そんな風にして時間と心に余裕ができたら、やる気も出てくる。冒頭の毎日漫画を読んでいる子のように余裕ができてほかのことにも目がいくようになってくる。
そんなときに気合いを入れて「こうするのがいい」という知識や技術を集めそうになるけれど、そこでも急がずに。余裕をもって「これはしなくてもいいよ」のほうを探してみてはどうだろう。
例えば、トマトを食べられない子がいるとして、好き嫌いをせずになんでも食べるように「しなければならない」と思うと、食べられない姿に目がいく。食べさせないと、と必死になってしまう。
それを、ほかのものでも栄養は補えるし食べることを楽しむほうが大切だから、なんでも食べられるように「しなくてもいい」と思えると、好きなものを食べている姿に注目できる。余裕が保てる。
子育てや保育では、待つことが大切だと言われる。けれど「待たなければならないこと」だと捉えると、「ちゃんとしてほしいのに」「みんなできているのに」と、待つことがしんどくなる。
それを、視点を変えて「指摘"しなくてもいい"こと」「今は"できなくてもいい"こと」だと思えたら、「無理しなくても大丈夫かも」と待つことが自然にできて、しんどくなくなるんじゃないかなと思う。
余裕ができてようやく、できない姿ややりたくないと言う姿を大切にできてくる。できない姿を尊重できるようになったら、また少し心に余裕ができる。
子育てや保育に必要なのは、子どもを思い通りに動かす方法ではなくて、我慢して見守る忍耐力でもなくて、それくらいは大丈夫かなって余裕を持って見守る視点と知見なんだと思う。ユーモアがあれば、なおいいな。
あれもできるように、これもできるようにと、「しなければならないこと」に心が占拠されそうになったときに、みんなができるようにならなくていいよ、できないことも必要なことだよって思えたら、少し気持ちが楽になるかもしれないな。
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余談ですが
昨年の夏実家に帰ったときに、でかいキュウリを食べた。父が畑で育てたらしく、2、3日、目を離したらヘチマみたいに大きくなったらしい。
そして、その畑のなにも手入れをしていない雑草の生えた畝(うね)からミニトマトが育ったそうだ。
「去年育って落ちた実から勝手に生えてきたんやろな。肥料やってるトマトよりもようけ(たくさん)できたわ、すごいやろ」と自慢げに話す父に「勝手に育ったのになんで自慢げやねん」と心の中でつっこんだ。
誰のおかげでもいいか。枯れないように見守って、適度に手を抜いて、知らぬ間に育って、よかったねってみんなで言って、そんな感じでいいよねって。
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第5回では、第2章:できないことも、何かにつながっている「ベンチからナポリタン」を公開いたします。(10月13日公開予定)
『大人になってもできないことだらけです』
全3章もくじ 公開
<オススメ!>同じ著者・きしもとたかひろの試し読み連載
子どもたちの声を元に考え、【子どもと関わるときに気をつけたいこと】をマンガにまとめた作品『怒りたくて怒ってるわけちゃうのになぁ』(著者:きしもとたかひろ)の試し読みを公開中!
著者 きしもと たかひろ
- 【定価】
- 1,320円(本体1,200円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- A5判
- 【ISBN】
- 9784046808523