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誰にでも探究心があるわけじゃないから、探究心を芽生えさせるきっかけに【教育評論家・親野智可等さんインタビュー】


2021年5月創刊の学習図鑑「角川の集める図鑑GET!」の創刊記念インタビューとして、教育評論家の親野智可等さんに学習図鑑の面白さや楽しみかたをお訊きしました。

学習図鑑の良いところはなんと言っても「ビジュアル重視」

――親野智可等さんが考える図鑑の魅力を教えてください。

見ているだけで楽しい。もうこれが最大の長所ですよね。特に子どもにとっては取りかかりのハードルが下がるわけですね。開いて読んでみようっていうふうになりやすい。それでいて情報量は非常に多いわけですね。値段に比べて、情報量もぎゅうぎゅう詰め込んであるので、トリビアな知識も含めて、基本的なものからわかりやすく子ども向けに説明されている。ビジュアルを楽しみながら知識に触れていくうちに、だんだん蓄積されていって、記憶にも残りやすい。

最近の図鑑は子どもが飽きずに見られる工夫をいろいろ研究されていて、繰り返し見られますよね。たとえば、恐竜博士とか動物博士、こういうものになる可能性が高まるわけですね。やはり図鑑を見てないと、何とか博士っていうものにはなかなかなれないんですよね。 子どもって、何とか博士っていうふうになって「恐竜なら誰にも負けない」となって自信がつく。自信がつくと、自己肯定感が高まる。そうなると、生活全体に張りが出てくるわけですね。他のことでも、楽しく頑張れそうな気がしてくる。苦手なことでも「やってみようかな」という気持ちになってくる。とにかく一つの分野を極めていったり、自分の世界を持てる、その土台をたっぷり与えてくれるのが図鑑ですよね。

本から得られる言葉が子どもの頭を鍛えるうえで非常に重要

さらに言いますと、図鑑には平仮名もあるしカタカナもあるし、ルビを振ってある漢字もあるし、アルファベットも出てくるわけですよね。文字情報を読めるようになると、いろいろな言葉を覚えるわけですよね。言葉を覚えるってことがまた「概念を覚える」ってことでありまして…… 子どもが言葉を覚える場というのは、一つは、家族との会話。一つは、テレビとかYouTubeとかそういうもの。そしてもう一つが、図鑑も含めた本ですね。この本から得られる言葉というのが子供の頭を鍛えるうえで非常に重要なんですね。なぜかというと、本には会話やテレビでは出てこない言葉ってのが出てくるんですよね。 例えば『角川の集める図鑑GET! 動物』の5ページを見たら、「亜種」という言葉がある。他にも「縄張り」とか「繁殖期」とか「保護色」とか「夜行性」とか、こういう言葉って会話やテレビではほとんど出てこない。


『角川の集める図鑑GET! 動物』P.4~5


でもこういう言葉を知っていることが、勉強に非常に有効なわけですね。図鑑を読むことで、会話やテレビでは得られない言葉、つまり「概念を得る」ということになり、子供の知的レベルを上げていく効果がありますよね。

「角川の集める図鑑GET!」は、いま一番最先端で斬新な図鑑

――新たに創刊されました「角川の集める図鑑GET!」が子どもの教育に与える効果について教えてください。


動物、恐竜、昆虫が創刊タイトル


これからの子どもたちにとって、環境問題は人類最重要課題ですよね。今注目されている17あるSDGs(持続可能な開発目標)も、その多くは環境問題をどう解決していくか、といった課題であると言っていいと思います。こういう時代の中で子どもたちは生きていくわけだから、今後は生活も勉強も仕事もすべて環境問題を念頭に置いて進んでいくわけです。『角川の集める図鑑GET!』は、そういう時代背景を敏感に捉えていて、いま一番最先端の図鑑と言っていいと思いました。 生き物にとって「環境」は切っても切り離せないことを身に染みてわかってくる事例がたくさん出てくる。それを文章ではなく、キャラクターたちが会話でつぶやいてくれる。それがフックになって、記憶にも残りやすいと思いました。子どもって自然と条件反射的に漫画やフキダシを読むんですよね。

あと、環境を知るということで「地理」の勉強になるなと思いました。気温、湿度、高度、降水量など、環境が生き物に圧倒的な影響を与えているわけだから。生息地別になっているからこそ、生き物と関係づけて学べるというのは非常にわかりやすい。何よりも、背景が一緒に写り込んでいる写真とかイラストが非常に多いですよね。これはこの図鑑にしかない特徴だと思うのですが、生き物を単独に写すのではなくてその背景の中での写真やイラストであるから環境をよりイメージしやすかったです。

いま文部科学省が推奨しているのが「主体的な学び」(アクティブ・ラーニング)ですね。来たるべき世界はAI、超高齢化社会、グローバル化、SDGsなどで激動と混沌の時代になり、受け身で学んでいるだけではバスに乗り遅れてしまいます。主体的に学ぶことで常に自分をアップデートしていく必要があるわけで、主体的に能動的に自分から情報を取ったり自分から発表したりなど、「アクティブに学んでいく」ことが非常に重要だよと言っています。 子どもって収集癖があるから、本能的に集めたい増やしたいという気持ちがあります。自分から動いてカードをゲットしていくという経験を「GET!+(プラス)」という仕掛けで行なうのは図鑑を開くきっかけになりますよね。誰にでも最初から探究心があるわけじゃないから、探究心を芽生えさせるきっかけになる図鑑だなと思いました。


夏休みは図鑑を使い倒して自分の足跡を残そう

――もうすぐ夏休みが始まります。オススメの図鑑の使い方、遊び方はありますか?

