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「3歳の息子がなかなか寝てくれません。今後の発達に悪影響はありますか?」子どもの発達お悩み相談室


みなさまが、小学生以下のお子さまを育てていて、「うちの子ちょっと変わってる?」と思い、お子さまの発達などに関してご心配になっていること、お悩みになっていること、お気づきになったことなどについて、脳科学者の久保田競先生と、その弟子で児童発達研究者の原田妙子先生が児童の脳や発達の最新研究をもとに回答します。

Q19. 3歳の息子がなかなか寝てくれません。今後の発達に悪影響はありますか?

■家族構成
相談者:Tちゃんママ(相談したい子の母、30代後半)、夫(40代前半)、長男(相談したい子、3歳)

■ご相談
 子どもがなかなか寝ません。もともと、子どもは夕食を食べるのが非常にのんびりなこともあり、布団に入るのが9時半~10時になってしまうのですが、その後も布団の上で飛び跳ね、歌い、絵本を読みたがり、「お茶のむ!」「足がいたい、バンソーコはる!」と理由をつけてはリビングに行き、結局寝るのは11時頃になってしまいます。成長ホルモンの分泌時間などで早く寝かさないといけないのに…と、毎日焦りがたまっています。

 やはり、寝るのが遅いと、今後の発達に悪影響はありますか? せめてもう少し布団に早く入れるように、夕食を途中で無理やりにでも切り上げるべきでしょうか。

 また、少し余談ですが、お悩み相談室 第5回 の「乳幼児期に異常に大きくなるASD児の脳」を読み、うちの子も頭が大きい(園で同い年の子たちの1.2倍はあると思います)ので、急に心配になりました。今のところ、健診でも園でも問題点の指摘は受けておらず、言葉も順調に話していますが、発達の専門家の方に診てもらった方がいいでしょうか。

A. 専門家の回答

子どもの睡眠不足は発達の面では良いことは一つもありません。

日本の子どもは寝る時間が短い
 毎日寝るのが夜11時とは、Tちゃんママが焦るのもよくわかります。ちなみに、欧米やアジアなど17カ国における0〜3歳までの乳幼児の睡眠について調査した研究では、アジアの国々では欧米に比べて寝る時刻が遅く、総睡眠時間も短い国が多いのですが、特に日本の平均総睡眠時間は最も短く、11.6時間だったという報告があります。

 睡眠時間が短い(2歳半〜6歳までに10時間以下の場合)と、長い子と比較して多動の傾向が強まり、知能検査の成績も悪いという研究結果もあります。また、大人でもそうですが、寝不足が続くとイライラして怒りっぽくなりがちですよね。子どもも同じで、睡眠不足や夜型傾向だと、攻撃行動が増すことがあります。

 さらに、3歳時の総睡眠時間が9〜10時間の子、8〜9時間の子は、11時間以上睡眠をとっている子に比べて中学1年時の肥満のリスクがそれぞれ1.24倍、1.59倍高い、という報告もあります。

子どもの発達のために「早寝早起き」を
 子どもの睡眠不足、いいこと1個もない!と思われるかもしれません。そうなんです。

 あれ? じゃあお昼寝をよくして、総睡眠時間が長ければよいのでは? と思われるかもしれませんが、そういうわけでもありません。早寝早起きの子どもは、朝寝坊の子どもよりも日中の身体活動レベルが高いことや、寝る時刻が21時前の幼児は、21時以降に寝る幼児より身体活動量が多いことも明らかになっています。

 つまり、子どもの発達のことを考えると「早寝早起き」の習慣がとても大切なのです。

「早寝」のために生活を見直そう
 そうは言っても、なかなか寝ない子どもを寝かしつけるのは至難の業です。まずは生活習慣を見直してみましょう。

 夕食は30分以上かかるようなら改善した方がいいですね。作るほうも、時間をかけずにささっと作れるもので時間を短縮しましょう。作りやすく食べやすいようにおにぎりにするとか。30分以上かかるなら、もうお腹がいっぱいで「遊び食べ」になっているのかもしれません。

 夜は9時以降に一緒にテレビを見たりしていませんか? テレビやスマホといった明るい光を見ていると、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が抑えられ、自然な眠りへの誘いを妨げてしまいます。

 夕食やお風呂がすんだら、照明を暗めにしてメラトニンの分泌を促しましょう。

ママの焦りが子どもに伝わる
 そうやって布団に入っても、そこから1時間以上寝ない、というのは、Tちゃんママに構ってもらったり、もっと一緒におしゃべりしたりしたいのかもしれません。まだ3歳、まだまだ甘えたいでしょう。

 逆にTちゃんママとしては、「さっさと寝かしつけて、たまった仕事や洗い物をしなきゃ」と焦りが態度に出てしまっていませんか。子どもは、ママの気持ちが自分に100%向いているのかそうでないのか、敏感にキャッチしています。

5分でいいのでベタベタ時間を
 おすすめは「寝る前の5分間マッサージ」。マッサージとは言っても、マッサージごっこや軽いストレッチのようなものでもよいのです。とにかく子どもをハグしたりなでたり、身体にさわってベタベタしたりします。3分でもいいです。一日のうちその時間だけは100%お子さんのことだけを思い、お子さんのために捧げましょう。ボディタッチをすることで寝つきがよくなったという報告もあります。

 そして、可能ならそのままTちゃんママも一緒に寝てしまってください。小さい子を育てているときには、いろんなことが中途半端になってしまうのはやむを得ないことだと割り切ってみてはどうでしょう。

 最後に「第5回」で書きました「乳幼児期に異常に大きくなるASD児の脳」ですが、あくまでも、ASDと診断されたお子さんの頭囲を調べると「生後早期から2〜3歳にかけて『急激に』大きくなる」ことがわかった、ということです。また、その時期に急激に大きくなったからといって、それがASDの証拠だ、というわけでは決してありません。Tちゃんママの息子さんの場合は、特に発達の指摘も受けてない、ということで、頭囲のことだけで心配になる必要はないと思います。安心してください。

「うちの子ちょっと変わってる?」子どもの発達お悩み相談室はこちらから

 

久保田競先生
1932年大阪生まれ。
東京大学医学部卒業後、同大学院で脳神経生理学を学ぶ。米国留学で最先端の研究を身につけ、帰国後は京都大学霊長類研究所で教授・所長を歴任。
『バカはなおせる 脳を鍛える習慣、悪くする習慣』『天才脳を育てる3・4・5歳教育』『あなたの脳が9割変わる!超「朝活」法』等、脳に関する著書多数。

原田妙子先生
福岡大学体育学部修士課程卒業後、久保田競に師事し博士号取得。海外特別研究員としてフランス国立科学研究センター(College France CNRS)認知行動生理学研究室、パリ第六大学 脳イメージング・運動制御研究室を経て、現在は浜松医科大学 子どものこころの発達研究センターの助教。専門は子どもの脳機能発達。


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