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子どもの発達お悩み相談室 第20回 「11歳の息子。父親からの虐待のせいか、大人や気の強い子が苦手になり、意思の疎通ができない、と先生に言われました。」


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。※ほぼ毎週金曜更新

 

Q20:11歳の息子。父親からの虐待のせいか、大人や気の強い子が苦手になり、意思の疎通ができない、と先生に言われました。

■家族構成
相談者:晋(相談したい子の母、40代前半)、長男(相談したい子、11歳)、長女(相談したい子の妹)

■ご相談
 4年生頃から先生と意思の疎通ができない、と言われ5年生になって担任の先生に相談したら病院に行くのも一つの手だ、と言われました。

 息子は、大人や気の強い子との意思の疎通ができません。学校は嫌いではないので、不登校になったりはしていませんが、勉強や提出物の事に対する質問、学校からのプリントが足りなかったりした時に、先生に理由を話してもらってくる、という普通のことができません。

 ですが、家では至って普通の子どもで障害がありそうな感じには見えません。大人がニガテなのは、4歳まで一緒に暮らしていた息子の父親に、差別的な扱いを受けていた(娘は可愛がっていたが、息子には激しく怒鳴りつけていた)せいもあるのかと思っていましたが、それだけではない気がして相談させていただきました。

A. 専門家の回答

虐待によるトラウマで発達障害のような症状が出ることがよくあります。

話しかけるタイミングがつかめない
 小学校3年生くらいまでは、先生も察してやってくれるので、そこまで主張が必要な場面も少なかったのだと思います。4年生になって、自己主張ができないと、「ちょっと内気な子」というだけでは説明できず、逆に目立ってしまう、ということはあるかと思います。

 例えば、学校でプリントが足りない場合に、ASDのお子さんですと、大勢のクラスメートの前で、どのタイミングで先生に言えばよいのかわからずにずっとモジモジしてしまう、ということはよくあります。もちろん、そういう子が全てASD(自閉スペクトラム症)である、ということでは決してありません。

虐待のトラウマで発達障害のようになることも
 難しいのは、虐待によるトラウマのせいで、発達障害のような症状になることがよくある、ということです。愛知県での10年間の統計資料では、病院を受診した1110名の被虐待児のうち、発達障害と診断された児童は592名と、全体の53%を占めていた、という報告があります。

 この報告では、発達障害の中でもASDと診断された児童323名では、その9割が知的にはなんら問題のない高機能群だったとのことです。学校の勉強は問題なくできるのに、コニュニケーションなど、部分的に生活上の困難がある、これが発達障害のわかりづらいところです。

5歳までの親子関係が人間関係のベース
 虐待は、伸びざかりの子どもの脳を攻撃し、その子の後の人生をも左右します。特に、人格を形成するのに重要な5歳までに、親など養育者との間で適切な愛着関係が持てないと、人とうまくコミュニケーションする能力が育っていきません。

 子どもは親と一緒に笑ったり、手をつないだり、抱っこされたりといった経験をベースに、人とのコミュニケーションを学んでいくものです。そこで受け入れられた経験が十分でないと、自分に自信が持てず、大人への不信感なども生じてきます。

できるだけ早く専門機関に相談を
 晋さんの息子さんの場合、別れた父親による虐待に近い養育のせいで、特に大人の男性や強いタイプの男の子の前だと萎縮してしまい、必要以上に緊張して話せなくなってしまったのか、それとも生まれつき発達障害なのか、またはただ内気なだけなのか、ご相談内容だけではわかりません。

 しかし、いずれにしても学校での様子を毎日見ている担任の先生から指摘された、とのことなので、まずは学校での状況をすぐに把握できる、スクールカウンセラーにご相談されるのがいいと思います。あるいは地域の子ども発達支援センターなどでも相談に応じてくれるでしょう。

 発達障害と診断され、かつ虐待などトラウマがあるお子さんの場合、トラウマのない発達障害のお子さんに比べて、非行に走る割合が高く、非行度合いも重症であるという報告もあります。早めに適切なサポートを受けることが大切です。

(※第21回「3歳で自閉症と診断。読み書きはできますが、言葉があまり出ません。なんとかしてやりたい。」は10月22日(金)に更新予定です)

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久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。

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