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モデルやタレントとして、テレビやグラビアで活躍している、日本プロ麻雀連盟所属のプロ雀士・岡田紗佳さん。競技麻雀のチーム対抗戦のナショナルプロリーグ・Mリーグのチーム、KADOKAWAサクラナイツのメンバーとしても知られている岡田さんの1stフォトエッセイ『おかぴーす! 今日も私は運がいい』が2月20日に発売されました。モデルとしての風格が漂うゴージャスな写真や素顔が垣間見られるリラックスムードのショットに加え、芸能界デビューのきっかけやプロ雀士という道を歩む現在までを素直な文章で綴った一冊になっています。そのフォトエッセイでも明かしていた、子どもの頃の話などを岡田さんに聞いてみました。
【プロフィール】
岡田紗佳
1994年2月19日、東京都出身。中国人の母を持ち、6歳から12歳まで中国・上海で祖母と暮らす。青山学院大学在籍中にファッション誌『non-no』の専属モデルを務め、2017年に日本プロ麻雀連盟所属女流プロ雀士に。2019年には「KADOKAWAサクラナイツ」のメンバーとなり最年少Mリーガーとなる。TVやYouTubeなど多数のメディアに出演し、キレのあるトークも人気。一方でグラビアにも挑戦し“役満ボディ”の異名を持つ。国士無双13面待ちを成就させるなど伝説的な対局を見せている。
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東京から上海へ 激動だった子ども時代
東京で暮らしていた6歳までは、アニメとゲームが好きな、ごく普通の子どもでした。厳しく育てられたせいもあり、性格はおとなしくて我慢強かったですね。病院で注射を打った時でも絶対に泣かなかったことを覚えています。その頃はタピオカが大好きだったので、将来はタピオカ屋さんになりたいって思っていました。
私の母は中国出身で、18歳で来日し、日本人の父と出会い、私を出産しました。私が生まれてから一家3人、都内で暮らしていたのですが、私が6歳の頃、母から「中国語の勉強のために、小学校を卒業するまで上海にいるおばあちゃんの家で暮らしなさい」と告げられました。
生まれてからずっと日本で育った私は、中国語をまったく話せませんでした。そして、上海に住むおばあちゃんも日本語を話せません。両親もいないし友達もいない、言葉は通じないし文化も違う。そんな環境での生活が突然スタートしました。
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幼少期の岡田さん
勉強漬けの毎日の息抜きは大好きな日本のアニメ
最初は、聞くことはもちろん、話すことすらできなかった中国語でしたが、半年ほど経った頃には、日常会話を難なくこなせるようになっていたようです。中国語が上達する一方で、日本語をどんどん忘れていっていましたね。
通うことになった小学校は、とても厳しい学校で、ひたすら勉強していました。その上、食事にもまだ慣れていない状況だったにも関わらず、給食も毎回、完食したかチェックが入るような環境でした。毎回、泣きながら食べていた記憶があります。そして、とにかく宿題が多かったですね。学校から帰ってきて、宿題を終わらせたら、もう夜の10時くらいになっていました。ただ宿題を終わらせるだけでなく、家族にチェックしてもらって、サインと一言コメントをもらって学校の先生に提出しなければいけないので大変でしたね。
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※写真はイメージです。
学校でも家でもずっと勉強漬けの日々の中で、唯一の息抜きが日本のアニメ「NARUTO ―ナルト―」のDVDを観ることでした。子ども時代に大好きだったマンガやアニメ、ゲームを遮断されたのは、大人になった今にも大きな影響があって、どんなゲームでも新鮮に感じますし、誰にも制限されないために徹夜でプレイしてしまうこともあります。
厳しい小学生時代を過ごしたことで得たこと、と問われると、努力に対するハードルが低いことでしょうか。今も、周囲の人から「すごい頑張っているね」とよく言われるんですけど、個人的にはそんな頑張ってる気がしないんですよね。努力をすることに抵抗がないのと、辛いと思うことがないのは、当時の環境が影響しているかもしれないですね。
麻雀との出会いは、ごく自然に
