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子育て・教育

『受験×非認知能力』が必要な5つの理由 Part.1


2023年私立・国立中学受験者数、受験率は過去最多となり、2024年の今年もそれを更新しそうな勢いで過熱化しています。
「中学受験は親の受験」とも言われるほど保護者の影響力が強いもの。親にも覚悟と準備が必要となります。
ただ、干渉するあまり、成績だけに目を向け、テストや受験の結果を責めたり、子ども自身を否定したり、比較したりする“子どもを壊す”受験になってしまっては、元も子もない。そうならないためには、どうすればいいか、そのポイントをお伝えしていきます。

連載第2回は、「なぜ中学受験に非認知能力が必要なのか 5つの理由」をお伝えします。

※本連載は『子どもを壊さない中学受験 我が子を上手に導けるようになる3週間チャレンジ』から一部抜粋して構成された記事です。



 

  非認知能力の重要性に伴い変化する世界と日本の実情  

5つの理由

 今の子育て世代は「非認知能力が重要だよね」と言われる前の世代です。だからこそ非認知能力の重要性に懐疑的になる気持ち、すごくよくわかります。ですから非認知能力の育成法を共有する前に、ぜひともみなさんに考えていただきたいことがあります。考えることで『受験×非認知能力』を実践している時に、身につけようという気持ちがより強くなりモチベーションが維持できるからです。
これからの21日間で「やめたいな」「面倒」「今日は疲れた」という時は、次からの5つの理由に戻って来てくださいね。きっと自分で自分の気持ちを立て直して、本書を手に取った時の初心に戻ることができるでしょう。

理由その1
そもそも非認知能力の育成なしに中学受験を乗り切ることは難しい

学力を支える縁の下の力持ち

「はじめに」で少し触れましたが、ここで詳しく説明したいと思います。まず中学受験に必要と思われる能力は以下の7つが考えられます



 規則正しい生活を通して体力を高めつつやり抜くためには、毎日の努力も「受験」を自分ごとにしてそこに意味を見出す成熟度も必要です。そして「やる気」を持続させるモチベーションはもちろんのこと、やりたくない時もやるべきことをやって、テストの点数にめげても気持ちを立て直し、点数が良くても怠けず、周りがどんな評価をくだしても自分を大切にするなどの心の安定が要求されます。そしてそれを支える家族というネットワークも必要です。

 

実は学力はその一部 それ以外は全て「非認知能力」

 チャートを見てもわかるように、学力以外は子育てが強みを発揮できる領域。つまり親が強みを発揮できるところ、するべきところです。中学受験で問われる学力以外の能力をさらに詳しく文章化してみるとこうなります。

・わからない問題にぶち当たっても粘り強く、諦めない
・柔軟な思考と想像力で問題解決を図っていく
・感情と行動をコントロールしてやるべきことをやるべき時にやる自制心
・「どうせ無理」より「やってみなくちゃわからない」と挑戦する自己効力感
・新しいこと、知らないことに興味津々で学びを楽しむ好奇心と主体性
・凹んでも気持ちを立て直せる回復力
・テストの結果や他者の評価にかかわらず自分を大切にする自己肯定感
・一つがダメでも他の選択肢を考えられる柔軟性
・受験を自分ごとにする主体性とモチベーション
・自分の気持ちを伝えるコミュニケーション力
・自分以外の他者を思いやれる共感力
・切磋琢磨する良好な人間関係を築ける柔軟性と共感力
・規則正しい生活を続ける自制心
・家族との感謝とリスペクトそして信頼ベースの協働力

 

「学力を支える6つの能力チャート」(上記参照)をみると、学力以外のことが総崩れではその学力を最大に発揮できないことは一目瞭然かと思います。中学受験を支えるために親子で非認知能力を育成することで塾や学校での学びを最大化する構図が明白になります。

反対のケースも同様に文章化してみますね。

・解けない問題をすぐに投げ出す
・やる気がない
・言われないと勉強しない
・ゲームをやめる時間になってもやめない
・失敗したくないから、知らないこと・やったことのないことには手を出さない
・想定外に遭遇すると途方に暮れる、立ち往生
・点数が悪いと凹んでメンタルを立て直せない
・自己中で感情のコントロールが難しい
・受験は「言われたからやる」
・一つの正解に固執して選択肢を考えられない

 

 たとえいわゆる「地頭」が良かったとしても、非認知能力なしには塾や学校での学びを最大に発揮させることは難しいことがわかります。
 

親が自分の非認知能力を鍛えるとどうなるか?

