『新装版 うちゅうずし』はここから生まれた! 鈴木のりたけさんのアトリエ訪問<後編>
「大ピンチずかん」シリーズなどでおなじみの人気絵本作家・鈴木のりたけさんの最新作『新装版 うちゅうずし』が出版されました。193枚のシールでオリジナルのお寿司を作る、読者参加型のシール絵本です。今回は鈴木のりたけさんのアトリエを訪問して、アトリエでの過ごし方や愛用している道具についてお話を聞きました。後編をお届けします。(前編はこちら)
●細い筆で隅々まで描き込む
「しごとば」シリーズなど、隅々まで細かく描き込んだ作品も多い鈴木のりたけさんにとって、細い筆は切らすことのできない必須アイテムです。
バニロンブラシソフトという筆を使っています。一番よく使うのは最も細い0番です。筆は消耗品なので、リーズナブルなものをたくさんストックしてありますね。
細かい絵を描き続けていると、塗って洗ってと繰り返すうちに、洗いきれない絵の具が筆の根元にたまってしまうんですよ。あと、毛先がぶわっと広がって、細かい絵やきれいな線が描けなくなってしまうこともあります。そういうときは思い切って新しいのに替えますね。『しごとば』(ブロンズ新社刊)のような絵だと1見開きで3本くらいは使うようなペースです。
絵の具はターナーのアクリルガッシュを愛用しています。アクリル絵の具もいろいろな種類がありますが、ターナーを選ぶ理由は、重ね塗りしても下の色が透けにくいから。僕は結構せっかちで、どんどん描き進めたいタイプなので、短時間で色を塗り重ねることのできるターナーは性に合っているなと感じます。速乾性も高いのですが、より早く乾かすためにドライヤーも使っていますね。
ただ広い面を塗るときは、アクリル絵の具だとグラデーションが出しにくいので、ドクターマーチンのカラーインクを使うことが多いです。透明感のある、淡いグラデーションを出すのに重宝しています。あとは、ファーバーカステルのオイルパステルも使いますね。
蓋がついた保湿パレットも必需品です。下がスポンジになっていて、水を入れておくとスポンジから水分が補給されるという仕組み。アクリル絵の具は本来乾きやすいのですが、蓋をしておけば翌日描くときも絵の具をそのまま使えるので、色を作り直す必要がありません。以前はフィルムケースの中に色を作って保管していたのですが、保湿パレットを導入してからフィルムケースは使わなくなりました。かなり便利ですよ。
●ローラーやボンドなど『うちゅうずし』ならではのアイテムも
『うちゅうずし』では、寿司ネタになる部分の独特なテクスチャーを作るため、ヘラやローラーなど、普段の絵本作りでは使わないアイテムも大活躍しました。
大きな紙の上に絵の具をぶちゅーっと出したあと、ヘラやローラーを使って広げていきました。絵の具も大量に使いましたね。普段は描くために必要な適量を出しますが、『うちゅうずし』のときは厚塗りになるくらい贅沢に使った方が面白いテクスチャーができるので、大胆にたっぷりと絵の具を使って、紙の上でぐちゅぐちゅと混ぜたり伸ばしたりしました。
もうひとつ『うちゅうずし』ならではのアイテムといえば、ボンドですね。いわゆる木工用ボンドですが、シャリの部分で使いました。空き瓶にボンドと水、ごはんの白に近づけるために黄色と白の絵の具も少し入れて、がーっと混ぜるんですね。それをクリアファイルの上に、筆先でちょんちょんちょん……と米粒大に置いていきます。乾いたらクリアファイルから外して、一粒一粒ピンセットでつまんで、寿司桶の絵の上に2日がかりで貼っていきました。
なぜこんな作り方をしたかというと、お米を一粒ずつ描くのが面倒だったから。絵を描かずにシャリっぽく見せるにはどうしたらいいだろうとあれこれ試すうちに、ボンドを使う方法に行きついたんです。結局描くよりも大変なことになってしまいましたが、普通に描くだけではな出せないような“米粒”感が出たので、がんばって作った甲斐がありました。
●「とにかくやってみよう!」を後押しする絵本
『新装版 うちゅうずし』は、193枚のシールの中から自由な発想でネタやシャリを選んで組み合わせ、オリジナルのお寿司を作ることで完成する、読者参加型の絵本です。
オリジナルのお寿司を作るのを、最初は少し難しく感じる子もいるかもしれません。シールを自由に選んで貼っていい、ということはつまり、正解がないということですから、どうすればいいの?と戸惑ってしまう子もいると思うんです。
そんなときはどうしたらいいかというと、あまり深く考えず、とにかく手を動かしてみること。「これかな?」と思ったシールをとりあえず貼ってみてください。適当に貼ったシールが意外とよかったりすることもありますから。そうやって次々とお寿司のシールを貼るうちに、自由に選んで作るということにも慣れてきて、楽しくなってくるんじゃないかなと。
自由に創作するにはある程度慣れが必要で、慣れていないと最初の一歩を踏み出しにくいのですが、『新装版 うちゅうずし』はそういう意味で子どものクリエイティビティを育む絵本になったなと思っています。
シールを貼り終えて『うちゅうずし』が完成したら、次はそれを「見て! こんなのできたよ!」と身近な誰かに披露してみるといいですよね。自分なりに考えて作ったお寿司だから、何かしらこだわりがあるだろうし、それを説明したいという思いも強くなるはずですから。自分で作って楽しむ、できあがったものを見てもらう、というのは、子どもにとって根源的な欲求だし、できあがった『うちゅうずし』を話のネタに、「すごい色だけど、これ食べられるの?」「実はこれはね……」なんて感じで家族の会話にも繋がるんじゃないかなと思います。
取材・文:加治佐志津
撮影:後藤利江
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