ヨメルバ編集部がセレクトした絵本を、聞かせ屋。けいたろうさんといっしょに掘り下げます。第二十回は、ノンフィクション感動絵本『バスが来ましたよ』です。
『バスが来ましたよ』(文:由美村嬉々 絵:松本春野 アリス館刊)
ヨメルバ:今回は『バスが来ましたよ』です。編集部がセレクトした絵本のなかから、けいたろうさんがこの絵本を取り上げたのが意外でした。
けいたろうさん:そうですね。ノンフィクションの絵本はあんまり手に取らないですね。この絵本は由美村嬉々さんに期待もあって手に取ってみたら、すごく良い作品だったんですよ。
ヨメルバ:目の見えない男性を、小学生が次々に学年を超えて助けてくれるという実話ですね。
けいたろうさん:子どもにとって、“見えない”というのは、想像が難しいことだと思うんですよ。この絵本でそういうことを知る子も少なくないでしょうね。
ヨメルバ:確かにそうですね。
けいたろうさん:絵本では、目が見えない男性の苦労がしっかり描かれています。子どもは絵本を通じて、その苦労を感じることができます。
ヨメルバ:なるほど。
けいたろうさん:主人公に手を差し伸べる女の子がすごく優しくて、ぐっとくるんですよね。ぐっとくる理由の一つとして、松本春野さんの絵がぴったりだということが挙げられると思います。
主人公と女の子の優しいやり取りが続くわけなんですけれども、その絵を見ながらじんわり伝わるなと思って。女の子が主人公に手を差し伸べるまでに、何度かバスでこの人を見ていたんだろうなとか、そのことを親に話したのかなとか、いろいろ想像しました。
ヨメルバ:確かにそうですね。
この絵本をお子さんに読まれましたか?
けいたろうさん:絵本を机に置いておいたら、10歳の長女が勝手に読んでいたんですけれども、うんうん頷いて見ていて、女の子優しいねって一言言っていました。幼児や小学生にもストンと落ちるような話になっていると思います。
家内は絵本をめちゃくちゃ読んでるんですけど、良い絵本はすぐわかるらしくて、お気に入りです。
本当に良い話なんだけれども、重くもなくて、押し付けがましくもなくて、すっと入ってくる良作だと思います。感動してしまいますよね。
ヨメルバ:本当にそうですね。
物語の運びが、主人公の目線で淡々と語られているっていうところがすごくいいのかなって思いました。
けいたろうさん:確かにそうですね。淡々と。
ヨメルバ:事実を積み上げていますよね。無理に感動的な表現とかはしていない。
けいたろうさん:ただただ、あったことを。
ヨメルバ:事実だけなんですけど、それがこの絵と相まって読後感がすごく爽やかなのが、良いですよね。
けいたろうさん:そうですね。
主人公と小学生のやり取りが10年も続いたんですって。子どもたちの手助けが次々に、優しさのバトンとして続いたのが素晴らしいことだと思うし、それを絵本に残せたのがいいですよね。長く読み継がれてほしい絵本だと思います。
ヨメルバ:本当にそうですね。どうもありがとうございました。
文:由美村嬉々 絵:松本春野
- 【定価】
- 1,540円(本体1,400円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 270mm×220mm
- 【ISBN】
- 9784752010135