私が麻雀にはじめて触れたのは、上海に住む祖母の家で暮らしていた時のことです。中国での麻雀は、日本でいうトランプのような身近なゲームで、祖母の家にも全自動の雀卓がありました。麻雀といっても、いわゆる中国麻雀は、日本の麻雀にはない役や図柄に四季などが描かれた「花牌(ファパイ)」と呼ばれる牌があるなど、ルールはまったく異なるものですが、小さな頃、私も大人たちが打っているのを後ろから眺めていたり、時々は「ちょっと電話してくる」などと言って席を立った人の代打をすることもありました。
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※写真はイメージです。
6年間の中国生活を終える前に、日本語も話せる中国人の家庭教師の先生に3ヵ月間教えてもらったのですが、一番つまずいたのは漢字でした。意外に思われるかもしれませんが、中国で使う漢字と日本の漢字は、字の形が違うことが多いんです。帰国してからは漢字を覚え直すのに苦労しましたね。中学校では、数学と英語の成績は中国での積み重ねもあって、とても良かったのですが、文章を読んだり書いたりする力は、どうしても伸びなくて。どうしようかな、と悩んでいる中で、本を読むようになりました。読んでいたのは、「涼宮ハルヒの憂鬱」や「〈物語〉シリーズ」といった、当時流行っていたライトノベル。年間で100冊ほど読むようになって、徐々に国語力が身についていきました。
芸能界デビューの先で待っていたプロ雀士への道
日本での生活にも馴染んだ中学生時代、友だちからの「紗佳ちゃんも将来、モデルになってみなよ~」という言葉をきっかけに、私はモデルという職業に憧れを抱くようになりました。相変わらず厳しい親に芸能界入りを認めさせる環境を整えるため、まずは渋谷区にある有名私立高に通い、芸能事務所からのスカウトを待つことに。その計画は見事実現し、高校三年生の夏、現在所属している事務所にスカウトされました。入所後、募集がかかっていた「第43回『non-no』モデルオーディション」にてグランプリをいただき、専属モデルとして活動するようになりました。大学生とモデルのお仕事を両立させていたある日、モデル仲間から、スマートフォン用麻雀アプリを教えてもらい、仕事の待機時間に始めたのを機に、麻雀の楽しさに再び目覚めました。その後、さまざまなご縁をいただいて、プロ雀士として今、活動しています。
麻雀の魅力は、自分がどんなに頑張っても結果がついてくるとは限らないことだと思っています。牌が配られるまで、どのような勝負になるか全くわからないところや、どんなに研究してもキリがないのも楽しいと感じています。そして、プロ雀士という仕事は、麻雀という頭脳スポーツを通しているため、想像していたよりもファンの皆さんとの距離が近いんですよね。自分がどんな麻雀を打っても、その過程を理解し、結果に寄り添ってくれるファンの方々の存在は、いつも心の支えになっています。
1stフォトエッセイのサブタイトル「今日も私は運がいい」に込めた思い
麻雀は、自分にどんな牌が来るか全くわからない、運に左右される頭脳ゲームだという印象を持たれている方も多いと思います。そのためか、幸運を引き寄せるための秘訣や方法を聞かれることがありますが、私自身は何にもやってないんです。なぜなら、自分が運がいいかどうかは、自分が勝手に判断することだと思っているから。どんな事象に対しても、運が良かったかどうかは、自分が決めることだと思っています。幸せとかもそうですが、何事に対しても「私は運がいい!」と思えば、他の誰かが不幸だと感じることも幸運として受け取れると考えています。
2月に出版した1stフォトエッセイ「おかぴーす! 今日も私は運がいい」は、読みやすさを大切にして作りました。この本では、子ども時代からモデルという夢を叶え、プロ雀士としても活動している現在までの自分を等身大で表現することを大切にしました。ぜひ気軽にお手に取っていただけたら嬉しいです。
そして、このフォトエッセイを読んで、プロ雀士という職業に興味を持ってくれているお子さんには、とにかく麻雀が好きでないと続けられない職業なので、ぜひ、ネットやアプリなどで麻雀に挑戦してみて欲しいですね。そして、お子さんの夢を応援したい親御さんには、お子さんが興味を持ったことなら、なんでも挑戦させてあげて欲しいと思っています。
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取材・文:中村実香
書籍情報
著者: 岡田 紗佳
- 【定価】
- 2,200円(本体2,000円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- A5判
- 【ISBN】
- 9784048976985