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「いみちぇん!」「星にねがいを!」で大人気!
あさばみゆきさんの新シリーズ「サバイバー!!」を公開中!
あたし、双葉マメ。春、あこがれの5年S組に入って、今日から夢の生活がはじまる――って思ってたんだけど!?
B、B、B……。
朝の会がはじまる直前。
成績表のうえに、ツツーッと指をすべらせる。
国語、算数、理科、社会。
くわえて体育、英語、音楽、図工も……ぜんぶB。
ごくりとノドをならし、一番だいじな「サバイブ科目」に指をとめた。
攻C・守C・陣C
「ぎゃっ!」
思わず悲鳴をあげちゃったよ!
成績表を渡してるとちゅうの先生も、ワイワイしてるグループも、みんながこっちを見る。
あたしはあわてて成績表をとじ、アハッと笑ってごまかした。
……タッ、タイヘンだっ。
こんなサイテー最下層の成績表、だれにも見せらんないぞ。
とくに成績が優秀なコか、なにかズバぬけたトクイがあるコばっかり集まってる、
この「S組」の生徒たちには——っ。
「わぁ、ココがS組? 見たかんじ、わたしたちの教室と変わんないね」
窓のむこうの廊下から、「ふつうクラス」のコたちがのぞきこんできた。
「いやいや、午前中はうちらと同じ授業だけど、午後からヤバイらしいよ」
「うん。オトナもぶったおれちゃうよーな訓練をするんだって」
「ぎゃ~、わたしにはムリッ。さすがS組、すっごいね~」
通りすぎてった彼女たちの、キョーミしんしんな会話。
教室の中のコたちは、誇らしげな目で視線をかわす。
「でもウワサだけどさ、サバイブ科目がぜんぶCなのに、S組に入ったヤツがいるってよ?」
「うっそ! そんなのとチーム組まされたら、ヤバイじゃん」
「人を救けるどころか、こっちが全滅!? カンベンだよー!」
クラスメイトたちは明るく笑う。
ヒェェェ……ッ。
わたしはますます肩をすぼめた。
そう。そのオールCのヤバイのが、あたし、双葉マメですっ!
五年生の新学期。
本日からはじまる、特命生還士の養成クラス、通称「S組」!
特命生還士っていうのは、どんな災害の現場でも、かならず生きぬき、要救助者を救けて帰ってくる——そう、救助のプロ!
「サバイバー」とも呼ばれる、正和時代のヒーローなんだっ。
もちろん彼らは、五年まえの大災害でも、数えきれない命を救ってくれた。
あたしは将来、ぜったいにサバイバーになるって決めてる。
そんなコが集まったのが、このトクベツ養成クラス。
強勇学園では、五年から参加できるんだよ。
おなじ夢をもつ仲間たちとの訓練の日々が、いざ始まる——!
ってワクワクしてたのに!
進級テストの成績表には、キビしすぎる現実が……!
ほそ~く開いた成績表のすきまに見える、Cの行列。
な、なんであたし、この成績でS組に入れたんだろ?
兄ちゃんの、双葉ノドカの顔が頭にうかんでくる。
優秀なコたちの中でも、とびぬけて優秀だったらしい、ノドカ兄。
その妹が、この成績って。
先生たちもガッカリしただろうな。
ザンネンながら、妹のほうは、なんにもズバぬけたとこがないトクイなし子なんです。
「ねぇ、マメちゃん。成績表のここんとこ、どーいう意味?」
<第2回へつづく>
※実際の書籍と内容が一部変更になることがあります。
作:あさば みゆき 絵:葛西 尚
- 【定価】
- 726円(本体660円+税)
- 【発売日】
- 【サイズ】
- 新書判
- 【ISBN】
- 9784046320780