不登校のお悩みは千差万別。お子さんと向き合う中で、うまくいかないことも、どうすればいいのかわからなくなることも多いと思います。本連載では、元小学校教師で、無料のオンラインフリースクールの代表として不登校支援に取り組む福田遼さんが、家庭でできる関わり方について、わかりやすくお伝えしていきます。保護者のみなさんからよく寄せられるお悩みをピックアップし、それぞれの困りごとに対する具体的な対応策をご紹介。困ったときにガイドブックを開くような気持ちで、どうぞ気軽にご活用ください。
※本連載は『不登校をチャンスに変える一生モノの自信の育て方』から一部抜粋して構成された記事です。
こんなとき、どうしたらいい?
勉強する意味がわからない、と言います
A. 遠くを見せるキャリア教育と、近くを見せるトークンで対応
「勉強なんかしたくない」「学校なんて行く意味なくない?」
不登校の子の中には、そう訴えるお子さんもいます。親御さんとしてもなかなか答えに窮(きゅう)してしまう問いですよね。
そんな子にぜひ取り組んでほしいのが「キャリア教育」です。
たとえば、さまざまな職業人のインタビューが掲載されたサイトや、自分の興味関心から関連する職業を調べられるサイトを使って、世の中にある仕事や、その仕事に就くために必要な資格などを学んでいきます。
自分の将来をすこしリアルに想像し、やりたい職業を見つけていくと、自分なりに勉強する意味を見出せる子が多いんです。たとえば、建築に興味を持って、建築家という仕事を知る。さらに、建築家になるためには大学で建築学を学ぶ必要があり、そこでは数学的な基礎が重要だと知る。こんなふうに「この科目が大事だ!」と直接的な勉強のモチベーションにもつながることもあるでしょう。
今の時点では「なりたい」と思える職業が見つからない子でも、キャリア教育を行うことによって、「将来、幅広い選択肢から仕事を選ぶためには、今しっかり勉強しておいたほうがいいね」「高校や大学に行っておいたほうが良さそうじゃない?」と前向きな話ができるようになります。
もし、それでもまったく響かない様子であれば、ひとまずトークンシステム(※1)を活用する形で、勉強や通学を促していくのが良いと思います。つまり、勉強したり学校に行くと、本人にとってメリットがある環境をつくるということ。
社会人で「仕事はすごく嫌だけど、休日の趣味を存分に楽しむために、がんばってお金を稼いでいます」という人は多いですよね。それと同じで「学校はダルいけど、ポイントを稼いでゲームの時間を確保するか」といった動機で学校に行くのもアリだと思うんです。
なぜなら、どんな動機だとしても、学校に行かないよりも行ったほうがお子さんの将来のためになると思うから。
学校に行くと、他者と協力してなにかをやり遂げる経験や社会の仕組みを学ぶ経験ができます。周りの人が勉強している環境に身を置くことで、学習意欲がかき立てられることもあるでしょう。
そんなふうに、学校に行くことによってお子さんの視野が広がり、勉強や通学の意義を見出すことにつながることもあるはず。だから、現状の手段や動機にこだわりすぎず、今行ってくれる方法を探すのはベターな方針だと思うのです。
子どもたちは、「今」「目の前のこと」に必死なのが当たり前です。「将来のために」なんて長期的な視点を持ち合わせていなくてもいいと思います。
でも、大人はそうはいきません。大人(保護者)には、子どもたちに教育を受けさせる義務があります。
本人が今やりたくないとしても、学校や勉強は、子どもたちの人生にとって必要不可欠で、重大なこと。その大切さを深く理解し、長期的な視点を持って子どもたちを上手く導いてあげるのが、僕たち大人に課された義務ではないでしょうか。
今と未来のバランスを取りながら、子どもたちが「遠い未来」に目線を向けるきっかけを贈ってあげたいと思っています。
※1 「トークン」と呼ばれる報酬(ポイント)を活用して、子どもたちの望ましい行動を増やす方法。子どもが決めた行動を達成した際にシールやポイントを貯め、一定数貯まるとご褒美があるような仕組みで、子どもたちの行動を増やしたり、行動のモチベーションを高めることができます。
不登校の子どもたちへの伴走は、ひと筋縄ではいきません。だからこそ、ひとつずつ試しながら、お子さんに合った方法を見つけていくことが大切です。再登校もその先も、一進一退。焦らずに、今できそうなちょっとしたことから取り組んでいきましょう。
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