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寝かしつけ絵本おすすめ13選!年齢別の選び方や読むときのコツも紹介


もくじ

寝かしつけに絵本を取り入れるなら何歳からがいいの?


【0~1歳におすすめの寝かしつけ絵本】リズムやわかりやすさで選ぶ

【2~3歳におすすめの寝かしつけ絵本】登場人物が眠りにつくような物語がおすすめ

【4~6歳におすすめの寝かしつけ絵本】夜への興味が湧くものや子どもの不安を解消できる内容がおすすめ

寝かしつけ絵本に適した環境や読み聞かせのコツは?

 


子どもが寝る前に絵本を読んであげるひととき。それは、親はもちろん子どもにとっても、至福のコミュニケーションタイムです。その一方で、「読んでいるうちにどんどん子どもの目がさえてきて逆効果」「ぜんぜん興味をもってくれない」など、寝かしつける際の絵本の読み聞かせに苦労している方も多いのではないでしょうか。

そこで、年齢別のおすすめ寝かしつけ絵本を、絵本専門士・高橋真生さんにピックアップしていただきました。寝かしつけ絵本選びのポイントや、それぞれの絵本の魅力もうかがっています。これらを参考に、ぜひお子さんをリラックスさせ、気持ちよく眠りに導く一冊を見つけてくださいね。

(※表紙の画像を押すと、それぞれの作品ページへ飛ぶことができます)


寝かしつけに絵本を取り入れるなら何歳からがいいの?

そもそも、何歳ごろから寝かしつけに絵本の読み聞かせを取り入れたらいいのでしょうか。高橋さんに聞いてみました。

高橋さん:
「絵本の読み聞かせは、0歳児でも喜びます。低月齢のころはまだあまり絵は見えませんし、大きな反応もできませんが、赤ちゃんは家族の声を聞くことで安心すると言われています。

ただ、赤ちゃんへの読み聞かせには、少しだけ注意が必要です。赤ちゃんの発育や睡眠の時間やリズム、ママ・パパの体調には個人差があるもの。赤ちゃんの睡眠が細切れだったり、ずっと抱っこしていたりすると、親もヘトヘトになってしまいます。その場合は、無理をしたり『早く読み聞かせを始めなきゃ』と焦ったりせず、歌を歌ったり身体に触れたりして、赤ちゃんをリラックスさせてあげてください。そして、ママ・パパの心と体の準備が整ってから読み聞かせを始めてくださいね」

子どもの発育には個人差がありますので、絵本の対象年齢も参考にしながら、お子さんに合うものを選んでください。

ここからは、大まかな目安として0〜1歳、2〜3歳、4〜6歳以上(小学生も含む)に対象年齢を分けて、選び方のポイントとおすすめの絵本をいくつか挙げてみます。

【0~1歳におすすめの寝かしつけ絵本】リズムやわかりやすさで選ぶ

高橋さん:
「0歳から1歳の赤ちゃんに向けた絵本は、読んだときにリズムがよいものやシンプルでわかりやすいフレーズがくり返されるものがよいでしょう。大人が自分で声に出して読んでみて、「楽しい」「おもしろい」「気持ちいい」と感じられれば、相性がよい絵本である可能性が高いです。リズムに合わせてやわらかく体に触れてあげることで、赤ちゃんも大人もリラックスできます」

おやすみ前の“ねむねむポーズ”を習慣に!『ねむねむごろん』(KADOKAWA)



作・絵:たなかしん

海の砂で描かれた、あたたかくて優しいおやすみ絵本です。ぞうさん、くまさん、とりさん、りすさんなど、動物たちと一緒にあくびをしたら、「どしん」「ごろん」などの“ねむねむポーズ”をまねしてみましょう。自然と横になった子どもたちは、だんだんうとうと……。毎日のおやすみ前の“ねむねむポーズ”の習慣は、子どもを自然に心地よい眠りに誘います。

