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子どもが寝ない!原因や対処法を医師ママが解説


「10時になっても11時になっても、まったく寝ない!」子どもを寝かしつけたあと、たまった家事をまとめて片付けようとしていたのに、どうして寝てくれないのだろう……なんてこと、ありますよね。子どもが寝ないのにはちゃんと理由があります。理由がわかれば対処法も見つかるはず。

そこで、現役医師であり、自らも寝てくれないわが子の対応に悩んでいたという森田麻里子先生に、子どもが寝ない原因と対処法を伺いました。


もくじ

夜、子どもが寝ないとどうなる?


子どもが夜なかなか寝ない原因は?

【幅広い年齢におすすめ】夜眠りやすくなる5つの基本ルール

【年齢別】夜なかなか寝ない子どもへの対処法

子どもがなかなか寝なくてもイライラしないことが大切

 

夜、子どもが寝ないとどうなる?

睡眠時間が足りないと健康に悪影響

森田先生:
「睡眠不足だと大人でもイライラするものですが、子どもも同じです。赤ちゃんなら日中に機嫌が悪くなりますし、幼児であれば怒りっぽくなる、攻撃的になりやすいなど問題行動が増加することもあります。さらに、夜中に何度も目が覚める睡眠トラブルがあると、そのたびに親が寝かしつけをする必要があるため、親も睡眠不足で疲れ果ててしまいます。

また、睡眠不足は子どもの将来にも大きな影響を与えてしまいます。睡眠時間が短いと肥満になりやすい、ということが複数の研究で科学的に証明されています(※1)。肥満がさまざまな病気の元になることは、多くの人の知るところ。子どもの将来のためにも、睡眠不足を侮ってはいけないのです」

※1…厚生労働省「睡眠と生活習慣病との深い関係」

日本の子どもの睡眠時間は世界で最下位!?



世界17の国と地域で、0〜3歳の乳幼児の平均睡眠時間を調べたアンケート調査があります(※2)。それによると、乳幼児の平均睡眠時間の最下位は日本で、11.62時間でした。1位はニュージーランドで、13.31時間です。その差は2時間弱もあります。

※2…Mindell JA, Sadeh A, Wiegand B, How TH, Goh DYT. Cross-cultural differences in infant and toddler sleep.  Sleep med 11(2011)

子どもにとって理想的な睡眠時間は年代によって違う

森田先生:
「子どもに必要な睡眠時間は、1〜2歳なら11〜14時間、3〜5歳なら10〜13時間、6〜13歳なら9〜11時間です(※睡眠時間は昼と夜の合計)。このうち、お昼寝をすることの多い5歳以下は、夜の睡眠が10〜12時間あるのが理想的です。

生まれたばかりの赤ちゃんは、昼も夜も関係なく、1〜4時間ほど眠っては1〜2時間ほど起きている、という細切れの睡眠を繰り返します。生後3カ月から半年ぐらいになると、昼間は数時間起きていて、夜は5〜6時間続けて眠れるようになっていきます。このころになると、夜中に目覚めても、またすぐ眠れるようになるものです。1歳近くになると、昼と夜の区別がはっきりして、夜に6〜8時間以上まとめて寝られるようになります。1歳ごろのお昼寝の回数は1日2回くらいが目安です。そのあとは、徐々にお昼寝の回数を午後1回程度にしていくのが一般的です」

子どもが夜なかなか寝ない原因は?

子どもに必要な睡眠には、「昼」と「夜」の2種類があります。このうち、多くの方が困っているのは、子どもが夜なかなか寝ないことではないでしょうか。その原因はいくつかありますが、子どもの年齢によっても違ってきます。

1歳半から3歳の子どもが寝ない原因

森田先生:
「生活リズムの乱れから夜寝つけなくなる子は多いようです。一方で、自我の芽生えによって素直に就寝に向かうことができず、寝たくないと抵抗したり、一緒に寝てほしいと要求したりと、眠ることについても親に感情をぶつけてくる場合がよくあります」

4歳から6歳の子どもが寝ない原因

森田先生:
「この年齢の子どもが寝ない主な理由は、成長段階で夜型の生活リズムが身に付いてしまっていること。また、保育園に通っているお子さんは、たっぷりお昼寝をしてしまうと、就寝時間が遅くなる傾向があるので注意が必要です」

7歳以上の子どもが寝ない原因

森田先生:
「小学校に上がった子どもが寝ない主な理由は、生活リズムが夜型になってしまっていることです。成長するにつれ、勉強や動画閲覧、ゲーム、SNSのやりとりなどが影響し、どんどん就寝時間が遅くなっていくのです」


