→意味づけ(自動思考)→感情」という構造になっています。
まず最初にあるのは、ただの「出来事」です。
子どもが宿題をしていない。約束を守らなかった。反抗的な態度をとった。これらは本来、「良い・悪い」のない、無色透明なただの事実です。
しかし、その出来事を見たとき、私たちの内側では瞬時に「意味づけ」が行われます。たとえば、「このままではダメな大人になる」「だらしない子だ」「バカにされた」「やっぱり私は親として失格だ」。こうした考えが、無意識のうちに頭に浮かびます。これを心理学では、「自動思考」と呼びます。
そしてこの自動思考が引き金となり、感情が生まれます。つまり、同じ出来事でも、どんな意味づけ(自動思考)をするかによって、生まれる感情は大きく変わるのです。
たとえば、メッセージを既読スルーされたときに、イラっとする人も、不安になる人もいれば、何も感じない人もいます。その違いは「既読スルー」という出来事に対してした意味づけが異なるからです。
ある人は「無視された」→イライラ
ある人は「嫌われた」→不安
ある人は「忙しそうだな」→平常心
このように、同じ出来事でも意味づけ次第で生まれる感情が異なるのです。
意味づけの源は「信念・価値観」
では、この意味づけはなぜ一人ひとり違ってくるのでしょうか。それは、その人の中にある信念・価値観が違うからです。
信念・価値観とは、あなたが信じていること(信念)や大切にしていること(価値観)、つまりマイルールのようなものです。
「弱音を吐いてはいけない」「子どもは大人を敬うべきだ」「親は常に笑顔で優しくなければならない」。こうした信念・価値観は、第2章でお伝えした3つのメガネを根っこにして生まれてきます。
たとえば、「自分には価値がない」という自己像が根っこにあると、その無価値観を補おうとして、「人から認められないといけない」「努力して成果を出さなければいけない」というマイルールが生まれやすくなります。
「他者は信用できない」という他者像が根っこにあると、相手を信頼できなくなり、「子どもを管理しなければ」「私がなんとかしなければ」というマイルールになりやすいです。
「世界は危険だ」という世界像が根っこにあると、子どもを「失敗させてはいけない」「困らないよう準備させるべき」というマイルールにつながります。
このように、私たちは〝目の前の子ども〞に反応しているようでいて、実はその奥にある、3つのメガネを根っこにした自分の信念・価値観を通して、子どもを見ているのです。
だからこそ、自分がどんな信念・価値観(マイルール)を持っているのかを知っておくことが、反応ではなく、選択的に子どもと関わるための第一歩になります。
本音という存在
ここでもう一つ、信念・価値観を形成する重要な要素があります。
それは、すでに何度か出てきている本音(愛情や良心)です。
たとえば、「ちゃんとさせなければならない」「この状況をなんとかしなければ」という恐れからくる強い義務感は、自己防衛や外側の基準と結びついているエゴベースの信念・価値観ですが、「この子に幸せになってほしい」「喜んでほしい」「苦労させたくない」という願いは内側から湧いてくる本音から来ています。
また、「信頼されること」「誠実であること」「貢献すること」など、本当に心の底から大切と思える価値や心構えも本音です。
つまり、信念や価値観は、エゴの領域にある「外から取り入れたもの」と、本音の領域にある「内側から湧いてくるもの」の、両方の影響を受けながら形成されているのです。
そのため、同じような関わり方や声かけであっても、その奥にある〝出どころ〞(動機)がエゴであれば子どもの心は離れていき、本音であれば子どもの心に届きやすくなるということです。
ただし、この二つは複雑に絡み合っているため、しっかりとしたプロセスを踏まなければ、自分でこの違いを認識することは簡単ではありません。
ちょっと複雑で頭が疲れてしまったかと思いますが、ここで完璧に理解していなくてもOKです。ゆっくりと二つの質感の違いを落とし込んでいければ大丈夫です。
ある程度「信念・価値観」の実態が見えてきたところで、先ほどの流れに戻っていきましょう。
正しさの押し付けが関係を壊していく
良かれと思って熱心に指導するほど、子どもたちとの間に冷ややかな溝が広がり、やがて学級崩壊へ……。元教員である著者がどん底の経験から直面したのは、子どもを伸ばしたいという純粋な愛情ではなく、自分の評価や立場を守りたいという「親(教師)のエゴ」でした。正しい言葉や巷のテクニックに飛びつく前に、まずは自分の「あり方」を見つめ直していきたいですね。
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