つばさ文庫の大人気シリーズ「恐怖コレクター」の作者がおくる「呪ワレタ少年」1巻を、期間限定で特別公開するよ!
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ケース4 仲良くなれる方法
「昨日のサッカーの試合、最高だったよね」
昼休み。
6年4組の教室では、子どもたちが輪になって話をしていた。
中心にいるのは、今田悟志だ。
悟志の周りには、男の子だけではなく、女の子たちもいる。
「ねえねえ、悟志くん、サッカーってルール難しいよね」
「私、最近興味持つようになったんだ。くわしく教えてほしいな~」
女の子たちは、悟志に楽しげに話しかける。
「おお、そうなんだ。サッカーを好きになってくれるのは嬉しいね」
悟志は女の子たちに笑顔を見せて、サッカーの話を始めた。
一方、教室の隅で、そんな彼の姿を見ている女の子がいた。
北島亜美花だ。
(いいなあ、悟志くんとあんなに積極的におしゃべりができて)
亜美花は、悟志のことが好きだった。
明るく元気で、スポーツもできるし、話も面白い。
悟志と仲良くなりたいといつも思っていた。
しかし、仲良くなる勇気がなく、話の輪にも入ることができなかった。
「ま~た、悟志くんのこと見てるねえ」
親友の小谷利佳が亜美花のそばにやって来た。
「ちょっと利佳ちゃん、声大きいって。他の人に聞かれたらどうするの」
亜美花が悟志を好きなことは、利佳しか知らない。
利佳はあわてる亜美花を見てほほ笑むと、前の席の椅子に座った。
「悟志くん、人気あるから、このままだと他の子に取られちゃうよ」
「そ、それは」
利佳の言うとおりだ。
「思い切って、告白してみたら?」
「えええ?」
「私、応援するよ。絶対上手くいくって」
「だけど……」
応援してもらえるのは心強い。
だが、今まで悟志とまともに会話をしたこともない。
亜美花は、告白する勇気をどうしても持つことができなかった。
(はあ~、告白なんて絶対ムリだよねえ)
放課後。
亜美花は、家へと帰りながら、溜め息ばかり吐いていた。
(悟志くん、好きな人いるのかなあ)
誰かと付き合っているという噂は聞いたことがない。
(実は、私のこと好きだったり)
亜美花はほほ笑むが、すぐにまた大きな溜め息を吐いた。
(そんなことあり得ないよね。私は可愛いわけでも、クラスで目立つわけでも、お話が上手なわけでもないもん)
ごくごく普通の女の子。
それが、亜美花の自分に対する評価だ。
そんな平凡な女の子が、どうしたら人気者の悟志と付き合えるようになれるのだろうか?
亜美花はいくら考えても、いいアイデアが思い浮かばなかった。
(今日の星占いは一位だったのになあ)
毎朝、亜美花はテレビの星占いをチェックする。
占いやおまじないを、信じるほうなのだ。
(占いのとおり、上手くいけばいいのに)
「あっ」
瞬間、亜美花はハッとして立ち止まった。
「そうだ、その手があった」
亜美花は急に明るい表情になると、あわてて走り出した。
「ただいま!」
家へ帰って来た亜美花は、すぐにリビングに向かった。
「おかえり、お菓子用意してるわよ」
ソファーに座っていた母親が言う。
「あとで食べる。それより、タブレット使っていいでしょ?」
タブレットは、親に許可をもらえば使うことができる。
亜美花はいつもゲームをしたり、動画を見たりしていた。
「いいけど、急にどうしたの?」
「ちょっと調べたいことがあって」
亜美花は、棚に置かれていたタブレットを手に取ると、2階の自分の部屋に駆け込んだ。
(これさえあれば、悟志くんと付き合えるかも)
ベッドに腰を下ろした亜美花は、タブレットの画面を見ながらニヤニヤと笑う。
いいアイデアが思い浮かんだのだ。
恋が叶う方法をネットで探して、悟志に好きになってもらう。
(悟志くんが私のことを好きになってくれれば、すぐに付き合えるよね)
自分から告白する勇気はない。
だったら、悟志から告白してもらえばいいのだ。
ネットには、いろんな恋が叶う方法が載っている。
それを実際にやれば、きっと付き合えるようになれるはずだ。
「どれがいちばん効果あるかな?」
亜美花は、ワクワクしながらネットを調べていく。
「恋が叶う神社か。場所が遠いなあ。こっちは、100本のバラを使ってやる恋が叶う儀式。100本なんて買うお金あるわけないでしょ」
なかなかこれといったものがない。
亜美花は、おまじないの内容をブツブツと呟きながら、ひとつひとつ見ていった。
すると、あるおまじないのページに目が留まった。
角砂糖に好きな人の名前を彫って、それを紅茶に入れて飲むと、両想いになれる。
「これってありかも!」
亜美花は部屋を出ると、1階のリビングに走った。
「ねえ、角砂糖ってある?」
ソファーに座っていた母親に声をかける。
「ええ、あるけど」
母親は、目の前のテーブルを見る。
ちょうどコーヒーを飲んでいて、角砂糖が入った容器が置かれていた。
「1つ、ううん、予備も入れて2つちょうだい」
亜美花は、ティッシュを手の上に広げると、そこに角砂糖を2つ載せた。
「そんなもの何に使うの?」
「とってもいいこと。あと、安全ピンあるかな?」
「ええ、そこの棚に入ってるけど」
「ありがとう! あ、紅茶も淹れておいて」
「紅茶? コーヒーならあるけど」
「それじゃあだめなの! お願い!」
亜美花は、安全ピンを棚の中から取ると、階段を駆け上がった。
(普通のペンとかじゃ、文字が彫れないもんね)
角砂糖は小さい。
彫るのに安全ピンの針を使おうと思ったのだ。
部屋に戻ってきた亜美花は、椅子に座り、角砂糖を机の上に置いた。
「よし」
亜美花は、安全ピンを持つと、針で悟志の名前を彫り始める。
「今……田……悟……」