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子育て・教育

『受験×非認知能力』が必要な5つの理由 Part.2


2023年私立・国立中学受験者数、受験率は過去最多となり、2024年の今年もそれを更新しそうな勢いで過熱化しています。
「中学受験は親の受験」とも言われるほど保護者の影響力が強いもの。親にも覚悟と準備が必要となります。
ただ、干渉するあまり、成績だけに目を向け、テストや受験の結果を責めたり、子ども自身を否定したり、比較したりする“子どもを壊す”受験になってしまっては、元も子もない。そうならないためには、どうすればいいか、そのポイントをお伝えしていきます。

連載第3回は、前回に続き「なぜ中学受験に非認知能力が必要なのか 5つの理由」をお伝えします。

※本連載は『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ』から一部抜粋して構成された記事です。



 

理由その3
激変の社会で必須の能力を先取りする

でも本当の先取りは?

 最も重要な「先取り」は今の子どもたちが大人になった時に必須となっている非認知能力の先取りなのです。
今の小学4年生が高校を卒業する2030年はグローバル化・多様化がいっそう加速しているでしょうし、AI化もますます進んでいることでしょう。将来的には今ある仕事の49%は機械にとってかわられる、というオックスフォード大学のマイケル・オズボーン教授の有名な研究結果がありますが、それが現実味を帯びるほどさまざまなところで作業が機械化しています。そんな社会ではこれまでの成功法則は役立ちません。

 

人間だからこそできること

 当然のことながら「なんとかする」ために社会で求められる能力も変わってきています。これまでの「人より速く、人より多く、人より正確に」知識をインプット・アウトプットしたり、効率的に作業をこなしたりする能力から、今後は人間だからこそ正解のない問題に向き合う能力が求められているのです。

・ますます加速する変化の波を乗りこなすために必要な回復力ややり抜く力
・激変の時代に日常的に遭遇する想定外への臨機応変な問題解決能力
・グローバル化、多様化で柔軟な対応力や違いを乗り越えての協働力
・グローバル化、多様化でますます加速する競争社会を生きるストレス耐性
・グローバル化、多様化でさらに重要となる共感力あるコミュニケーション能力
・学歴が絶対ではなくなる社会で自分の能力で生きていく力
・指示出ししてくれる人がいない社会で自ら行動していく主体性
・正解のない問題に答えを見つける好奇心と探究心
・激変の社会で必要とされ続けるために学ぶことを楽しむ力
・何があっても諦めず自分で人生を切り開いていく力
・自分よりも優秀な人はいつでもどこにでもいる中で自分を大切にして生きる力
・この先も続く人生100年のレースを生き抜く力
・楽観性でクヨクヨしない力
・1人で完結する作業が減少する中で他者の立場に立ち、思いやる共感力や社会性
・0から1を作り出す想像力と創造性
・責任ある意思決定・行動を可能にする自制心

 

 これらは何も新しい能力ではありません。ただ、これまでの社会では特に重要視されてきませんでした。なぜなら変化の少ない安定した時代では一つの成功法則が機能していて、これらを育む必要があまりなかったからです。でも今は安定とは反対の激変の時代。そこで必要とされるのが非認知能力です。

 

理由その4
学力オンリーはすでに少数派

衝撃! 学力オンリーはすでに少数派

 2023年度の大学入学者の半数以上が総合型選抜入試で入学しています。この状況を見てもわかるように、学力オンリーはすでにマイノリティーなのです。
総合型選抜入試で最も大切なのは「尖った」部分です。それはつまり「自分は誰で、何がしたくて、そのために何をしてきて、今後どう社会の役に立っていきたいか」を主張できる学生です。
 総合型選抜入試専門の塾も誕生しており、東京大、早稲田大、慶應義塾大をはじめ、並いるトップ校に合格者をたくさん出しています。そこでは入試に必要な小論文をはじめ、面接の練習、論理的思考によるディスカッションの訓練などがかなりのハイレベルで行われています。見学に行った際に感じたのは、非常にグローバル社会のスタンダードにマッチしているなと言うことでした。

 

「認知+非認知」を重視する一歩先ゆく学習塾の出現

 40年以上の歴史を持つ学研教室では、塾業界で初めて「認知+非認知」を打ち出しています。実際、2023年度から全国に7000名以上いる指導者と学研教室を運営する学研エデュケーショナルの全社員向けに「非認知能力の育成」というリスキリングに着手しています。
 未来を生きる子どもを育むことが目的の学研教室では、学力に加えて生きる力を育てることが激変の未来を生きる子どもたちにとって欠かせない能力との信念から、指導者向けの研修として「認知+非認知=生きる力を育む学研教室」非認知能力育成プログラム(ボーク重子開発)を採用しています。教育の世界はこれからますます認知オンリーではなく「認知+非認知能力」にシフトしていくことでしょう。
 ここまで聞いていかがでしょうか? 非認知能力に対する懐疑的な気持ちは薄らいできましたか? さぁ、次が仕上げです。日本国内ですでに起きている非認知能力に対する教育格差についてお話ししましょう。

 

理由その5
すでに起きている非認知能力格差

グローバル社会 vs 日本の現状

 アメリカにおける非認知能力の育成を推進するCASELの設立のほか、2015年OECDの報告書にはアメリカ、イギリス、スェーデン、ノルウェイ、カナダ、など9カ国から「社会情緒的教育(SEL)」(※)は学力向上・幸福度向上・生きる力の習得に役立った、という結果が報告されています。またシンガポール、メキシコ、インドネシアでも非認知能力を育成するプログラムが実施されているとしています。グローバル社会は日本よりもだいぶ前に学力オンリーから「認知+非認知能力」にシフトしているのです。

