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NEW ものがたり

【期間限定】『呪ワレタ少年』1巻無料スペシャル連載 第4回

 だが、『志』という文字を彫ろうとした瞬間、角砂糖が半分に割れてしまった。

「ああん、もお~!」

 思ったより彫るのが難しい。

 予備を用意していてよかった。

「慎重に彫らなくちゃだよね……」

 亜美花は、新しい角砂糖に安全ピンの針を当てると、ゆっくりと動かした。


 今……田……悟……志


 今度はちゃんと彫ることができた。

「やった!」

 亜美花は、割れないように角砂糖を慎重にティッシュに包むと、再び1階へ向かった。


 リビングの横にあるキッチンでは、ちょうど母親が紅茶を淹れていた。

 母親は、砂糖を入れようとしている。

 亜美花はそれに気づき、あわてて駆け寄った。

「砂糖はあるから大丈夫だよ」

「え、ああ~、さっき持っていったやつね」

 亜美花は「そうそう」と言って、紅茶の入ったカップを手に取ると、母親に見られないように角砂糖を入れた。

(名前が彫ってあるのを見られると、説明するのが面倒だもんね)

 スプーンで混ぜると、今田悟志と彫られた角砂糖が紅茶の中で溶けていく。

 完全に溶けたのを見届けると、亜美花は紅茶を飲み始めた。

(これで、悟志くんと両想いになれる!)

 亜美花は、紅茶を飲みながら、満面の笑みを浮かべるのだった。



   ●


 翌日。

 亜美花は、ワクワクしながら学校にやって来た。

(いつ、悟志くんが話しかけてくるのかな)

 もしかしたら、そのまま告白されるかもしれない。

(そうなったら、今日からカップルだよね)

「おはよー」

 靴箱で靴を履き替えていると、利佳が声をかけてきた。

「亜美花ちゃん、ニヤけてるけど何かいいことあった?」

「え、ニヤけてた?」

 自分でも気づかない内に、笑みを浮かべていたようだ。

「べ、別に。今日はいい天気だなあって思って」

「えー、けっこう曇ってるよ」

「あ、うん、ほんとだ。あははは」

 亜美花は無理に笑って誤魔化した。

(おまじないのことは言わないほうがいいよね)

 亜美花が悟志のことを好きなのは、利佳も知っている。

 だが、利佳はおまじないなどあまり信じないほうだった。

「まあ、今日も元気に勉強頑張ろう~!」

 亜美花は、わざとらしいぐらいに明るく笑って、利佳とともに教室に向かった。


 1時間目が終わった。

 2時間目が過ぎ、3時間目4時間目が過ぎ、昼休みになった。

 しかし、悟志が好きになってくれた気配はなかった。

 昼休みが終わり、午後の授業も終わった。

 放課後。

 結局、亜美花は悟志と何の進展もないまま、学校から帰ることとなってしまった。

(両想いになれるって信じてたのに……)

 亜美花は、教室を出て靴箱に向かいながら、ガックリと肩を落とす。


「へえ、悟志くんってそうなんだ~」


 ふと、靴箱のほうから声がした。

 見ると、悟志がクラスの男の子と喋っている。

「まさか、悟志くんがあの子のことを好きだったなんてね」

(えっ!?)

 亜美花は、反射的に物陰に身を隠し、悟志たちを見た。

「いやあ、なんか急にいいなあって思ってさ」

(それってまさか……)

 亜美花は、自分のことを言っているのだと気づいた。

 角砂糖のおまじないは効果があったのだ。

 悟志は、照れながらもその好きな相手のことを、男の子に話した。


「僕、小谷利佳さんが好きなんだ」


「えっ」

 悟志の好きな相手は自分ではなかった。

 それどころか、親友の利佳だったのだ。

(そんなの、あり得ない……)

 おまじないをしたのは、自分だ。

 悟志のことが好きなのも、自分だ。

(それなのにどうして……)

 動揺しながらも、亜美花は苛立ちを感じ始めた。

 このままでは、利佳に悟志を取られてしまう。

(そんなの絶対に嫌だ!)

 何とかしなければ。

 だが、どうすればいいのか分からない。

「あっ」

 瞬間、亜美花の脳裏にあるアイデアが浮かんだ。

 亜美花は、ニヤリと笑う。

 そして、悟志たちが靴箱から去って行ったのを確認すると、あわてて靴を履き替え、急いで家へと走った。


「お母さん、絶対部屋を開けないで!」

 家に帰ってくると、亜美花はタブレットを手に取り、2階の自分の部屋に閉じこもった。

 眉間に皺を寄せながら、検索を始める。

 だが調べるのは、恋が叶う方法ではない。


 必ず失恋する方法。


 それを探し、利佳にそのおまじないをかけようと思ったのだ。

「利佳ちゃんが悟志くんと付き合うなんて許さない!」

 亜美花はネットで次々と探していく。

「絶対に効果のあるもの……、失恋する方法……」

 目を見開き、ネットを見ていく。

 だが、なかなか効果がありそうなものは見つからない。

「どうしてないのよ?? このままじゃ私が不幸になっちゃうじゃん!」

 亜美花は苛立ち、タブレットの画面を何度もタップした。

 すると、あるページで止まった。

「何これ?」

 それは、恋や失恋する方法などの情報が書かれた掲示板だ。

 その掲示板に、一見関係なさそうなある噂が書かれていた。

「これは、『呪われた少年』についての噂です?」

 亜美花は興味を覚え、口に出しながらそれを読んだ。

「少年は、白い服を着ています。そして、左の目だけが赤色です。その少年の名前を言うと、あなたは呪われます。少年の名前は、■■■■■です。あっ」

 思わず名前を言ってしまった。

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