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小5の出会いが運命を決めた! 子どもの頃の話を聞かせて!第3回「作家・あさばみゆき」


『いみちぇん!』『星にねがいを!』『サバイバー!!』といった、角川つばさ文庫で大人気のシリーズを世に送り出した小説家・あさばみゆきさん。代表作でもある「いみちぇん!」は、シリーズ累計80万部の現代学園×和風バトルファンタジー。楽しみながら漢字を学べる作品として、読者の子どもたちはもちろん、保護者からも圧倒的な支持を得ています。そんなあさばさんに、子どもの頃の話などを聞いてみました。

【プロフィール】
あさばみゆき
第2回角川つばさ文庫小説賞一般部門金賞を受賞し、児童文庫デビュー。受賞作シリーズ「いみちぇん!」ほか、「星にねがいを!」「サバイバー!!」など人気シリーズを続々発表。最新作は『改訂版 「いみちぇん!」式 小学校で習う漢字1026文字攻略ドリル』(KADOKAWA・2023年12月8日発売)。

 



夢は女子プロレスラー! やんちゃだった幼い頃

 一つ年上の兄がいるのですが、子どもの頃は殴り合いのケンカをしていまして(笑)。年齢が近いせいもあって、ライバル意識が強かったのが原因だったんだと思います。自分では引っ込み思案なつもりだったんですが、周りからは「かなりの暴れん坊」という評価だったようです。兄の友人が家に遊びに来る際も「みゆきがいるなら行かない」と言われていましたね(笑)。幼い頃は将来、バレリーナになりたかったんです。でも、兄との戦いの中で「自分はケンカが強いかもしれない」と気づいて、女子プロレスラーに転向しました(笑)。




 大人になってからは兄とは仲が良くなったんですよ。兄は電気工事士の資格を持っているのですが、救助のプロ・特命生還士(サバイバー)を目指す子どもたちが主人公の「サバイバー!!」という作品で、電気関係のエピソードを書く時は、プロの視点からのアドバイスをもらっています。いつも「アドバイス料は200万円」という冗談を言われたりしていますね。

 そういえば、「ごっこ遊び」も大好きしたね。今思えば、その頃から自分でお話を作るのが好きだったんだと思います。でも、周りの友だちは小学校に入学すると次々と「ごっこ遊び」から卒業してしまったので、それからは小さな動物のお人形で遊んだり、塗り絵や絵を描いたりと、一人で遊んでいた記憶があります。小学校低学年の頃は、先生に話しかけるだけで緊張のあまり、泣いちゃいそうになったりと、ちょっと学校が苦手だったのですが、成長するにつれて楽しく通えるようになりました。





小学5年生でのできごとが創作の道に進むきっかけに

 子どもの頃は、あまり小説は読んでいなくて、もっぱら兄が買っていた少年マンガ雑誌を愛読していました。ちょうど小説を書く、ということに目覚めた小学校高学年の頃に、ティーンズ小説を読むようになりましたね。読んだ作品が、その頃に好きだった男子をめぐる四角関係によく似たストーリーだったこともあって、「これは私のための物語だ!」と夢中になったことを覚えています。それが小説の世界に没入した初めての体験だったと記憶しています。

 そして、小学5年生の頃、国語の授業で、短編小説を書く機会があったんです。剣と魔法のファンタジー的な作品を書いたら、その時に好きだった男子がほめてくれて。その時に「もしかして私は小説が得意なのでは!?」と調子に乗って、それが今も続いている感じですね(笑)。同じクラスには、マンガがとっても上手な女子もいました。彼女が絵を描いて、私が物語を考える、というスタイルで作品を作ったのが、生まれて初めての創作活動だったと思います。

 絵を描くことも好きでしたが、小説を書くことを選んだのは、思い描いた世界を表現しやすかったから。たとえば、「百万人の兵士が集結していた」という状況を絵で表現するのは、とても大変ですが、文字ですと一行あれば読者に伝えられる。そう当時は思いましたが、現在、小説家として作品を発表するなかで、文字で表現することの難しさを実感しています。



「いみちぇん!」シリーズが代表作に

 社会人としては、新卒で事務職に就いていました。その後、ライターとして文章を書くお仕事をするなかで、08年に長男を出産したことを機に、童話の創作をはじめました。「鉄のキリンの海わたり」という作品で、「第25回 日産 童話と絵本のグランプリ」で大賞をいただきました。その後に応募した「いみちぇん!」で第2回角川つばさ文庫小説賞一般部門で【金賞】をいただき、今に至ります。



私が主に書いているのは、児童向けエンタメ小説と呼ばれるもので、小学校中学年から中学生を対象とした物語です。作品を書く上で心がけているのは、大人の目線から「こういうテーマについて学んで欲しいから、こういったお話を書いているよ」というスタンスにならないこと。読者さんたちが、物語を読んでいるうちに、もしも何か得るものがあったらなら、それはそれで嬉しいのですが、「学んでほしい」なんて気持ちはなく、なにより「おもしろい!」と思ってもらえるものを作りたいです。

 「いみちぇん!」は、ある日突然、先祖代々伝わる「ひみつのお役目」・ミコトバヅカイの主であると告げられた女子小学生・モモが、従者の少年・匠と、相棒の「御筆」を武器に、漢字の部首などを書き換えたり、書き加えて、異なる漢字に変化させることで、悪い言葉から生まれる「マガツ鬼」を退治していく物語で、タイトルは、「漢字の『意味』を『チェンジ』する」という、モモの役目から取りました。2014年からはじまったシリーズは、2020年に18巻で一度、終わりを迎え、その後、後日譚となる19巻で区切りをつけたのですが、2023年10月に『いみちぇん!! ふたたび、ひみつの二人組』というタイトルで、約3年振りに中学2年生となった主人公たちのお話を書かせていただきました。ありがたいことに発売1週間で重版、1か月で3刷となったそうで、読者の皆さんには心から感謝しています。



字を覚えるのが苦手な私だからこそ、こういう本が欲しかった



 12月8日発売の『改訂版「いみちぇん!」式 小学校で習う漢字1026文字攻略ドリル』は、2017年に発行された同タイトルの改訂版です。ここでしか読めないショートストーリーを交えながら、漢字の楽しさに触れることができる一冊です。実は私、漢字を覚えるのがとっても苦手なんです。でも、もともと絵が変化したものだったり、パーツに意味があったり、同じ漢字でも時代によって意味が変わったりと、漢字にまつわる文化は、とっても楽しいなって思っています。このドリルでは、楽しみながら漢字に触れることができるので、子どもの頃にこんな本に出会いたかったですね。

 今後も、私自身も読者の皆さんも一緒になって楽しめる作品を届けていきたいと思っています。

ライター:中村実香


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