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あれ? 千年前も今も、みんな悩んでいることって同じかも!?
悩んで、立ち止まって、前に進む――共感度100%の紫式部の平安ライフ!
2024年大河の主人公は、『源氏物語』の作者・紫式部!
紫式部が書くもう一つの名作『紫式部日記』が、つばさ文庫で楽しく読めちゃいます!
紫式部の視点で見る約千年前の平安ライフは、共感できるところがいっぱい。
共感度MAXの平安ライフはじまります!(全5回・毎週土曜日更新予定♪)
この小説は、『紫式部日記』を原作とし、『紫式部集』『源氏物語』などからも着想を得ながら、紫式部をとりまく、ひとつの物語としてまとめました。
紫式部の魅力を伝えたく、また読みやすさを重視したため、必ずしも原文に忠実な訳ではなかったり、省略したりしています。また、時系列にずれがあったり、史実と異なったりしている箇所がある点もご了承ください。
登場人物
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紫織(しおり)
小説を書くことが大好きな女の子。
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ウサギ
ある日とつぜん紫織の前に現れた男の子。人間の言葉を話せるみたいで?
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シキブ(紫式部・むらさきしきぶ)
『源氏物語(げんじものがたり)』の作者。なやみ多き女子。
プロローグ ―― 紫織のなやみ ――
あたしって、ごくごくフツーで、まじめだけが取りえ。
クラスでも目立たないっていうか、目立つのは苦手っていうか……。
そんなあたしが、いちばん大好きなこと。
それはね、小説を書くことなんだ!
小説の世界は、フツーな毎日とは、まるっきりちがう。
女の子も男の子も、みんなキラキラしていて、ロマンチックに恋したり、ミステリアスな事件が起こったり。登場人物たちといっしょに、ドキドキハラハラするのって、すごく楽しい!
小説を書いているときだけは、あたしもヒロイン気分になれちゃうんだ。
でもね、今日、学校で友達に、
「紫織ちゃんの書いた小説、読ませて!」
って、言われちゃったの!!
うわああ、どうしよう! 絶対にムリ!
だれかに見せるつもりで、書いてたわけじゃなかったのに!
自分の心の世界をのぞかれる気がして、はずかしすぎるよ!
だけど……あたし、その場で、すぐに断ることができなかったの。
なぜかっていうと、小説を読んでほしい気持ちも、心のすみっこにあったから。
もし友達に、「面白い!」って言ってもらえたら、きっとすごくうれしい。面白い自信も、ほんのちょっと、あるし……(ほんとに、ほんとに、ちょっとだけど)。
で、でもっ! もし「つまらない」とか「ビミョー」って言われたら!? 考えただけでショック! あたし、一生立ちなおれないよっ。
やっぱり小説を見せるのなんて、ムリムリムリムリムリムリ!
頭をかかえこみ、ベッドにつっぷしてジタバタしていると……。
「紫織ちゃん」
あれ? いま、だれか、あたしのこと呼んだ?
「ここだよ、ここ!」
「へっ……!? わわっ!?」
いつのまにか、目の前には、白いウサギがいた!
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ど、どーゆーことっ!? しかも、この子、おしゃべりができる!?
アワアワしているあたしに対して、ウサギは余裕の表情。
「紫織ちゃんの力になりたくて来たんだよ。ねえ、シキブちゃんって知ってる?」
「シキブちゃん……? シキブちゃんって……あっ! ひょっとして、紫式部のこと!?」
「そのとーり!」
「もちろん知ってるよ!」
あたしは、思わず身をのりだした。あたしとおなじで、名前に「紫」がつくから、ひそかにあこがれてたんだよね!
「『源氏物語』を書いて、百人一首に和歌が選ばれていて、お札にもなって、とってもすごい作家でしょ! きっと、はなやかでキラキラな人だったんだろうなあ」
それに比べてあたしは……。思わず、ため息をつくと、
「それがね、はなやかさとか、キラキラとかは苦手だったんだよ。なにかっていうと、すぐになやんで立ちどまっちゃう、フツーの女の子だったんだ」
「えーっ、ほんとに!?」
紫式部みたいな、有名な歴史上の人物が、あたしみたいな、なやみ多き女の子!?
そんなこと、ありえる???
あたしが、疑わしそうな顔をしていると、
「シキブちゃんのこと、もっと知りたかったら、この本を読んでみてよ。きっと、わかるわかるー! って、思えるから!」
ウサギが差しだしたのは……。
そう! いま、あなたも手にとっている、この本!
紫式部は、どんなことを、どんな風になやんでたのかな?
そして、どうやって、のりこえたのかな?
「それじゃあ、約千年前の女の子、シキブちゃんのダイアリー、こっそりのぞいてみよう!」
「うん!」