中学受験で必要とされる非認知能力の子どもバージョンを、親バージョンにするとこうなるかと思います。

・他者の評価に振り回されずに、我が子をあるがままに受け止められる
・子どもを信じられる
・子どもが失敗を恐れずに挑戦できるよう応援できる
・感情と行動をコントロールして、言ってはいけないことを言わない自制心がある
・子どもの声に耳を傾ける共感力がある
・子どもの好奇心と主体性を応援できる
・成績に一喜一憂しない自制心と回復力がある
・自制心と自己肯定感で、他者と我が子を比較しないようにできる
・柔軟性と楽観性で、一つがダメでも他の選択肢を考えられる
・自分の気持ちを伝えるコミュニケーション力がある
・自分以外の他者を思いやれる共感力がある
・パートナーや子どもと良好な人間関係を築ける柔軟性と共感力がある
・規則正しい生活を続ける自制心がある
・感謝とリスペクト、そして信頼ベースの家族の〝協働力〞を構築する力がある

 

 これを見ると親子で非認知能力を高めるからこそ中学受験を乗り切れる、と思いませんか? 反対に非認知能力が健全に育まれていない場合、行き着くところは「子どもを壊す受験」になってしまう可能性が高いのではないでしょうか?
 

理由その2
変わる教育と受験の先取り

今後の教育、受験の対応を先取りする

 激変する社会の影響を受けて子どもたちに求められる能力が変わってきています。それを受けて大学受験が変わり、出される問題も非認知能力が育まれていないと回答できないような問題が増え、その先取りとして中学受験の問題も同様に変わってきています。

 中学受験の問題自体が変わってきていることに関して取材をした大手中学受験塾「SAPIX」の広野雅明先生は、従来と今の中学受験の問題の違いを「いわゆる昔の、解法の暗記や山ほどの知識の暗記、例えば社会だったら細かい年代であるとか、あるいは農作物の順位をいくら覚えているかということも、もちろん大事です。中学入試を受験する上で必要な知識であるとか、必要な解き方が備わっている上で、さらに別の能力が要求されているのが現状です」と説明されています。
 広野先生はさらにそこで出題される問題に関してこんな例を話してくださいました。
「2022年度の慶應義塾湘南藤沢中等部の入試で、2021年オリンピックのソフトボールの試合をテーマにした記述問題が出題されました。予選の第4戦まで日米が全勝していて、この段階で第5戦と決勝戦は全勝同士の日米と決まっていた。この時あなたが第5戦の監督だったらどう臨むか、という設問だったのです。この問いには正解はないんですよね。いずれにしても決勝戦には進むのだから、第5戦は勝ちに行ってもいいし、決勝戦に備えて負けにいってもいい。監督として自分がその方針を試合前の選手に何と伝えるかというような、自分の考えを書かせるような問題が出てきたのです。いわゆる正解がない問題ですよね。       
 昔に比べると、細々とした知識などを覚えることはしないで済むようになり、子どもたちは書くこと考えること、などを楽しむことができ、なおかつ楽しんだことによって、合格に近づくことができる。そういう時代なのかなと思います」

 つまり、学力だけでは点が取れなくなってきているのです。それ以外の粘り強さや学びを楽しむ好奇心と主体性、失敗を恐れないチャレンジ精神、解決策を考える柔軟性や想像力、時事問題に興味を寄せる共感力や社会性などが必要になっています。つまり中学受験は学力オンリーから「認知(学力)+非認知能力」へシフトしているといえるでしょう。
 

最高の中学受験を迎えるために

令和の中学受験と親世代の受験の決定的違い、それはその先の「未来」が見えるか、見えないか。
今の小学4年生が高校を卒業する2030年には、今ある仕事の49%がAIに取って代わられると言われます。それは一体どんな社会なのか? 予測もつかない社会に私たちは子どもたちを送り出そうとしているのです。
そこでは偏差値も大学名も一生の安泰を約束してはくれません。変化はますます加速していくでしょう。その危機感から学力以外の能力、「生きる力=非認知能力」も育成しようと教育が変わってきています。

中学受験は「非認知能力」を育成する絶好の機会です。本書を通して、まずは親が意識改革をし、子どもの「非認知能力」を育む土台を作りましょう。そして、最愛の我が子と最高のチームで中学受験を乗り切りましょう。頑張るあなたを応援しています。

 

【プロフィール】



ボーク重子(ぼーく しげこ)
英国で現代美術史の修士号を取得後、1998年渡米、結婚、出産。2004年に中国現代アートを中心としたアジア現代アート専門ギャラリー「Shigeko Bork mu project」をワシントンD.C.にて起業。
15年の社長業の後、セカンドキャリアとして非認知能力育成専門コーチングで再度起業。現在、非認知能力を育むことが証明されているSEL(社会情緒的教育)ベースの革新的BYBSメソッドを採用したコーチング会社2社(日米)の代表を務める。
非認知能力を育む学校教育、家庭環境で育った娘・スカイは、2017年「全米最優秀女子高生」大学奨学金コンクールで優勝。
その後、初の非認知能力育児本を出版、2018年に発売された『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)はベストセラーとなり、以来非認知能力育成のパイオニアとして知られる。
近年は、激変の時代に必須の生きる力「非認知能力」を理解するだけでなく、実践に落とし込み確実に身につけることで幸福度、学力、生産性を高めるプログラムを家庭、教育機関、企業、自治体に提供している。

 

【書籍情報】


著者:ボーク 重子

定価
1,870円(本体1,700円+税)
発売日
サイズ
四六判
ISBN
9784046066107

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