高橋さん:
「言葉も、イラストも、色遣いも、優しくまろやかで、おやすみ前にぴったりの絵本です。『ねむねむごろん』という音にご機嫌になる赤ちゃん、お気に入りの動物と同じポーズで転がる子、絵本のラストに合わせて自分で『ぱちん』と電気を消す子など、楽しみ方はさまざまです。赤ちゃん向けの絵本ですが、4歳から5歳くらいでもこの絵本が好きな子は多く、一緒に読むと子どもの反応の変化から成長が感じられるはず。『あかちゃんが ねむねむ』の部分は、ぜひお子さんの名前を入れて読んであげてくださいね」

 『ぐりとぐら』コンビによる赤ちゃん絵本『おやすみ』(グランまま社)



作:中川李枝子 絵:山脇百合子 グランまま社

中川李枝子さん・山脇百合子さんという『ぐりとぐら』コンビによる赤ちゃん向け絵本。発売から30年以上愛され続けるロングセラーです。たくさん遊んで、お風呂に入って、お話を聞いて、楽しい一日に「おやすみ」……。何気ない幼児の毎日を、短いリズミカルな文章と、ソフトな絵でシンプルにつづっています。

高橋さん:
「寝かしつけのルーティンを描いたような絵本なので、一日の生活リズムが整ってくるころにおすすめです。たっぷり遊んだ後の、お風呂、ご飯、歯磨き…… と、子どもらしい日常の1コマが描かれているので、子どもたちが『自分のことだ!』と感じてくれるはずです。『今日はこれが楽しかったな』と思い出したり、『明日はあれをしたいね』と親子で話したりすることで、気持ちが安定して穏やかに眠れるでしょう。また、自分ももう寝る時間なのだという理解にもつながります。優しくあたたかな言葉や絵も魅力です」

物語絵本への橋渡しにもおすすめ『おつきさまこんばんは』(福音館書店)



林 明子 作 福音館書店

『こんとあき』(福音館書店)などで知られる林明子さんが手掛けた赤ちゃん絵本。少ない色数で美しい世界が作りあげられ、お月さまや雲と会話をするように話が進みます。わかりやすく、かつ盛り上がるように展開されるストーリーには、赤ちゃんが楽しめる要素がいっぱいです。うれしいこと、悲しいこと、優しいお月さまの表情、屋根にいるネコのシルエットの変化など、いろいろなことを絵本から発見し、物語を楽しんでくれるはず。

高橋さん:
「シンプルな中に赤ちゃんを引きつける魅力がたくさんある、ロングセラー絵本です。まん丸で表情豊かなお月さま、澄んだ色、ゆったりとした言葉、温和な雰囲気は、まさに『おやすみなさい』の絵本です。途中には、雲が月を隠すというドラマチックな展開も。この部分はやわらかく読むことで、赤ちゃんも安心して物語を楽しめます。2歳くらいになると、『くもさん意地悪したんじゃないのにね』と別の視点を持つようになる子もいる、長く楽しめる絵本です。なお、赤ちゃんが好きなものを集めた絵本ではなく、ストーリー性のある絵本なので、1歳前後くらいからがよりおすすめです」

リズミカルに繰り返すフレーズが心地よい『いいこ ねんね』(童心社)



内田麟太郎 ぶん 長谷川義史 え 童心社

「さるの母さん歌います。いいこ、ねんね。いいこ、ねんね」。ゆっくりとページをめくると、「すやすや、すやや。すやすや、すやや」。母さんに抱っこされながら、子ざるはすっかり安心して眠ってしまいました。繰り返される言葉がリズミカルで耳になじみ、優しい絵があたたかな気持ちにさせてくれる一冊です。大好きなパパやママが口にする優しい歌に抱かれ、安心してぐっすり眠ることのできる幸せを描いた赤ちゃん絵本です。

高橋さん:
「サル、イヌ、ネコのお母さん、お父さんが歌います―『いいこ ねんね いいこ ねんね』。もちろん『ぼく』の母さんも、『いいこ ねんね』。甘えん坊の子どもたちが、親にくっついて眠る姿は、幸せそのものです。『夢の中でも一緒にいられるから、安心』『ぼくが寝ていてもパパやママが歌ってくれているから、安心』お子さんは、一番安心できる場所で、心地よい歌に誘われ、きっとぐっすり眠れることでしょう。それから、子どもの寝顔を見守る親の幸せというのもありますよね。読んでいる大人の気持ちもあたためてくれる絵本です」

