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ものがたり

『宇宙級初恋』先行連載 第2回 虹のはじまりをさがしに


となりのおうちにひっこしてきたのは、地球でいちばんカッコいい男の子!?

学園ラブコメ「ぜったいバレちゃいけません!!!」で大人気♡ 水無仙丸さんの新シリーズは、
反則級にときめくカレと、地球でいちばんステキなロマンチックラブ♡

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運命の人っているのかな?
そもそも、出会ったその人が運命の人ってどうやってわかるんだろう?

だけど。
この地球の遠くの向こう、
何光年も先からやってきたキミと出会って、
ひと目見て分かったよ。

キミがわたしの運命の人だ、って──

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2.虹のはじまりをさがしに

「──つばさちゃん、おはよう」

 教室につくと、前の席のヒナちゃんが声をかけてくれた。

 私も「おはよう」と返しながら、机にランドセルを置く。

 そうだ、ヒナちゃんに、うちの家族のひどさを聞いてもらおう。

「ねえヒナちゃん聞いてよ、うちの家族が……」

「つばさちゃん聞いた!? マキちゃんが、三組の上田くんとつきあうんだって!」

 キラッキラの笑顔で、ヒナちゃんが言った。

「上田くんの誕生日にね、マキちゃんのほうから告白したんだって!」

「へ、へえー。そうなんだ」

「すごいよね! 勇気あるよねえ!」

「う、うん」

「いいなあー、カレシかあー、私も告白しちゃおっかなあー」

「えっ、ヒナちゃんも好きな人いるの!?」

「うふふふー、実はいるんだあー」

 ヒナちゃんが、頬を赤く染めて、はずかしそうに笑う。

(──近ごろ、みんなこういう話ばっかりだな……)

 あんなやつら、よく好きになれるなあって思う。

 だってうちの学校の男子、みんなすっごいガキなんだもん!

 すぐ騒ぐし、走りまわるし、ホウキ持たせたらチャンバラごっこだし。

 人がちょっと失敗しただけで、ゲラゲラ大声で笑うし。

 あとハンカチ持ってないし、持ってたとしてもグッシャグシャだし。

 そんなのとつきあって、なにがたのしいんだろ。

 王子さまみたいにやさしい男の子は、うちの学校にはいない。

 もしいたら、私だって好きになれるのに。

 どこに行けば会えるのかなあ。

 もっと遠い街に行かないとダメなのかなあ。 

──つばさちゃんは、カレシつくらないの?」

 ヒナちゃんが聞いてきた。

 私は全力で頭を左右にふって、

「つくらない! 運命の人に出会うまでは、つくらないよ!」

「つばさちゃんがいつも言ってる『運命の人』って、どんな感じの人なの?」

「え、どんな感じって……」

 うーん、そう聞かれると、自分でも、よくわかんないんだけど……。

 やっぱりまずはやさしくて、笑顔がステキで、声もかっこよくて。

 少女マンガに出てくる男の子みたいに、瞳がキラキラーってしてて。

 勉強も運動も学校で一番で、あと楽器とかもできて、きっと料理も上手で……。

 ……って、そんなカンペキ超人みたいな男子、いないか。

 うん、いないな……ちょっと言いすぎたわ……。

(……あ、そうだ。あの時の──

 ふと、思い出す。

 あんな風にやさしい人だったら、いいなあ……。

「──竜晴くんみたいな男子はどう? つばさちゃんといつも仲いいよね」

 急にヒナちゃんの口から竜晴の名前が出て、思わず「げえっ!」と言ってしまった。

「やめてよ! 私、竜晴と仲よくなんかないよっ!」

「そうなの? 竜晴くん結構かっこいいのに。竜晴くんのこと好きな女子って多いんだよ?」

「うええ~、うっそだあ!」

 竜晴ってのは、おなじクラスの男子。

 運動が得意で、気がつよくって、クラスのリーダー的存在。

 とりまきの男子を引きつれながら、いつも私にちょっかいをかけてくる、超イヤなやつ!

「竜晴なんてぜったいイヤだよ! そうそう思い出した、私はね、私の気持ちを大切にしてくれる人がいいのっ!」

 お母さんも、そう言ってたし!

「ふーん。それが、つばさちゃんの言う『運命の人』なの?」

「そう! だから竜晴は、私の理想からめちゃくちゃ遠いの! それはもう、何百光年も、何万光年もはなれてるの! そもそも竜晴は、私のこと……」

──なに俺の悪口言ってんだよ」

 はっと顔を上げると、竜晴がいた。

 うわああ、朝から会いたくない男子ナンバーワン!

 イヤすぎて、竜晴をおもいきりにらみつけてやった。

「つばさお前、今日も変な顔してんなあ」

 竜晴はバカにしたように笑いながら、私の頭をポンポンとたたいた。

「ちょっと! 頭たたくのやめてよ!」

「うわ、こえ~! つばさ、こええ~!」

「私がこわいんだったら、いちいち話しかけないで!」

「なんだそれ、かわいくねーな。だからお前は男子にモテないんだよ」

「なっ……、ほっといてよ!」

 そんなの、いちいち言われなくてもわかってるし!

「つばさはぜったいカレシできねえな。結婚もムリなんじゃね?」

「うるさいなあ! あんたに関係ないでしょ!」

「うわっ、こえー! やっぱかわいくねえー!」

 ほらね、竜晴は、私のことがキライなのよ。

 毎日毎日、こうやってイヤなことばっかり言ってくる。

 こういうのは、気にしないふりするのが一番!