家庭訪問でいろいろな家庭に行ったことがあるんですけど、図鑑にしろ学習漫画にしろ、本棚にしまい込んじゃってる家庭って結構あるんですよね。特に困るのが、ガラスケースの本棚。図鑑って結構高価なので、大事にしたいっていう気持ちがあるとしまっちゃうわけですね。これが子どもとってひと手間になりますから、とにかく本棚から出して使い倒すという発想を持ってほしい。

【オススメ図鑑活用法①】
トレーシングペーパーを使って自分で図鑑をつくる

なんでもいいんですけど、図鑑にある生き物の写真なんかにトレーシングペーパーをかぶせて、セロテープか何かで固定して輪郭をなぞる。なぞっているわけだから、上手に描ける。それに色を塗ったりすると綺麗に仕上がります。子どもはこれをやり始めると、すごくハマります。

あとはスケッチブックを用意して、そこに自分のお気に入りの生き物としてポンポン貼っていく。そこに自分なりのコメントや感想などを書けば、もうこれだけで自由研究になっちゃいます。夏休みの自由研究って、親御さんもすごく悩むんですけど、 これなら楽しみながらできますし、自分で図鑑を作る経験になります。「GET!」シリーズの場合は、例えば『昆虫』のカブトムシひとつとっても、生息地別ですからいろいろなページに散らばっている。


こちらが東南アジアのカブトムシたち。


こちらがオセアニアのカブトムシやクワガタムシ。


東南アジアのカブトムシとオセアニアのカブトムシなど、図鑑の中から集めてきて自分なりに組み替える。他社の学習図鑑と違って、あちこちに散らばっているおかげで、自分で探し出す楽しみみたいなものが生じますね。自分で発見して探して編集し直すみたいな作業が成立しますよね。

【オススメ図鑑活用法②】
マーキングして自分の足跡を残す



自分が調べたり読んだりしたところをマーキングしていくってのは非常に重要だと思うんですよね。自分が好きなものだけでいいんですけど、蛍光ペンでマークしておくとか、重要だなと思ったところをボールペンでマークしておく。付箋紙でやる方法もあるんですけど、付箋紙でやると他のところが見えなくなっちゃったりするので、私のおすすめはマーカーとかボールペンとかで、とにかく見た足跡を残す方法です。

先ほど言ったように、子どもにはコレクション本能があるもんですから「もっとこのマーキングを増やしたい!」という思いが出てくると、図鑑をもっともっと読みたいとなる可能性が高いです。図鑑を使い倒せば、「僕の図鑑だ」「私の図鑑だ」というふうに思えてきます。

 

【オススメ図鑑活用法③】
クイズを作る

自分で図鑑からクイズをつくってみるのもお勧めです。

【問題①】東南アジアがクワガタムシの楽園になったのはなぜでしょうか? 正しい答えを1つ選びましょう

  1. 雨が少なくて乾燥地帯が広がっているから
  2. 多様な植物からなるゆたかな森林が多いから
  3. クワガタムシを売る店がたくさんあるから

【問題②】正しいものには○を、間違えているものには×をつけましょう。

  1. 地球に恐竜が登場したのと同時に人間も登場した
  2. ライオンなど毛に覆われた動物なら北極海の沿岸でも生きられる
  3. キツネザルはマダガスカル島だけに住んでいる
  4. 陸上で最も大きな動物はアフリカゾウである
  5. セミはおもに針葉樹林で見られる

【問題③】次の文章の(   )に当てはまる言葉を「     」から選びましょう。

約(   )前に誕生した恐竜は、次第にからだを大きく進化させ、(   )の陸上生物になりました。しかし、すべての恐竜が巨大だったわけではなく、(   )よりも小さな恐竜もいました。

「2億3000万年、100年、史上最大、宇宙最大、アリ、人間」

これ全部「GET!」シリーズから取り出した問題なんですよ。ただ読むだけでなく、読みながらクイズを10個も20個も作れば自由研究として提出することもできますよ。

ちなみに問題①の答えは【2】、問題2の答えは【× × 〇 〇 ×】、問題3の答えは【2億3000万年、史上最大、人間】です。 

クイズを作って親や先生に出題することで、子供は褒められたりする。楽しみながら取り組めると、もっとクイズを作ってみたいとなって、一生懸命に図鑑を読んで、また問題を作って「すごいね」と褒められて……と良い循環が始まります。ぜひぜひ図鑑を使い倒してください。

【親野智可等さんプロフィール】



親野智可等(おやのちから)
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。Twitter、Blog「親力講座」、YouTube「親力チャンネル」、メルマガで発信中。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても著名。全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会で大人気となっている。詳細や講演のお問い合わせなどはHPから。
http://www.oyaryoku.jp


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