【2~3歳におすすめの寝かしつけ絵本】登場人物が眠りにつくような物語がおすすめ

高橋さん:
「2歳から3歳くらいは、子どもの共感性が育つころなので、登場人物が穏やかに眠りにつくようなお話を読んであげると、眠りに向けて心身の準備が整えられます。ただ、子どもは成長とともにこだわりが出てきますから、『どうしてもこれがいい』と別の本を持ってくることもあるでしょう。それが絵本ではなく、図鑑やおもちゃのカタログだったりすることもあるかもしれませんが、ぜひお子さんの希望を優先してあげてください。気持ちが受け止められることで心が落ち着き、眠りやすくなります」

懐かしさのある絵に心あたたまる『みんなおやすみ』(Gakken)



かきもとこうぞう(絵) はせがわさとみ(文) Gakken

ロングセラー絵本『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド)の作者である柿本幸造さんの、あたたかな画風の静かなおやすみ絵本です。お月さまがみんなにおやすみを言いに行くよ。動物園のみんなは眠ったかな? バスたちは眠ったかな? お月さまはゆっくりと夜空をめぐり、やがてぼうやのおうちにもやってきます。

高橋さん:
「動物たちに、バスさんに、虫さん…… 子どもの大好きなものがたくさん出てくる、ほんわかとした絵本です。眠気よりも遊びたい気持ちが強いときに読むことで、公園のブランコもおもちゃたちも寝ているよ、みんなねんねしたいんだよ、と教えてあげることができます。読み終えた後、家族やお部屋の中の物に『おやすみなさい』と言って回って、おやすみモードへ切り替えていってもよいでしょう。ほわっとした色調のかわいらしい絵が、大人にも大人気。子どもが寝ないと、大人の方が疲れてしまいますよね。ご自分の好きな絵本も、ぜひ読んでください」

動物の自然な姿に生きる力を感じる写真絵本『おきたらごはん』(福音館書店)



岩合 光昭 写真・文 福音館書店

自然で表情豊かなネコの写真で有名な動物写真家の岩合光昭さんによる、動物たちの愛くるしい寝顔と、ご飯を食べる姿をセットで見られる写真絵本です。しっかり寝て、いっぱいご飯を食べて成長するのは、人も動物も一緒。ライオンは獲物を捕まえる強さを獲得し、サルはどの季節に山のどこにある食べ物がおいしいかを学んで賢くなり、それぞれの動物が持つ生きる力を発揮できるようになっていくのです。うちの子も、よく寝て、よく食べて、元気に育ってほしい! そんな親の気持ちがこもった絵本です。

高橋さん:
「不安だから、遊びたいから…… 理由はそれぞれですが、そもそも眠るのが好きではない子もいます。そんな子と読みたいのが、こちら。『かばは ねるから おおきくなるよ』『おきたら ごはん くさを たべます』というように、動物が生きる力は、しっかりした睡眠と食事で育まれるのだとわかります。いきいきとした動物たちの写真は素晴らしいですが、その分、動物たちが食べている肉や骨も、ありのままを写し出しています。けれども、それは小さい子どもでもしっかり受け止められるものですし、年中・年長さんくらいになると、命や食物連鎖について考えるきっかけにもなります」

眠らないコッコさんとお月さまの会話『おやすみなさい コッコさん』(福音館書店)



作・絵:片山 健 福音館書店

夜です。みんな眠っています。起きているのはお月さまだけだと思ったら、まだひとり、眠っていない子どもがいました。コッコさんです。お月さまが語りかけます。「もう そらの くもも ねむったよ」。でも、コッコさんは言います。「そらの くもが ねむっても コッコは ねむらないもん」。「いけの みずだって ねむったよ」。「いけの みずが ねむっても コッコは ねむらないもん」。いつまでも寝たくないと言いはる子どもに、優しく静かに語りかける絵本です。