【幅広い年齢におすすめ】夜眠りやすくなる5つの基本ルール

寝室は暗くする

森田先生:
「子どもの寝室は、できるだけ暗くしましょう。ただし、2歳前後になると夜に部屋が暗いと怖がる子どもが増えるので、その場合は床置きタイプの暗めの暖色系ライトを用意し、つけたまま寝てもいいでしょう。天井の照明に付属しているような小さな豆電球は、寝るには明るすぎますし、光源からの光が直接目に入りやすいので、あまりおすすめしません」

体感温度を調節する

森田先生:
「体感温度も重要で、子どもも暑かったり寒かったりして不快感があると寝つけなくなります。室温や服装などを工夫して、大人よりも少し涼しく感じるような体感温度に調節してください。夏場は冷房温度を25〜27℃、冬場なら暖房温度を18〜20℃程度に設定し、さらに加湿器を併用するといいでしょう。

2〜3歳ごろまでは、寝ている間に激しく動いたり、布団を蹴飛ばしたりするので、掛布団をかけるよりもはだける心配がないスリーパーを着せる方が安心です」

ホワイトノイズを流す

森田先生:
「物音が気になって眠れなかったり、夜中に起きてしまう場合は、ホワイトノイズを流すとよいでしょう。ホワイトノイズとは、さまざまな周波数の音を同じ強さで混ぜた音のことで、似た音としては換気扇の音やアナログテレビの砂嵐の音などがあります。

ホワイトノイズにはいろいろな効果があると言われていますが、近年注目されているのが安眠効果です。さまざまな周波数の音をミックスしたこのノイズによって、ドアを開け閉めする音や、人の話し声、サイレンの音などがかき消され、気にならなくなります。そのほか、集中力アップやリラックス効果も期待できるという説もあるようです。ホワイトノイズを流せるスマホアプリ等もありますので、活用してみてください」

昼間の過ごし方を見直す

森田先生:
「夜の睡眠環境だけでなく、昼間の過ごし方も見直してみましょう。人間は、自然と日中は起きて活動し、夜は眠くなるようにできています。このリズムがまだ整っていない乳幼児や、リズムが崩れてしまった時は、朝起きたらすぐに太陽の光を浴びることが大切です。朝日によって体内時計がリセットされるからです。子どもは朝決まった時間に起こし、起きたらカーテンを開けて、朝の光をたっぷりと浴びるようにしてあげてください。日中なるべく明るい部屋で過ごしたり、天気のいい日は午前中に散歩に出かけて体を動かすのも効果的です」

自力で眠る方法を学ぶ“ねんねトレーニング” 

みなさんのなかには、赤ちゃんが寝ないことをお悩みの人もいるかもしれません。赤ちゃんが自分の力で眠りにつく方法を学ぶのに効果的な“ねんねトレーニング”を紹介してくれました。

森田先生:
「赤ちゃんが夜中に目を覚ましてしまうのは普通のことですが、その際、自分の力で眠りに戻ることができないと、ママやパパに助けを求めて泣いてしまうケースがよくあります。ねんねトレーニングとは、そういう場合に子どもに自分で寝つく方法を学んでもらうための“型”のようなものです。

例えば、子どもをお布団におろしたら、寝ていてもいなくても『おやすみ』と言っていったん部屋を出ます。子どもが泣いてしまってもすぐには部屋に戻らず、決めた時間(最初は3〜5分程度)に部屋に戻ります。この時、抱っこはせず、落ち着いた声でやさしく『大丈夫よ、ねんねだよ』などと声をかける程度にとどめ、すぐにまた部屋を出ます。だんだん部屋に入る時間の間隔を伸ばしていき、最終的にはひとりで泣きやんで寝つくまでこれを続けるという方法です。

このほかにも“ねんねトレーニング”の方法はありますが、共通しているのは、最終的にママやパパは何もせず、お布団に横になった状態でひとりで眠らせるということです。ねんねトレーニングは、医学研究でも効果が証明されており、明らかな悪影響がないことも確かめられています。生活リズムや睡眠環境を整えても夜泣きが改善しない場合には、ぜひチャレンジしてみてください」


【年齢別】夜なかなか寝ない子どもへの対処法

1歳半から3歳の子どもには寝る前のルーティンを決める

森田先生:
「1歳半から2歳ごろの子どもにとって、夜の早い時間はまだまだ遊び足りないもの。『お水飲みたい』とか『おにぎり食べたい』、『もっと絵本を読んで』などといろいろな要求を繰り返しては、寝ようとしないケースがあります。

対処法としては、夜寝る前に行うルーティンを子どもと一緒に決め、絵や写真入りのポスターにしてリビングに貼るのがおすすめです。寝る前のルーティンとは、例えば『お風呂に入る』→『パジャマに着替える』→『お水やお茶を飲む』→『歯磨きをする』→『絵本を読んでもらう』→『トイレに行く』→『布団に入る』など、決まった流れで就寝することです。寝る前はポスターで項目を確認しながらルーティンを行い、できたら毎回たっぷりほめてあげましょう」

