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子育て・教育

3人の子育てを経て 『ピジョンの子育て 育児用品ブランドの社員たちが本気で悩み、考え、奮闘した育児の話』第4回


すべての赤ちゃんやパパママたちが幸せになるよう働いている育児用品ブランド「ピジョン」の社員たち。
男性社員も女性社員も育休取得率100%で、子育て中のパパママからの信頼は絶大。けれど、そんなピジョンの社員だって、自らの出産・育児には当たり前に悩み、苦戦し、奮闘しています。
出産育児の悩みから、妊活や保活の苦労、夫婦関係のリアルまで、答えのない育児に奮闘するすべての人へ贈る一冊です!
 
※ためし読み連載では、おすすめのエピソードを厳選して紹介します。

 ※これまでの連載はこちらから


2人目育児、大変さは倍以上! 3人目は…?

Pigeon's Report 14
3人の子育てを経て
父親として日本の子育て環境に思うこと



1人目の誕生 出産の神秘に空を見上げ、涙する

 わが家には3人の子どもがいる。「ひとつきいっしょ」も、3人目のときは事情により取得できなかったが、2回取得している。ここでは、3人の出産・育児を振り返りつつ、当時感じたことや考えたことをまとめてみたいと思う。
 第1子である長男が生まれたのは、もうかなり前のことだ。その日、妻はいよいよ始まった陣痛にもがき苦しんでいた。普段聞いたことのないような絶叫と、見ているのもツラい苦しみよう。しかし、そばにいる自分にできるのは、腰をさする程度。男の不甲斐なさを味わった。
 近年では、立ち会い出産をしたという話を多く聞くが、私は、女性にとっての人生最大の修羅場ともいえる場に、男は立ち入るべきではないと考えていた。そのため、まるでドラマのように分娩室から赤ん坊の泣き声が聞こえたときには感動と安堵が入り混じり、「おめでとう」という義母の言葉に、何一つ返せなかった。
 何ともいえない感覚に陥り、病院前の道路で空を見上げながら涙を流した。出産とは「多くの女性が経験するごく当たり前の行為」と思っていたが、大きな間違いだ。出産は男の想像を絶するものであり、本当にとてつもない仕事。世の中のすべてのお母さんを心から尊敬した。
 生まれたのは元気な男の子。長男が1歳になる頃、私は育休を取得した。まるまる1か月、仕事を離れて育児に専念したのだ。入社から7年、育児のために会社を1か月も休むことは想像していなかったが、仕事をしながらでは決して気づかなかった、長男のちょっとした仕草や気持ちを感じ取ることができた。
 例えば、ウンチをするタイミングと顔つきがわかるようになった。また、寝るときは私の布団で寝るようになった。そして、近所の奥様たちと仲良くなったことも、育休の成果である。「ひとつきいっしょ」の目標の一つは「育児を語れる社員になる」こと。さて、この目標は達成できたであろうか。長男の育児は語れるが、赤ちゃんはそれぞれに驚くほど違いがある。育児のベテラン選手になるには、最低あと2人は子育てをしないと難しそうだ。


2人目育休で、どっぷり育児ママさんネットに仲間入りを果たす

 そう自分で考えていたからなのか、ありがたいことに私はあと2人の子どもに恵まれることとなる。長男の誕生から3年後、私は再び分娩室の前にいた。経験というのはある意味すごい。2人目のときは、自分でも驚くほど落ち着いていた。陣痛の知らせから約5時間後、元気に次男が誕生。赤ん坊よりも母体のほうが心配で「お疲れ様。ありがとう」と声をかけると、妻は、疲れ切った表情ながら笑みを浮かべ、頷いた。その顔を見て、本当に安心した。
 ところで、次男を出産した産院はとにかく混んでいた。診察時は予約していても1時間待ちは当たり前。初産ならまだよいが、幼児を連れての産院通いは妊婦には負担だろう。産科医不足のニュースをよく聞くが、それを実感した。
 次男のときは、次男が1歳1か月の頃に育休を取得。取得を快く承認してくれた上司や同僚に感謝しつつ、2人に増えた子どもと1か月真剣に向き合い、どっぷり育児してみようと決心した。全面的に担当したのは、次男のオムツ替え、お風呂掃除、子どものお風呂、夕飯の支度(1品)。家族みんなで長男の幼稚園のお迎えと、夕方の散歩にも行った。毎朝6時に起き、22時には就寝。絵に描いたような規則正しい生活。非常に理想的だ。仕事と両立しながらの育児となると、こうもいかないのであろうが……。
 さて、長男のお迎え時のことだが、最初の頃、毎日顔を出す私は、ほかのママさんたちからかなり不審がられ、痛いほどの視線を浴びたものだった。しかし、事情を説明すると「さすがピジョンだね」とよく言われた。
 ママさんたちにはママ・ネットワークが完全にできていて、園の参観イベントともなると、まあ驚くほどにケタケタと笑い、よくしゃべる。そんなママさんたちに最初は圧倒されていたのだが、育休が終わる頃には長男のパパとして認識いただき、ネットワークの端っこのほうには加われたのではないかと勝手に思っている。


3人目がやってきた!今度は女の子……?