高橋さん:
「夜、ひとりだけ眠らないコッコさん。『ねむらないもん』と言い続けても、眠りは少しずつコッコさんに近づいてきて……。眠りたくなくてがんばったり、それなのにいつの間にか眠ってしまったり、子どもが誰でもするような体験に寄り添う絵本です。透明感のある色は優しく美しく、読み手を包み込むように眠りの世界に誘ってくれます。抵抗むなしく眠りに落ちるコッコさんがとても愛らしく、大人の心も和みます」

魔法のような夜のひとときを描く『はんなちゃんがめをさましたら』(偕成社)



文・絵:酒井駒子(さかいこまこ) 偕成社

あるひ、はんなちゃんはね。めがさめたのでおきあがってみたら、まだよるだったんですって……。真夜中に目を覚ました女の子が、ひとりで体験する夜の時間を描いた絵本です。ネコのチロと一緒にトイレに行ったり、内緒でサクランボを食べたり、おねえさんのお人形を借りて布団のなかで遊んだり。静かな夜の中、魔法にかかったような時に、大人も子どもも魅了されるはず。

高橋さん:
「夜が怖いというお子さんに特におすすめの絵本です。夜中に目が覚めてしまったはんなちゃんは、ネコのチロと夜のひとときを過ごすことになります。聞いているお子さんは、最初は『自分には無理!』と思うかもしれません。けれども、はんなちゃんとの内緒の冒険には、ワクワクせずにはいられないはずです。そして、たっぷり夜を楽しんだ後はきっと心地よい眠気を感じられるでしょう。また、物語の静かな空気感、繊細で美しい色、かわいらしいはんなちゃんの表情やしぐさが、少し疲れたときの大人の心に、穏やかさと明るさを取り戻してくれます」

【4~6歳におすすめの寝かしつけ絵本】夜への興味が湧くものや子どもの不安を解消できる内容がおすすめ

高橋さん:
「夜中の目覚めや暗闇といった夜に関する不安がなくなるような絵本、夜という時間について抱く好奇心に応えられる絵本がおすすめです。また、このころは子どもが初めての経験や集団生活で悩みをひそかに抱えていることもあります。”寝かしつけ向き”ではなくても、不安が解消されるようなテーマの絵本を読むことで、気が楽になりゆっくり眠れるでしょう」

ネコの目を借りて見る、色鮮やかな夜の風景『よるのねこ』(大日本図書)



文・絵:ダーロフ・イプカー 大日本図書

夜になっても、ネコはぜんぜん寝たくなんかありません。夜はいちばん楽しい時間。ネコの探検について行ってみましょう。人の目で見るとほとんど闇なのに、ネコの目を通して見ると色鮮やかな風景になります。ネコの目を通して別の視点で世界を見ることができる絵本です。

高橋さん:
「少し大きくなってくると、夜は怖いだけでなく、不思議で気になるものになることがあります。この絵本では、夜散歩に出かけるネコの見ている世界をのぞくことができます。シルエットのページとカラフルなページが交互に出てきますが、それは、人の目で見る世界と、ネコの目で見る世界を表現したもの。人の目には影しか見えなくても、ネコの目を借りて見れば想像以上に美しい世界が広がっているということです。子どもたちは、灯りを消した後も眠りにつくまで、心の中で夜の冒険を楽しむでしょう。好奇心に応えつつ、想像力を刺激してくれる名作です」

なかなか眠れない子どもの心に寄り添う絵本『おやすみなさい フランシス』(福音館書店)



ラッセル・ホーバン 文 / ガース・ウィリアムズ 絵 / まつおか きょうこ 訳 福音館書店

時計が夜の7時をしらせると、フランシスの寝る時間です。まずミルクを飲み、お休みのキスをして、ベッドに入ります。ところが、ちっとも眠くなりません。そのうちに、部屋の中にトラがいるような気がして心配になり、お父さんとお母さんのところへ。もう一度キスをしてもらい布団に入りますが、今度は部屋に大男がいる気がして眠ることができません。フランシスは無事に眠りにつくことができるのでしょうか? なかなか眠ろうとしないフランシスと、根気よく接するお父さんとのやりとりがほほえましい絵本です。