3歳から6歳の子どもには睡眠の大切さを伝え、親子で早寝早起きをする

森田先生:
「3歳から6歳ごろの子どもには、なぜ夜は早く寝る必要があるのかをきちんと説明し、前述のルーティンを決めたら、しっかり守らせることが大切です。3歳以降になると、夜遅くまで起きている子は朝目覚めるのも遅い場合がほとんど。早く寝かせようとする前に、まず早起きをさせることが重要です。朝早く起きればそれだけ早く眠くなり、夜もスムーズに寝るようになってくれます。

そして、親子で早寝早起きをしてください。親が深夜までテレビを見ているのに、子どもにだけ『早く寝なさい』と言っても説得力がありません。子どもにもわかるように、睡眠の大切さを繰り返し伝えていきましょう」

7歳以降の子どもには早起きを習慣づける

森田先生:
「対処法は、3歳以降の子どもと同じ。この年齢になったら、とにかく早起きさせることが大切です。宵っ張りの子どもは朝なかなか起きないかもしれませんが、とにかく1週間頑張って起こしてみましょう。それだけで子どもの様子は変わってきます。寝るまでベッドでスマホの動画を見たがる子もいますが、スマホはブルーライトの影響もありますし、子どもが好きな動画は興奮しやすい内容が多いので、寝つけない原因になりがちです。寝る1〜2時間前からは、動画を見せないようにしましょう」

咳で眠れない時には就寝前のはちみつが効果的

森田先生:
「風邪で咳が続くと、眠いのに寝れないことがよくあります。その場合は病院を受診して、適切な治療を受けましょう。1歳以上の子どもの軽い咳なら、寝る前にはちみつをスプーン一杯食べさせるのも効果があると言われています(※3)。

※3…Cohen HA, Rozen J, Kristal H, et al. Effect of honey on nocturnal cough and sleep quality: a double-blind, randomized, placebo-controlled study. Pediatrics. 2012;130(3):465-471. doi:10.1542/peds.2011-3075)

※1歳未満の子には「はちみつ」は与えないでください。


子どもがなかなか寝なくてもイライラしないことが大切

森田先生:
「大人でもそうであるように、子どもも寝つきがよいタイプもいれば、なかなか眠れないタイプもいますし、睡眠習慣が整う時期も子どもによって違います。それまでコロリと眠っていた子が、心身の成長や保育園入園などの環境の変化によって、急に寝なくなることもあります。そんな時、焦りは禁物です。

理想的な子どもの睡眠時間より多少短いからといって、すぐに重大なことが起きるわけではありません。あまり神経質になり過ぎず、でも粘り強く、よい習慣づくりを続けていきましょう。

かく言うわが家も、長男がなかなか寝てくれず、毎晩遅くまで抱っこし続けたり、抱っこしたままスクワットをしたりして、2時間以上かけてなんとか寝かしつけるような状況でした。ですが、生活リズムや睡眠環境を整えて、“ねんねトレーニング”を行ってみたところ、数日で嘘のようにぐっすり眠るようになりました。おかげで私達夫婦も、ゆっくり話したり、好きなことを楽しんだりする時間が持てるようになりました。

子どもは親の機嫌や感情にとても敏感です。親が『まだ寝ないのかしら……』とイライラすると、そのストレスが子どもに伝わり、余計に眠れなくなってしまいます。さまざまな対処法を実行することも大切ですが、できることをやっても寝ない日は『朝まで寝ない子なんかいないんだから、そのうち寝るでしょ』とおおらかな気持ちで子どもに接しましょう。ママだけに寝かしつけを押しつけたりせず、パパも一緒に『子どもが寝ない』時期をじょうずに乗り切ってくださいね」

【監修者プロフィール】

森田麻里子さん



Child Health Laboratory代表、小児スリープコンサルタント、3児の母。
東京大学医学部医学科卒。亀田総合病院にて初期研修後、仙台厚生病院、南相馬市立総合病院にて麻酔科医として勤務。2017年の第1子出産をきっかけに、2018年より現在の活動を開始。2019年昭和大学病院附属東病院睡眠医療センター非常勤勤務。乳幼児の睡眠問題についてのカウンセリングや、育児支援者・医療従事者向け講座、アプリ監修などを行う。

著書:『医者が教える赤ちゃん快眠メソッド』ダイヤモンド社、『東大医学部卒ママ医師が伝える科学的に正しい子育て』光文社新書、『子育てで眠れないあなたに』KADOKAWA

インスタグラムアカウント:@moritamariko_dr


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