KADOKAWA Group

Life & Work

暮らし・働く

早起きと脳のコンディション『体力おばけへの道 超ハードモード編 自分史上最高の「動ける体」を手に入れよ!』ためし読み

NEW

努力しているのに、「思うように体が変わらない」と感じていませんか。
限られた時間の中で結果を出したいのに、何が正解かわからず遠回りしてしまう——そんな悩みを抱える人も多いでしょう。
本書では、努力を1%も無駄にしない「最短で体を変える運動法」を体系的に紹介します。脂肪を燃やし、筋力を高め、動き・見た目・パフォーマンスを同時に底上げするための「体の使い方・鍛え方・追い込み方」を、まとめました。
目指すのは、スタイリッシュで、タフで、長く使える動ける体です。
頭にも体にも効く知識と運動法を、余すことなく届けます。

※本連載は『体力おばけへの道 超ハードモード編 自分史上最高の「動ける体」を手に入れよ!』から一部抜粋して構成された記事です。



 体力というと、筋肉や心肺機能を思い浮かべる人が多いでしょう。確かにそれらは重要な要素です。しかし実際には、体力の〝上限〞を決めているのは、筋力そのものではありません。
 脳の状態です。集中力、判断力、感情の安定。これらが落ちている状態では、どれだけ体が強くても、質の高い超HIITは成立しません。フォームは雑になり、無理な判断が増え、疲労や痛みのサインにも気づきにくくなります。結果として、行動体力は使えていても、防衛体力を削る方向へ進んでしまいます。
 早起きの最大のメリットは、「朝が早いこと」ではありません。脳が最もクリアな時間帯に、意志力をほとんど使わずに行動できる環境をつくれること。
 ここにあります
 人の脳は、1日の中で使える判断力や集中力に限りがあります。夜になるほど、意思決定は遅くなり、感情のブレも大きくなります。その状態で超HIITを行うと、「気合」や「根性」に頼る割合が増え、動きの質は下がりやすくなります。
 夜型でトレーニングを頑張り続ける生活は、行動体力は削れていなくても、防衛体力を確実に削っていきます。 早起きが有利なのは、脳内物質が自然な形で整いやすい時間帯を使えるからです。

 早起きが有利なのは、脳内物質が自然な形で整いやすい時間帯を使えるからです。
 実際、ビジネスの世界で長く成果を出し続けている人たちを見ると、共通点があります。それは特別な才能や長時間労働ではなく、
● 朝の時間を大切にしている
● 判断が早い
● 感情の起伏が比較的安定している
という点です。

 彼らは「努力家」というより、消耗しにくい設計をしています。脳のコンディションが安定しているからこそ、重要な判断をミスしにくく、結果として行動体力を長期間維持できます。
体力が高い人ほど、
● 朝に余白があり
● 判断が早く
● 無駄な消耗が少ない

 これは偶然ではありません。脳の状態を含めて体力を設計している結果です。
 体力とは、筋肉量の話だけではありません。脳が安定し、判断が冴え、感情が暴走しない。その状態で体を使えること。それが、本当の意味での「体力の上限」を引き上げます。
 ここで伝えたいのは、早起きそのものが正解だ、という話ではありません。
 脳が整う時間帯に、無理なく行動できる設計を持っているか。そこが、体力を上げ続けられる人と、どこかで頭打ちになる人の分かれ目です。

脳内物質の整理

 最後に、体力と深く関わる脳内物質を整理しておきましょう。超HIITやトレーニングによって、実際に影響を受け、体力の持続性や判断力に直結するものだけを取り上げます。

■ ①ドーパミン
 ドーパミンは「やる気」や「達成感」に関わる脳内物質です。HIITのように強度が高く、「やり切った」「できた」という感覚が明確な運動では、ドーパミン系が刺激されやすくなります。この働きによって、運動後に前向きな気分が生まれ、「またやろう」「継続したい」という意欲につながります。

 ドーパミンは、行動を習慣化させるうえで欠かせない物質です。

■ ②ノルアドレナリン
 ノルアドレナリンは「覚醒」や「集中」に関わる物質です。心拍数が上がり、素早い判断や反応が求められる状況で分泌が高まります。HIIT中に周囲の情報への反応が鋭くなるのは、この作用によるものです。

 これは体を一時的に〝戦闘モード〞に切り替える働きであり、高い出力を引き出すために不可欠です。

■ ③セロトニン
 セロトニンは「安定」や「安心感」に関わる物質です。興奮した神経活動を落ち着かせ、感情のブレを抑えます。HIIT後に気持ちがスッと落ち着いたり、リセットされた感覚が生まれるのは、セロトニンの働きによるものと考えられます。セロトニンは睡眠の質やストレス耐性にも関与しており、防衛体力を支える重要な要素です。


■ ④エンドルフィン
 エンドルフィンは「多幸感」や「痛みの緩和」に関わる物質です。強い運動刺激を受けたときに分泌され、身体的なきつさを和らげます。「苦しいのに、どこか気持ちいい」と感じる状態は、エンドルフィンの作用です。この働きによって、運動の体験がポジティブに記憶され、継続につながりやすくなります。