 私は、「なにも気にしてませんよ」という顔で、窓の外へ視線をむけた。

「なんだこいつ、ノリわりーな。つまんねえ!」

 竜晴はそう言って、自分の席へむかった。

 はあ~、やっと行ってくれた。

 なんでいつもいつも、私にひどいこと言ってくるんだろ。

 ……実は、地味に傷ついてるんだけどな。

 でもそんなことバレたら、またバカにされるから、ぜったい言わないけど。

「あの二人、また夫婦ゲンカしてるよ~」

「竜晴くんとつばさちゃんは、今日も仲よしだねえ~」

 クラスのみんなが、私のほうを見てクスクス笑ってる。

 じょーだんじゃない!

 あんなのと夫婦になるくらいなら、結婚なんて一生できなくていい!

 

 ──一時間目は、国語の授業。

「チャレンジしてみたいこと」をテーマに、作文を書くことになった。

 私、作文は好きなんだよね。

 今日は朝からイヤなことばっかだったけど、やる気出てきたぞ!

 ささーっと書きあげて、すぐさま先生に提出した。

 やった、一番だ!

「──いやいや、ちょっと待ちなさい紺野」

 席にもどろうとしたら、先生に呼びとめられた。

「なんだこれは?」

 先生が持ちあげた原稿用紙には、私の字で「大きく羽ばたく!」と書いてある。

「紺野、マジメに書きなさい」

「マジメです! だって私の名前の由来なんです!」

 

 ──大きく羽ばたける子になってほしいなあって思ったの。

 高い場所から見ると、ぜんぶちいさく見えるでしょ?

 大人も子どもも、建物も野山も。

 そしたら、ぜんぶが愛おしく思えるから。

 みんなを大好きになったら、つばさも大好きになってもらえるわ。

 つばさなら、きっと大丈夫よ──。

 

 そんな思いをこめて、お母さんが「つばさ」と名づけてくれた。

 やさしくて、あったかくて、たのしい話をたくさん聞かせてくれたお母さん。

 いつか私も、お母さんみたいな大人になりたいと思ってる。

 だから、この名前にはずかしくない生き方をしたいんだ!

「ふむ、それはすばらしいことなんだが」

 先生が、うなずきながら腕を組んだ。

「大きく羽ばたいて、具体的になにをするつもりなんだ?」

「……えーと、それはまだ考えてません」

「……よし、わかった。席にもどって書きなおしなさい」

 席にもどり、もう一度えんぴつをにぎる。

 ななめ前の竜晴が「怒られてやんの。バーカ」と小声で言ってきた。

 ふん、気にしない、気にしない。

 ──今度は、「虹のはじまり」のことを書いた。

 お母さんが教えてくれた、遠い外国の伝説。

『つばさ知ってる? 虹のはじまりにはね、宝物があるらしいのよ』

 この話をする時のお母さんは、いつもすごくたのしそうだった。

 なにかトクベツな思い出があるのかも?

(虹のはじまり、さがしてみたいんだよねえ……)

 運命の人とめぐりあえたら、一緒にさがしてみたいなあ。

 子どもっぽいって、笑われちゃうかな?

 いや、私の運命の人はやさしいから、きっと一緒にさがしてくれるはず。

 一人だとなかなか勇気出ないけど、二人でさがしたら、たのしそう。

 実際には虹のはじまりになんて、たどりつけないかもしれないけど。

 そういうことじゃないのよ、こういうのはロマンなのよ、ロマン!

 そんなことを考えながら書いていたら。

 先生が用事で教室を出ていき、生徒だけの自習状態となった。

「──つばさが、また変なこと書いてんぞ!」

 先生がいなくなったとたん、書きかけの原稿用紙をサッと取りあげられた。

 顔を上げると、竜晴だった。

 はあ~、また竜晴か。

「なんだこれ、『いつか虹のはじまりをさがしたいです』だって! バッカじゃねーの!」

 竜晴が、からかうような口調で読みあげる。

 私は大声でどなりそうになるのを、ぐっとこらえた。

『みんなを大好きになったら、つばさも大好きになってもらえるわ』

 ──うん、わかるよお母さん。

 人間は、一人では生きられないもんね。

 助けあって生きていけば、幸せになれるってことでしょ?

 お母さんの言うとおり、まずは私がみんなを大好きに……。

「なあなあみんな、つばさの作文見ろよこれ、虹のはじまりだって!」

「竜晴、俺にも見せて!」

「ぶははっ、つばさはやっぱアホだなあ~!」

「虹のはじまりなんて、見つかるワケねーじゃん!」

 大好きに……なれるワケなかった!

「いいかげんにしなさいよあんたたち────ッ!」

 お母さんとの思い出まで、バカにするのはゆるせない!

 私が男子たちを追いかけまわしていると、「今日も仲いいねえ」と、みんなが笑う。

 意味わかんない、これのどこが仲いいの!?

 そこへ先生がもどってきて、男子とまとめて怒られた。

 なんで私まで怒られなきゃいけないのよ!

 やっぱムリだ、こんな男子たちはぜったい好きになれない!

 私の運命の王子さまは、どこにいるんだろ……?

 

第3回に続く>

【書誌情報】

1月発売予定の胸キュン新シリーズ『宇宙級初恋』!
地球でいちばんステキな男の子と、ウルトラ級にときめく初恋がはじまります!


作:水無仙丸  絵:たしろ みや

定価
814円(本体740円+税)
発売日
サイズ
新書判
ISBN
9784046322593

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