 それから2年半後、3人目が妻のお腹にやってきた。3回目ともなるとベテラン気分である。妻はわんぱく盛りの息子たちに手を焼きながらも、何の問題もなく妊娠期間を過ごしていた。
 その頃わが家では、妻と息子たちによる、赤ちゃんの名前検討会が頻繁に開かれていた。性別判明前だったのだが、よく話し合われていたのは女の子の名前だった。
 そろそろ性別がわかるという時期の健診時、たまたま休みが取れたので、健診に家族4人で行った。みんなで診察室のエコーのモニターを食い入るように見ていたとき、長男が叫んだ。「お○ん○んだ!?」先生は苦笑い。そう、3人目も男の子。三兄弟である


3人目も立ち会い出産しないはずが急遽立ち会うことに!?

 いよいよ出産当日。今回も立ち会う気はなく、病院にその旨を伝えていた。ところが、分娩室の外で待っていると看護師さんが突然出てきて叫んだ。「お父さん、そろそろ生まれますよ! どうぞ中に入ってください!」何かの手違いでは!? でも、もしかしたらこれが最後かもしれない。そう思い、中に入ることを即決した。
 室内では妻が悶え苦しみ、まさに修羅場のさなか。妻の手を握り、看護師さんたちと一緒に踏ん張るリズムをとりながら声を出し、一生懸命励ました。そして、15分も経たずに、元気に三男が誕生した。ごくわずかな時間の立ち会い出産だったが、この経験は一生忘れることはないだろう。立ち会ってよかったと思う。
 長男、次男のときは里帰りしていた妻は、今回は長男の幼稚園もあるからと、里帰りはしなかった。母親はたくましい。とはいっても、車で10分ほどのところにいる義母が、ほぼ毎日来て食事や子どもたちの世話、幼稚園の送り迎えまでしてくれたことは大きい。お義母さんには感謝でいっぱいだ。こうしたサポートがなかったら、3人育児はかなり大変だったに違いない。


産後の女性ケアはもっと充実させるべき

 三男の誕生後しばらくして、妻がポツリと言った。「産後3か月くらいすると抜け毛がひどくなるの。歯も弱って痛みだすんだよね」言われてみると、家の至るところに妻の髪の毛が落ちていた。また妻は、産後は毎回歯医者に通っていた。母親が子どもに栄養を分け与えたことを実感した瞬間だった。3人も子どもを産んだ妻にはもう少しラクをさせてあげたいと思うが、家にいると子どもたちが騒ぎ、それも難しい。
 あるとき、テレビで韓国における産後の女性ケア事情が紹介されていた。「産後調理院」という宿泊施設に、2週間から1か月ほど滞在するのが一般的なようだ。産後の体の回復をサポートするのが目的で、スタッフが24時間体制で付き添う。滋養のある食事が提供され、赤ちゃんのお世話法や母乳ケアについて教えてもらえる。値段による違いはあるが、病院とはレベルの違うホテルのようなところも多いようだ。
 日本では、多くの母親が産後4、5日で退院となる。日本でも、せめてもう少し産後ケアを充実させるべきではないかと考えてしまう※。

※ 2023年現在、日本でも類似の施設はあるが、まだまだ少ない。


3人の育児をしながら父親として考えたこと

 幼稚園で知り合ったパパ友とお酒を嗜む機会が定期的にある。その際にたまに話題となるのが、子育ての環境について。子をもとうとする若い夫婦がまず考えるのが経済的問題ではないだろうか。「子どもを育てる= お金がかかる」というイメージが定着しつつあるように思う。また、共働きが前提の場合、出産したとしても、今度は待機児童問題がその前に立ちはだかる。
 高齢化に伴う政策もある程度必要だと思う一方、経済面や環境面で若い世代が子どもを産むことを躊躇する現状は、この国の将来を考えると大きな問題だ。政府や企業は一体となって子どもを産みやすく、育てやすい環境の整備に注力すべきだと思う。そして、子どもをもつ親とわれわれピジョンは、子どもを産み育てることの喜びとその価値を、より多くの人に伝える使命があると考える。
 私自身、3人の子どもの父親になり、一番大きく変わったことといえば、気持ちのもち方だ。息子たちにとって私は頼れる父親であり、パパがこの世で一番強い人なのだ。そう、私は強く、頼られる存在でなければならないと思っている。
 そして、息子たちを一人前の人間に育てるという使命感。その使命感によって心配事が増えたのも事実だ。しかし、子どもたちの力は半端じゃない。とにかく、幸せなのである。


次回は、「双子育児奮闘記」をお送りします。(2月10日公開予定)


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『ピジョンの子育て 育児用品ブランドの社員たちが本気で悩み、考え、奮闘した育児の話』 もくじを公開






著者:ピジョン出版プロジェクトチーム 漫画:倉田 けい

定価
1,375円(本体1,250円+税)
発売日
サイズ
A5判
ISBN
9784046813039

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