■ ⑤BDNF(脳由来神経栄養因子)
 BDNFは、神経細胞の成長や結合を促す物質で、「脳を鍛える因子」とも呼ばれます。特に記憶を司る「海馬」や、意思決定を司る「前頭葉」に作用します。HIITのような強度変化のある刺激によって分泌が高まり、学習能力や思考の柔軟性に関与します。運動後に「頭がスッキリする」「考えがまとまりやすい」と感じる背景には、このBDNFの働きがあります。

 これらの物質は、単独で働くのではありません。超HIITのように〝短時間で心拍数を上げ、全身を制御する刺激〞が入ると、覚醒(ノルアドレナリン)↓遂行(ドーパミン)↓安定(セロトニン)→痛みの緩和(エンドルフィン)といった流れが重なり、結果として「やり切れる状態」と「回復できる状態」の両方が整いやすくなります。

 そして、その繰り返しの中でBDNFが働き、動きの学習や判断の切り替えがスムーズになっていく。体力とは筋肉だけではなく、脳と神経の〝使える状態〞まで含んだ余裕を生み出す能力です。本章で食事・睡眠・目的(大会)まで扱っているのは、ここにつながっています。

モチベーションとしての「大会」

 脳のコンディションは、「気をつけよう」と思っただけで整うものではありません。睡眠、食事、運動。これらを意識していても、生活が忙しくなると、判断は鈍り、優先順位は崩れ、行動は後回しになっていきます。だからこそ重要になるのが、脳の状態を〝自動的に整う方向へ引っ張る仕組み〞を持っているかどうかです。

 ここで役に立つのが、「目的」です。

 目的があると、脳は変わります。やるべきことが明確になり、余計な選択肢が減り、判断に迷いが少なくなります。これは精神論ではなく、脳の使い方の問題です。

 マラソンや水泳マスターズ、ボディメイク系のコンテストなど、年齢を重ねても参加し続けられる大会は数多くあります。近年では、それに加えて、障害物走や全身運動を組み合わせた、いわば「大人の運動会」のような形式で、体力を総合的に使うイベントも増えてきました。

 これらは競技スポーツというより、体力を試し、楽しみながら参加できるよう設計されている点が特徴です。これらに共通するのは、年齢に縛られず、人生の長いスパンで向き合えるという点です。

 大会があると、人は自然と「今日はどう過ごすか」「今日は何を食べるか」「今日はどの強度を入れるか」を考えるようになります。

 これは意志が強くなったからではありません。脳が〝目的に向かって整理される〞状態に入るからです。

 大会という期限があることで、

● 夜更かしが減り

● 朝の時間が整い

● トレーニングの質が雑になりにくくなる

といった効果が期待できます。

 結果として、脳のコンディションが安定し、防衛体力が削られにくくなります。ドーパミンは、「やみくもな頑張り」ではなく、「ゴールが見える努力」によって健全に働きます。大会は、そのゴールを外から用意してくれる存在です。

 また、定期的に目標を設定することは、BDNFの働きから見ても理にかなっています。新しい刺激→計画→調整。こうしたプロセスそのものが、脳の適応力を保ちます。

 重要なのは、大会を「自分を追い込む場」にしないことです。大会は、勝つためのものではなく、脳と生活を整えるための目印として使えばいい。順位や結果にこだわる必要はありません。完璧である必要もありません。

 目的があるだけで、脳は安定し、判断は早くなり、結果として体力は落ちにくくなります。体力を上げ続けている人は、モチベーションに頼っているのではなく、モチベーションが自然に生まれる仕組みを持っています。大会出場は、その仕組みの一つです。





運動は小さく始めていい

体力とは、どれだけ頑張れるかではなく、どれだけ合理的に自分の体を使えているかが重要です。
「体力は、誰でも伸ばせる。運動は、小さく始めていい。」
 その理解を行動へとつなげるために、解説をしてきました。拙著のタイトルにある「超ハードモード」とは、無理をする合言葉ではありません。体が本気になる強度を見極め、必要な分だけ使えるようになること——その判断力こそが、本書で伝えたかった「ハードさ」です。
若いうちは勢いでも前に進めます。しかし、忙しさや責任が増え、回復の時間が限られるほど、無計画な努力は続きません。だからこそ、壊れない設計と、回復を前提にした強度設定、そして日常に組み込める習慣が必要なのです。
体力とは、無理ができる能力ではありません。長く前に進み続けるための基礎性能です。
体を信頼できるようになると、行動に迷いが減り、生活の質は確実に変わります。この本が、体を再設計し、もう一段上を目指すきっかけになれば幸いです。
壊さずに、積み上げる。それが、私の考える「体力おばけへの道」です。

▶書誌情報を見る


この記事をシェアする

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • LINEでシェアする

特集

ページトップへ戻る