高橋さん:
「なかなか寝つけない子どもの夜を楽しく描いた物語です。アナグマのフランシスはちっとも眠くならないまま子ども部屋に行くのですが、いろいろ想像して怖くなったり、天井の壁のひびが気になったりして、何度もお父さんとお母さんのところに戻ってきます。子どもたちは、自分にそっくりなフランシスに大喜び! なんだかんだと理由をつけて粘る姿が共感を呼ぶのですね。大人は、子どもの揺れ動く気持ちに改めて気付かされます。お父さんとお母さんが2人でケーキを食べているところを目撃されるシーンなどは親としては苦笑いですが、決してフランシスを否定しない見守り方は実に見事。絵も色遣いもソフトで、ほんわかした気持ちになれます」

不思議な声に導かれたきょうだいの小さな冒険『ゆめみるじかんよこどもたち』(BL出版)



文:ティモシー・ナップマン 絵:ヘレン・オクセンバリー 訳:石井睦美 BL出版

アリスとジャックが庭でボール遊びをしていると、森から変な声が聞こえてきました。「ゆうら ゆう らいいいいい きいの しいたあ ようううう」。なんの声でしょう。2人は確かめようと勇気を出して森へと向かいますが……。怖がりな弟と好奇心旺盛なお姉さんが、子どもたちに親近感を抱かせます。不思議な声に誘われて物語の世界にどんどん引き込まれていくと、その先に待っているのはとびきり優しい世界。美しい森の風景とともに、心に残る絵本です。

高橋さん:
「『こわいけど、知りたい!』―ひとかけらの怖さと、その後にもたらされる安心感。この揺らぎを楽しめるようになる年代の子どもたちの気持ちは、まさにこの絵本のアリスたちと同じでしょう。アリスとジャックの姉弟は、声の正体を突き止めるために森へ入りますが、ハラハラした後に迎えるのは、もちろん幸せでほのぼのとしたエンディング。ほっとした2人が、あたたかくしてベッドにもぐりこんだように、読者である子どもたちも、美しい森の冒険に満ち足りた気持ちで『ゆうらり ゆうらり』眠りにつけますね」

自分を大事にすることの大切さを教えてくれる『わたしとなかよし』(瑞雲舎)



作・絵: ナンシー・カールソン 訳: なかがわ ちひろ 瑞雲舎

海外でも人気のあるナンシー・カールソンの絵本です。人づきあいの第一歩は、まず自分を好きになること。「わたしには、すてきなともだちがいるの。それはね・・・わ、た、し!」。自分のことが大好きなブタの女の子が、自分を大事にすることの大切さを教えてくれる絵本です。

高橋さん:
「友だちとけんかしてしまった、明日の発表会が心配…… さまざまなことが理解できるようになるからこそ生まれる心配や不安。それが眠れない原因であっても、子どもの場合、うまく言葉にできなかったり、そもそも自分が不安を抱えている自覚がなかったりすることもあるので、大人の働きかけで気を楽にしてあげたいものです。ブタの女の子の笑顔がかわいいこちらの絵本は、まさにそんなときにうってつけ。自分を丁寧に扱うことは、自己肯定感を高めることにつながります。歯磨きをするのもご飯をもりもり食べるのも、自分を大事にすること。失敗したって大丈夫。ブタの女の子のストレートな言葉は、大人の心にも染みこんできます」

    

待つことの意味を考えさせされる『まんげつのよるまでまちなさい』(ペンギン社)



作:マーガレット・ワイズ・ブラウン 絵:ガース・ウィリアムズ 訳:松岡享子 ペンギン社

アライグマのぼうやはまだ夜を見たことがありません。夜はどんなに暗いの? どの位の大きさなの? 何色なの? と次々にお母さんに聞きますが、そのたびにお母さんは「まんげつのよるまでまちなさい」と言います。繊細な鉛筆画が、動物たちを表情豊かに描きだし、待つことや待たせることの意味を考えさせてくれます。

高橋さん:
「『夜を見てみたい』『どのくらい暗いのか知りたい』と言うアライグマのぼうやに、満月の夜まで待つように答えるお母さん。子どもの素朴な疑問や自分の目で確かめたいという意志、子どもの心身の育ちを穏やかに美しく描いた絵本です。ぼうやの問いかけや成長が子どもの共感を得ると同時に、着実に大きくなっていくぼうやや、ぼうやを見守るお母さんの姿は大人の心にも響きます。『時』と『月』が満ちたとき、祝福のように輝く大きな満月が印象的。寝かしつけだけでなく、何かを待っているときや人生の節目にもおすすめです」

寝かしつけ絵本に適した環境や読み聞かせのコツは?