 そうした国々で非認知能力を小さい頃から育まれた子どもたちと日本の子どもたちは、協働・競争していくことになるのです。2020年の教育改革で日本も非認知能力の育成に言及していますが、20年以上の差を考えると、一刻も早い普及が必須です。

※Social Emotional Larning 以下の5つの能力を育むことを目的とした教育
• 自己を認知する能力
• 自己を管理する能力
• 他者を理解する能力
• 関係性を維持構築する能力
• 責任ある意思決定をする能力

 

日本国内で起きている非認知能力格差

 グローバル社会vs日本という格差だけではなく、日本国内でもすでに非認知能力育成への格差は広がっています。なぜならすでに、それもだいぶ前から非認知能力の育成に着手しているところは日本にもあるからです。

 ウェブサイトを見れば顕著ですが、例えば慶應義塾幼稚舎や麻布、開成などは随分前から非認知能力の育成を行っていることがうかがえます。というより、これらの学校はそもそもの出発点が「認知+非認知」の育成なのです。これは近年大人気の渋谷学園や広尾学園も然り。また最近では軽井沢風越学園が非認知的な部分を育む教育で注目を集めていますよね。「共に時代を創っていくチェンジメーカーを育む」ことを謳う日本初の全寮制の国際高校UWC ISAK JAPANも同様です。

 昨今のインターナショナルスクールはブームと言っていいほどの人気ですが、そこでは学力だけではなく非認知能力の育成にも力を入れるIBプログラムを採用しているところも増えています。こういった教育方針も、その人気の一端を担っているのかもしれません。また、特に幼児教育の分野では「非認知能力の育成」を謳ったところが増えてきています。
 

スポーツで顕著な非認知能力へのフォーカス

それだけではありません。特にスポーツの世界では監督たちが「非認知能力」を大切にしてきたのがうかがえます。
 2023年夏の甲子園で107年ぶりに優勝した慶應義塾高校では監督からの命令・指示というトップダウンではなく部員の自主性を重んじた「考える野球」を重視しています。森林貴彦監督は「エンジョイ・ベースボール」の下「任せて・信じ・待ち・許す」という見守りを徹底しているそうです。これは選手の自己決定、協働力、責任感を高め、共通の目的に向かってやり抜く力を高めます。また「選手の自主性に任せない方が勝利には近いかもしれないが、それでは選手のためにならない」と従来のトップダウン型の指導を一蹴しています。優勝できたのは個々の技能もあるでしょうが、個々をつなげ、強いチームにした非認知能力によるところが大きいのではないでしょうか?

決勝戦で対戦した仙台育英高校の須江航監督も自身の著書で「幸福度の高いチーム作り」のために選手たちに自主的にいろんなことを決めさせることを実践していると書いています。またアメリカのある有名な監督は「スポーツで技能は1割、メンタルが9割」と言っています。それくらい認知を支える非認知能力の部分が大切なのです。
 

これ以上遅れをとらないために

 非認知能力の育成を掲げる学校や塾、コーチとつながりのある人とない人との間には、すでに国内においても非認知能力の育成に格差が生まれていると言って良いのではないでしょうか? 残念ながらそれが現在の日本の実情です。
いかがでしょう? 非認知能力にまつわる世界、そして日本の現状を知ると、中学受験を学力だけではなく、今後の人生で真の勝利を掴むためにも非認知能力育成の機会にしたい! そんな風に思えてきたのではないでしょうか?


 

最高の中学受験を迎えるために

令和の中学受験と親世代の受験の決定的違い、それはその先の「未来」が見えるか、見えないか。
今の小学4年生が高校を卒業する2030年には、今ある仕事の49%がAIに取って代わられると言われます。それは一体どんな社会なのか? 予測もつかない社会に私たちは子どもたちを送り出そうとしているのです。
そこでは偏差値も大学名も一生の安泰を約束してはくれません。変化はますます加速していくでしょう。その危機感から学力以外の能力、「生きる力=非認知能力」も育成しようと教育が変わってきています。

中学受験は「非認知能力」を育成する絶好の機会です。本書を通して、まずは親が意識改革をし、子どもの「非認知能力」を育む土台を作りましょう。そして、最愛の我が子と最高のチームで中学受験を乗り切りましょう。頑張るあなたを応援しています。

 

【プロフィール】



ボーク重子(ぼーく しげこ)
英国で現代美術史の修士号を取得後、1998年渡米、結婚、出産。2004年に中国現代アートを中心としたアジア現代アート専門ギャラリー「Shigeko Bork mu project」をワシントンD.C.にて起業。
15年の社長業の後、セカンドキャリアとして非認知能力育成専門コーチングで再度起業。現在、非認知能力を育むことが証明されているSEL(社会情緒的教育)ベースの革新的BYBSメソッドを採用したコーチング会社2社(日米)の代表を務める。
非認知能力を育む学校教育、家庭環境で育った娘・スカイは、2017年「全米最優秀女子高生」大学奨学金コンクールで優勝。
その後、初の非認知能力育児本を出版、2018年に発売された『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)はベストセラーとなり、以来非認知能力育成のパイオニアとして知られる。
近年は、激変の時代に必須の生きる力「非認知能力」を理解するだけでなく、実践に落とし込み確実に身につけることで幸福度、学力、生産性を高めるプログラムを家庭、教育機関、企業、自治体に提供している。

 

【書籍情報】


著者:ボーク 重子

定価
1,870円(本体1,700円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046066107

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