ここからは、絵本で寝かしつけを行う際に知っておきたいポイントをご紹介。高橋さんから、寝る時の環境や読み聞かせのコツを聞きました。

高橋さん:
「子どもを寝かしつけるための絵本の読み聞かせは、子どもがスムーズに眠れるようにするためのサポートであり、親子のコミュニケーションでもあります。

寝る前の読み聞かせを習慣化すると、子どもは『絵本を読んだら寝る』ということを理解するようになりますし、心や体もリラックスするため眠りやすくなります。

あくまで寝る前のルーティンの一部であって、読み聞かせ途中で子どもが眠る『寝落ち』を狙ったものではありませんから、あまり方法や効果にこだわりすぎず、大人も一緒に、絵本を読む時間やお子さんとのやりとりを楽しんでください。

また、あまりに眠れない日が続くようなときには、生活習慣の見直しが必要かもしれません」

部屋の照明を暖色系にするのが理想の環境

高橋さん:
「絵本を読んであげるときの部屋の明るさは、本が読めてリラックスできる程度が目安です。照明を調節できるなら、光を弱くしたり、暖色系に変えたりするのもよいですね。間接照明にする場合は、光が子どもの目や視界に入らないように注意しましょう。寝る1時間くらい前からテレビを消すのも効果的です」

寝かしつける際は楽な姿勢で

高橋さん:
「基本的には楽な体勢でいいでしょう。子どもがあおむけなら大人もあおむけ、うつぶせならうつぶせというように、目線が同じ方向だと読みやすくなります。子どもの目と絵本の間は30センチ程度の間隔を空け、左右の目で絵本との距離の差が出ないよう、できるだけ真っすぐに本を置きます。

もし子どもが絵本そのものを見ていなくても、声は聞いていることが多いので、気にせずそのまま読んであげてください。読みながら体をトントンしたり、子どもが触られるのが好きな部分をなでてあげたりするのもおすすめです」

一度にたくさん読まなくても大丈夫

高橋さん:
「読む冊数は、無理のない範囲で自由に決めてかまいません。あらかじめ何冊読むかを子どもと話しておくと、際限なく増えることがなくなります。小さいうちは一冊を読み通すのではなく、好きなページや部分を繰り返し読んでほしいということもあるので、あまり厳密に考えなくてよいと思います」

寝かしつけに適した絵本の内容

高橋さん:
「寝る前に読む絵本としては、年齢に限らず、リラックスできるもの、安心感を与えるもの、夜の時間をイメージできるものが適しています。逆に、ドキドキし過ぎるもの、怖いもの、何かを探したり質問に答えたりするもの、身体を動かしたくなるもの、死・病気・けがをイメージするものは、避けた方がよいと考えられています。

ただ、何にリラックスするのか、ドキドキするのか、怖いのかには、個人差があります。親が、お子さんの様子や反応、好みをよく見極めることが、寝かしつけ絵本選びのポイントです」

いつも通りの声のトーンで読む

高橋さん:
「トーンは、普段通りで構いません。普段から話すスピードが速いママ・パパや、せかせかした気分のときは、ゆっくりと落ち着いて読むことを意識するとよいと思います。

また、子どもは親の声そのものに安心感を抱くものなので、寝かしつけ絵本はできれば自動で本を読み上げるアプリなどではなくママやパパの声で読んであげてください。

けれども、読み聞かせは親の義務ではなく、親子の時間を楽しむためのものなので、疲れている日や体調が優れない日はお休みしても大丈夫ですよ」


【監修者プロフィール】

高橋真生(まい)さん



学びと読書のアドバイザー・絵本専門士。教員・図書館司書の知識と経験を活かし、学習・読書支援に携わる。また、言葉や日本の伝統に関する疑問について、生活文化の伝承という視点から解説を行う。
ホームページ:https://maitaka84.com/


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